「すごい雨だね、ユニちゃん」
妹で子供な方はこう帰します。
「そう、ですね。すこし、怖いです」
遠くの方でゴロゴロ音がしています。たまに、空がピカッて光ったり。
二人とも、雷は苦手なのです。
がらがら、どん。雷が近くに落ちました。
少しちっちゃい方が、びくっ、って、怯えます。
ちょっと大きい方も、ほんとうはとっても怖がっています。
でも、精一杯のやせがまんでそれを表に出すことはありません。
だって、私は、お姉さんなんだもの。
怖がっている妹をなぐさめなきゃ。
*
ユニは目をつぶり、必死に雷が去るのを待つ。
セリオは、電子脳のかたすみに逃げ込もうとしている根性ナシの勇気をひっぱたいて、必死に虚勢を保とうとする。でもやっぱ怖い。
雨は嫌い。
これは、機械の意見としては極めてポピュラーだと思う。まず、サビる。これが問題だ。……体組織のほとんどが有機物のユニちゃんはどうだか解らないけど。
やっぱり雨は嫌い。
洗濯物は乾かないし。湿気が増すと食べ物が痛みやすくなっちゃうし。
それに
落雷。今度はかなり近い。
セリオは震えた。ユニはもっと震えた。
日常生活においてかなり低めに設定されている感情−恐怖−が一気に二人の思考を舐め尽くす。怖い。
震える。ユニはセリオにしがみつく。セリオもユニをしがみかえす。周りの目など気にしてられない。
*
雨が上がりました。
二人とも、安心したような顔をしています。
地面には即席のみずたまり。まわりのおうちの屋根からは、雨が雫になって落ちていきます。
みずたまりを踏んで靴を汚さないように、二人は気をつけて自分たちの家に帰ろうとします。
空気は冷たく、澄んでいて。
空を見上げると。
虹が、出ていました。
これから寒くなって、冬が来て、そしたら春も来て。
また、季節は巡って。
そのときも、きっと一緒に。
「セリオさん」
ユニさんは話し掛けます。
「雨って、奇麗ですね」
「そう、だね」
まだまだ、雷さまには馴れないけれどね。
微笑み、歌い、息を合わせて、
晴れ上がった空の下。二人は歩いていきます。
(つづく)