コンビニエンスストアでパンを買いました。
さっそく犬さんに献上しました。
ぱくぱく。
犬さんはおいしそうに食べています。
「犬さん、おいしいですか?」
私はそのパンを少し食べてみました。
「おいしいですね」
……あれ?
どこかで、これと同じことがあったような……。
一生懸命思い出そうとしても、思い出せないのですけれど。
……そうか、これは。
私のお姉さんたちの誰かの記憶なのですね。
そして。
「やっと、おいしいと言う気持ちが分かりました」
*
次の日。
「こんにちは犬さん。今日はりたーんまっちに来ました」
つまりは、雪辱戦です。
私は覚悟を決め、犬さんと向かい合いました。
負けました。
「犬さん、今日はセリオさんがお弁当を作ってくれたんですよ」
私がご飯を食べられることを知ったセリオさんは「なんやそれならはやくゆーたらえーんに」と似非関西弁を使いながら、私にお弁当を作ってくれたのです。
「とってもおいしいんですよ。犬さんにもおすそ分けです」
犬さんはおいしそうに食べています。
私も、おいしい料理を作れるようになりたいです。
*
さらに次の日。
「……犬さん?」
その日、その公園に犬さんはいませんでした。
「あれ?」
しばらく探してみましたが、犬さんはどこにもいませんでした。
……。
どこかにいってしまったようです。
仕方ありません。帰りましょう。
まあ、別にどうと言うことでもありません。
会って三日、会った時間を足しても1時間にもなりません。
それだけのことです。
公園を去るとき、後ろを振り向いて言いました。
「さよなら、です」
「ただいま帰りました」
「お、ユニちゃんお帰り〜。お弁当出しといてね〜」
セリオさんはお風呂の掃除をしているようです。
いわれた通りお弁当を出そうとして、私は、その中身が少し残っていることに気付きました。
犬さんに食べてもらおうと、残しておいたのです。
……。
食べちゃいましょう。お腹も空いています。
……。
さめたお弁当。
「おーし。風呂掃除終わりっと。って、あれ? ユニちゃん?」
「……」
「ユニちゃん……泣いてるの?」
「……え? 私は……」
別に、悲しくなんか無いはずです。
でも。
「悲しいことが会ったのなら、泣いた方がいいですよ」
「そう、なのでしょうか?」
セリオさんは私を優しく抱きしめてくれました。
さよなら。
別れること。
いつまでも一緒にはいられないと言うこと。
私にとって最初のさよなら。
……もしかしたら、二度目の。
*
で、なんですが。
次の日公園にいってみたら、犬さんはちゃっかりいまして。
その傍らには、別の犬さんもいました。
二人はとても仲がよさそうです。らぶらぶな感じです。
「……よろしくやってらっしゃるようですね」
世の中、なかなか奇麗にはまとまらないようです。
その方が楽しくて良いかもしれませんが。
ともあれ、私はパンを3つ買いにいきました。
(つづく)