*
祭りは終わる。
まだ祭りの面影を残す校舎は、暗闇に包まれ静まり返っている。
軽音楽同好会部室。
3人は、ぐでー、と床に寝転がっていた。
部屋はしいんと静かに。
「終わったねえ」
「終わったなあ」
「終わりました」
3人とも、天井を見つめている。
「俺達さあ……」
「なに?」
「一番下手だったかもなあ」
「あははは、そうかもね」
「そうかもしれませんねえ」
緊張こそしていたが、なんとか目立つミスなどはしなかった、と思う。
それでも、けして上手くはなかった。
つまり、それが実力だと言うことだ。
で。
部屋で寝転がっている3人。そうしていない人物が一人。
「……あなたたち、いつまでクサってんのよ」
彼女は、深く関わっていても当事者ではない。この連中と同じ輪の中には入れない。
「いやあ。別にクサってはいないぞ」
「うん。そうだよ」
「私は有機パーツが多数使われていますから、腐れるらしいですよ。スプラッタですね」
「いや、そういう意味ではなくて」
間が開く。
静かな時間。
「まあ、来年も、あるな」
「来年も、やるの?」
「……やらないのか?」
「……んー。やろやろ。来年こそ、観客のハートを釘付けにしちゃおう」
「なんか古い言い回しだな」
「いいってこと。……そーだ。なっちゃんも参加しない?」
「な、何で私が。私には卓球部があるんだってば」
「いやあ。なっちゃん歌上手いし」
「え。そうなんだっけか?」
「そーだよ」
「嫌だってば」
言い合い。
幼馴染みの三人。
どうも、他人と自分には壁があるかの様な感覚を覚えることがある。
それは、自分が人間でないこととは、あまり関係無く。
「ユニちゃん?」
「はい?」
声。ちょっとびっくり。
「ということで、なっちゃんもまた参加することになったから」
「なってない、なってない」
「それは、大変素晴らしいことです」
「いや別に確定したわけでは」
「ま、いいじゃん」
「よくはないわよ」
喋る時は普通。
やっぱりこれは私の性格なんだろう。
ちょっと悩んでためいき一つ。それは誰にも気付かれることは無く。
「んじゃ、確かにいつまでもここにいてもしょうがないから。どっか行くか。打ち上げとか」
「じゃあ、何か飲み物でも買いに行く?」
「あ、私、セリオさんから預かったものがあるのですが。終わった後にでもどうぞ、と言われて」
ユニは自分の鞄からビニール袋を取り出す。
一同が中を見ると、そこにあるのは。
酒だった。
「駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ。しまえ」
「そうそうそうそうそう。未成年者は飲酒しちゃいけないよ」
妙に焦ってる。
「……なぜ、その様に焦っているのですか?」
「夏樹がいるから」
「なっちゃんがいるから」
「なによそれは?」
「なぜ、夏樹さんがいると駄目なのですか?」
「ひどいから」
「そう、あれは数年前。ふざけてなっちゃんにお酒を飲ませたなっちゃんちのおじさんが……」
「私の父さんがなんだってのよ。話を作らないで」
「もっとも恐ろしいことは」
「なっちゃんが全然覚えていないって事」
「はあ。そうなのですか」
そういうわけで酒は仕舞われた。
そもそも未成年者は酒飲んじゃいけません。
「危機は去った」
「一安心だね」
「それほど恐れるほどのことなのですか?」
「あんたら後で覚えてなさいよ」
「それはいいから、ともかくどっか行こうよ」
「んそーだね。確か今からでも開いているカラオケ屋があったと思うけど」
「んじゃあ、それでいいか。夏樹も来るか」
「まあ、乗りかかった船だしね」
よっこいしょ。
腰をあげて、部室から出ようとする。
ユニは。
ぼーとしていた。
「ほら、なにしてんのユニちゃん」
「……はい?」
手を引っ張られ、立ち上がり。
「一緒に行こ」
3人は、揃ってそう言ってくれた。
やっぱり、嬉しかった。
*
そんなこんなですが。
多分、自分が本当に皆さんと馴染むのには、まだ時間がかかるのだと思います。
やっぱり、生まれの差は、結構大きいです。
でも。
いつかは。
きっと。
その瞬間のために、時を重ねていこうと思います。
じゃあ。
明日からも頑張ろうと思います。
(つづく)