『文化祭!?』
「そうよ。もう申し込みしといたからね」

 その日の放課後。
 部室にて楽器演奏の練習に励んでいた真一、ユニ、そしていつのまにか居着いてしまった祐司の3人は、その、突然といえば突然の夏樹の宣言に驚いた。

「ちょっと待て、文化祭って、あと2週間後だろ? 俺らまだまだはじめたばっかだぜ! そんなんでまともに演奏なんか出来ねえって!」
「うん。僕も、ちょぉっと無理だと思うよなっちゃん」
「……すみません。私も、ちょっと、無理です」

 揃って弱音を吐く一同。夏樹はそんなヤツらを見回して、やれやれ、とばかりに肩をすくめる。

「あなた達ね、やる前からそんなんでどーすんのよ? だいたいあなた達は締めきり設定しなけりゃいつまでもたらたらやってそうなんだもの」
「……う」

 一同。言葉も出ない。確かにそうだ。そして、ここで確認したことがある。
 夏樹は体育会系だ。

「とにかく! はじめなきゃはじめないのよ! 別にいいじゃない恥かいたって。その気持ちをバネに次から頑張ればいいのよ!」

 普段、夏樹はそれほど叫ばない。
 やはり、部活とか絡むと人が変わるんだろう。
 真一は、圧倒されつつも何とか反論しようとして、

「お前さあ、そうは言っても」
「返事!」
「はぁい」
「もっとはっきり」
『はい!』

 全員で返事してしまった。
 こういう時やはり体育会系クラブの迫力には勝てない。文化部じゃ。
 それだけ言うと、夏樹は自分の部活へと帰っていった。
 忙しいことだ。

「……行っちゃった?」
「……ああ。ったく、あいつ、普段ぼさっとしているくせに、走り出すと止まんねーんだよな。昔から色々巻き添え食らったよな」
「ん。そーだね。でも、僕は結構楽しかったけど」
「はあ。お前は気楽でいーよ……」

 と、そこで真一は黙り込んでいるユニに気付いた。しまった。これはユニの入ってこれない会話だ。変更しよう。

「あー、それはさておき、仕方ねえ、真面目に練習するか」
「うん。やろーやろー」
「はい」

 その日は、さすがに真面目に練習した。
 明日もこうならいいのだが。
 いや。
 明日も、明後日も、2週間後まできっちり練習したとしても、そんな短い期間でどれだけ出来るか?
 真一はちょっと考えて。
 やめた。
 やるだけやろう。
 あまり夏樹に怒鳴られんのも嫌だしな。
 彼の本音はちょっと情けなかった。

「それにしてもさあ」
「ん?」
「なんかさ、僕らって、3悪人みたいだねタイムボカンの」
「そーか? まあ、ドロンジョは夏樹だな」
「僕ボヤッキー」
「俺トンズラーか? 別に俺太ってねーぞ」
「ま、いいじゃない」
「あの、それでは私は」
「え? ああ、ユニちゃんは……」
「今週の、びっくりどっきりメカー」
「……」
「でしょうか?」
「結構、話通じるな」
「いいことだね」

(つづく) 


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