お祭りです。私は「祭り」のデータをあらかじめダウンロードしていました。
でも、実際に見ると迫力は段違いです。
たこやき、いかやき、おこのみやき、かきごおり、やきそば、わたあめ、えとせとら。
どれも美味しそうです。
自分ではあまり分からないのですが、私の感情構成は他の姉妹達と少々異なっているらしくて、たとえば私は食べ物を食べるのが大好きです。
栄養にならないのは、ちょっと勿体無いですけど。
私は、いっぱい食べました。
こんなにたくさん食べたのは、初めてかもしれません。
ふとご主人様の方を見ると、なんだか、ちょっと困ったような、それでいて優しい顔をしていて。
私はこの顔が大好きです。
わたあめは、とっても甘かったです。
…はや?
ご主人様がいません。
私が金魚すくいに熱中して「1回に2匹すくう」などの高等テクを披露していたのですが。
振り向いたら、ご主人様はいなくなっていました。
…ひとがいっぱいいて、あまり見通しは良くありません。
どこに行ってしまったのでしょう?
どうもご主人様はぼぉっとしていて、ふらふらとどこかに行ってしまうことがあります。
ご主人様は子供っぽい所があるので、知らない人に付いていってしまわないか心配です。
…早く見つけないと。
とてとてと歩いていると、意外とあっさり見つかりました。
ご主人様。…と、誰でしょうか?
少し遠いので良く見えません。射的用のオモチャの鉄砲の銃口に息を吹きかけたりしてます。
変な人でしょうか?
その人はご主人様とおはなしをしています。
と、その人は、私のいる方を指差しました。
ご主人様が振り返ります。私たちの目線が合いました。
ご主人様に、さっきの人は誰なのか聞いてみました。
先輩だよ、と答えてくれました。
*
ぱちぱちぱち…。
線香花火が燃えているのを、私はすこし怖がりながら見ています。
お祭りはもうほとんど終わっていて、人も段々少なくなっています。
初めて花火を見たとき、とっても驚きました。
花火が燃えている様は、過電流によるスパークを想起させます。大変です。
とっても怖かったです。火を見て喜ぶなんて変です。
線香花火は、ちょっと奇麗だと思いましたけれど。
お祭りは終りです。わたしたちはおうちに帰ります。
すこしはしゃぎすぎました。残電力が少ないので、大人しくしています。
私の横顔を、ご主人様はちらちらと見ています。
なんでしょう? 顔に青のりでも付いているのでしょうか?
…少し恥ずかしいです。
横を歩いているご主人様の顔を見て私は。
また行きましょうね、と言いました。
ご主人様は、笑いながら、
そうだね、と言って下さいました。