「セリオさん。ただいま帰りました」
「おー、お帰り、ユニちゃん」
「ご主人様はまだお帰りになられていないのですか?」
「んー。そっスねー。もうちょっとってとこかな?」
「そうですか」
「ところでユニちゃん。学校、どうだった?」
「はい。問題ありませんでした」
「そーじゃなくって。こう、ステキな出会いの予感とか、生涯のライバル登場っ! とか」
「いえ。特に」
「そ。……あ、ねえねえユニちゃん?」
「はい。何でしょうか?」
「ちょっと待ってね(がさごそ)あったあった、ね、これ見てこれ!」
「……洋服、ですか?」
「ふふん。ただの洋服じゃあないのですよ。ズバリ! 男の夢! 無敵のメイド服です!」
「……どこからそのようなものを?」
「はっはっは。セリオ・シリーズのサテライトサービス能力はこういう時のためにあるのですよ」
「……そうなのですか」
「そっすよ。もうバリバリっス」
「ばりばり、ですか?」
「おー、ささ、ちょっと、これに着替えちゃってくれない?」
「……はい。判りました」

 数分後。

「着替えました」
「お、おおっ! ブラボー! おお、ブラボー! サイコーっすよ。ばっちりっすよ、萌え萌えっすよ!」
「……そうでしょうか?」
「いやー、ユニちゃん元がいいから」
「そんなことは……」
「いやいや、ご謙遜を」
「セリオさんは着ないのですか?」
「いやー、私の場合なんかキャラクター違うし」
「お似合いになると思いますよ」
「あんがと。あの、ところでさ」
「はい?」
「その、セリオさん、っての、なんとかなんねえですか?」
「……駄目でしょうか?」
「いや、駄目っつー訳ではないのですが。なんか、こう、よそよそしい感じがするというか」
「では。何と呼べば良いのでしょうか?」
「そう……ねえ。セリオ……」
「セリオ……?」
「セリオ、お姉様ってのはどうっしょ?」
「……素敵です」
「そんじゃ、試しに呼んでみましょーか!」
「はい。セリオ……お姉様」
「……わんもあぷりーず」
「セリオお姉様」
「次はもうちょっとこっちに来て、こう、上目使いで!」
「セリオ、お姉様」
「ああああディ・モールト(非常に)いいわ! なんかおねーさんぞくぞくきちゃうわ!」
「セリオさんキャラ変わってませんか?」
「とかなんとか言いながら思わずぎゅっと抱きしめてみたり」
「……苦しいです」
「ああん、ほっぺすべすべー」
「……あう」

 ガチャ。

「ただいまー二人とも元気にしてるーってーうわーなんか必要以上に元気って感じだねー」
「は! ご主人様! 私は一体!」
「セリオさん、正気に戻られたのですね」
「は! ユニちゃん! なぜ私たちは抱き合っているの!」
「わりかし本気みたいですね」
「いいなあ。女の子どうし仲良くて。僕はほったらかしか。ふんだ。グレてやる」
「ああっ! グレちゃ駄目ですご主人様! 私ちょっと壊れたかもしれませんが!」
「なんでしたら、今度からご主人様も仲間に入れる、というのはどうでしょう?」
「いや、それはそれで照れくさいから止めとく」
「それはさておき、みんなそろったからご飯にしましょう」
「……立ち直り、早いですね」

 そして。夕食後。

「いやー、ユニちゃん、さっきはごめんねー。ちょいっと乱れちゃったみたいで」
「いえ、特に問題ありません」

 言いながら、ユニを見つめるセリオ(偽)。

「あの? 何か?」
「ん……あのさ、変なこと聞いてもいい?」
「はい? なんですか?」
「私たちってさ。昔どこか出会ったっけ?」
「……」
「あ、そんな訳ないよね、ユニちゃんが起動したのってついこないだなんだし」
「いえ」
「え?」
「昔、会っているんですよ。私たちは」

(つづく) 


戻る 進む 目次に戻る