第2部 PFIの導入へ向けて −第4章−
       

はじめに と 目次  あなたのまちにPFIを ケーススタディ PFIはじめて物語

第4章 現状から見るPFI事業

1 国及び地方自治体におけるPFI導入の動き

 PFI法施行後、地方自治体の中でも都道府県や行財政規模の大きな市において、大規模事業を中心にPFI導入が図られてきている。

 「PFI法」成立前からPFIの検討を始め、「PFI基本方針」が示される前に、いわゆる「PFI的事業」として導入を図った地方自治体も少なくない。

 また、国においても、平成13年1月に、民間資金等活用事業推進委員会において、「PFI法」や「PFI基本方針」に沿ったプロセス及びリスク分担等に関する「ガイドライン」が策定され、PFI事業実施に向けた環境が整いつつあるといえる。各省庁でも13年度に向け、各種補助制度、無利子融資制度及び税制改正の要求が新たに行われ、PFI事業に対する支援等は拡大する方向にある。

 なお、13年1月末日現在で、地方自治体において行われているPFI事業の主な事例は、
図表W−1のとおりである。

図表W−1 主な国内PFI先行事例

 

2 県内市町村の意識調査

 今回、我々研究グループでは、県内92市町村の「社会資本整備」、「公共事業」及び「PFI」に関する意識を把握するため、平成12年10月にアンケート調査を実施し、各市町村における状況や意識についてまとめた。(有効回答数89、回収率96.7%)ここでは、このアンケート調査結果に若干の考察を加えたい。(アンケート結果の詳細については、巻末資料を参照のこと。)

(1) 社会資本整備について

 アンケートの結果、県内市町村が特に新規整備が必要と考えている社会資本は、下水道(89.8%)、社会福祉施設(87.5%)、公園(84.1%)、防災関連施設(83.0%)及び情報・通信施設(79.5%)であった。逆に、新規整備の必要性が低いものには、水道(35.2%)、公営住宅(40.9%)など比較的歴史のある社会資本が挙げられている。また、道路、河川・治水、水道及び教育文化施設は、新規整備よりも改善が必要とされている。

 昨今、環境問題で注目されている廃棄物処理施設は改善の必要性を認識しながらも、新規に整備するかどうかについては消極的なようだ。

 現在の整備状況を挙げると、埼玉県内の公園整備は11年度、一人あたり公園面積5.25uで全国平均7.92uの7割弱となっている。同様に下水道整備状況は11年度末普及率65%で全国平均の60%を上回っている。

 アンケートでは社会資本の新規整備について、13項目のうち10項目で過半数の市町村がその必要性を認めており、県内市町村の社会資本整備はいまだ不十分であると認識しているようである。

(2) 公共事業について

 現在の公共事業のあり方は、その手法について疑問をもつ意見が多い。また、社会資本整備は不十分としながらも地方自治体の財政状況を勘案すると、事業量の削減、投資する予算の再配分及び他分野への財政支出を考慮するべきとしている。(図表W−2)

      図表W−2 公共事業のあり方
設問 今までのやり方で公共事業を進めればよい

 

 

 

 

 

 

 



  ただし、公共事業の持つ経済効果や補助事業の有効性は必ずしも否定できないようである。現在の公共事業の非効率性を挙げながらも「公共事業に効率性を求められない、なじまない」とする意見もあり、公共事業の持つ特質を表していると思われる。

 また、公共事業の発注方法・契約方法の見直し及び法規制の緩和等については、現在の公共事業の手法を効率化し、更に、民間の多様なノウハウを活用することで公共事業が活性化すると考えている。

(3) PFIについて

 PFIへの関心度は、約8割の市町村で「関心がある」と回答している。ただし、「何らかの形でPFIに取り組んでいる」とする地方自治体と「取り組む予定はない」とする地方自治体がともに3割あり、関心と取組の意識は必ずしも一致しない。取り組む予定のない25自治体のうち21は町村が占めており、市部と町村部で傾向の違いが見受けられた。(図表W−3)


図表W−3 PFIに対する関心・取組
設問 PFIに対する関心・取組についてお聞かせください
*複数回答可の設問のため回答総数は有効回答数と一致しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 PFIを「実施している」市町村はなく、「実施の予定がある」が2市、「検討中である」が9市町であった。

 実施の予定又は検討中である事業としては、道路、下水道、教育文化施設、社会福祉施設及びし尿処理施設等で、施設を中心としたハード事業が中心であった。事業の初期投資費用は10億円以上50億円未満が多い。

 PFIへの取組状況は、PFI事業を立ち上げたいとする自治体から事業契約目前の自治体まで、その進捗は様々である。また、研究会を設置している市町村も多く、市民の参加を試みる自治体も見られた。実施の予定又は検討中の11市町のうち、1市2町で委託調査に着手し、事業形態の比較検討やキャッシュフローの分析を行っている。実施段階に近い事例が2市あり、一つは、事業形態は未定としながらも事業終了後に市に無償移管されるBOT方式で、事業検討委員に地域住民を交え意見交換しながら検討が進められている。

 もう一つは、県内で最も進んだ事例で事業期限なしのBOO方式とし、市の持ち出しは一切なく、事業者は広告収入で事業を維持する、としている。

 県内市町村は、PFI導入は財政状況が多少厳しくとも社会資本整備を可能とし、更に従来の民活事業を改善すると期待しており、公共事業の効率化や行財政改革にも寄与するとしている。ただ、景気浮揚につながることについては意見が分かれている。

 PFIが従来の公共事業の改善や行財政改革につながると期待しながらも、取組に消極的な理由には行政側の体制づくりの遅れを指摘している。また、全国的にも事例が少なく、比較検証が不十分で導入に踏み切れないとしている。

(4) 全体を通じて

 アンケート調査から推測される県内92市町村の標準的な意識は、現行の公共事業には改善する余地があるとしながらも、効率性ばかりに目を向ける姿勢には疑問を感じている。PFIを含む民間活力を導入することには前向きであるが、その課題の多さにしている。 

 今後、PFI関連の法律と既存法令とが整合し、地方自治体等においてPFI事業の導入事例が増えていくことにより導入が進むものと考えられる。

 

第3部(第5章〜)

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