じー。
 ユニは、みずからの主人のことをじっと眺めていた。

23話「LookingFor」

 ここは来栖川経営のロボットの点検、修理を行う施設。通称はロボ病院。
 我らがHM−13Be091399通称セリオ(偽)は今日、定期検診に来ている。
 検診には小一時間かかるという。付き添いの主人とユニは、待合室で暇していた。
 
 主人は、待合室においてあった子供向けの絵本を読んでいる。まったく動ぜずそういうものを読める辺り、こいつの非凡さを感じなくも、まあ、なくもない。
 ちなみに読んでいる本は山でトロルと山羊三頭がどうこう、という本。結構興味深そうに読んでいる。
 ユニは、そんな主人を見ていた。
 そして、思う。

 ……どこがいいんだろう?
 積年の(といっても生まれてからそれほど長くないが)疑問。
 考えてみても、良く分からない。
 メモリの中にあるひとつ前の自分。
 セリオさん。
 ……なんなんだろう?
 うーん。
 じっと見てみる。
 ……普通に見える。
 まだ、自分はそれほど付き合いが長いわけじゃないけれど。
 でも、それは彼女らも一緒なわけだし。
 よく、わからない。
 
 セリオさんに借りた本のことを思い出してみよう。
 本の中の登場人物は「理由なんか要らない」とか言っていた気がする。
 でも、それは違う気がする。
 世の中のすべての結果は、すべて原因から発生するんだと思う。
 理由が要らない、というのは、その人にとってその理由を明示化出来ない、あるいはする必要が無い、もしくはしたくない、という感情からだと思う。
 うん。やっぱり理由はあるんだろう。

 確かに、知ってどうにかなるかといえば、どうにもならないけれど。
 でも、好奇心って重要だと思うし。
 やっぱり、自分の大好きな人たちがなんでそう思っているのか、というのは気になる。
 ……あれ。
 あの人たちが、大好き?
 それはなんで?
 ……えーと。
 よくわからない。
 いろいろ、ふしぎ。
 考えていたら、ちょっとねむくなってきちゃいました。

 ユニちゃんは、どうも眠ってしまったらしい。
 僕の方によりかかってきた。
 でも、なんていうか。
 照れとか、そういう気持ちはない。
 なんか、子供に寄りかかられているような気分。
 ……なんでかな?

 考えてみましょう。
 1.もしも、セリオさんと私の立場が逆だったら、私はどんな風にご主人様のことを思うのでしょう?
 2.私は、私のことが好きですか? 好きだとしたらそれはなんで? 嫌いだとしたら?
 宿題にしてみます。

 セリオさんの検診は終わりました。
 何も問題なかったらしいです。
 うれしいな。
 わたしと、セリオさんと、ご主人様と3人で、おうちに帰ります。
 帰り際、セリオさんに、こっそりちょっと気になったことを聞いて見ました。
 セリオさん、曰く。

「それは……うーん、ぜんぶ、かな」

 うそだあ。
 うっかり、変な口調で本音を呟いちゃいました。
 私はまだまだ、いろいろ知らなきゃならないようです。

(つづく) 


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