案の定、セリオ(偽)は食べ物を買い捲っていた。
祭りの食べ物は少し割高。僕は、ちょっと家計の心配をしてしまう。
でも、セリオ(偽)は本当に幸せそうに食べているものだから。
まあ、いいかな、とか思ってしまう。
甘いな。我ながら。
…あれ?
セリオはどこに行ったんだろう?
たしかそこで金魚すくいをしていて、僕はちょっと喉が渇いたから別の所で飲み物を買って。
…金魚すくいの屋台はそこかしこにある。
どれだったっけ?
僕は、あまり土地勘のいい方ではない。どうもはぐれてしまったようだ。
まあ、セリオも子供じゃないし。知らない人に付いていったりはしないだろうけど。
…でも、早いとこ探さなきゃ。
とぼとぼと歩いていると、見た影があった。
先輩だ。
先輩は射的を二挺拳銃でやって、しかも全弾命中させて周囲の喝采を浴びていた。
まったく、変な特技がある人だ。
僕は先輩に話しかけ、セリオを見なかったか聞いてみた。
と、先輩は僕の後ろの方を指差して。
目線があう。そこにいるのはセリオだった。
セリオにさっきの人は誰かと聞かれた。
先輩だよ、と、素直に答えておいた。
*
ぱちぱちぱち…。
線香花火は、静かに輝き、そして落ちる。
祭りも終るころ。僕らは少し離れた所で花火をしていた。
セリオ(偽)は花火が怖いらしい。
少し派手めな筒形花火を使ってみた所、点火と同時に少し離れた木陰に逃げていってしまった。
だから、あまり怖くないと言う線香花火をやっている。
なんで怖がるんだろうね? こんなに奇麗なのに。
祭りは終わり、僕らは家路につく。
少し疲れたらしく、セリオ(偽)は珍しく大人しい。
静かに歩くセリオ(偽)の横顔は、とっても可愛いと思う。
口を開くとああだけど。
…最近は、それも可愛いと思うけど。
ゆっくりこっちを向いてセリオは言う。
また行きましょうね、と。
そうだね。
きっと行こうね。