| 〜〜〜〜〜公園〜〜〜〜〜 |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・こんにちは。 |
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えっ? あ、瑞葉ちゃん! こんにちは・・・・・・。 |
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隣、座ってもいい? |
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え、うん、いいよ・・・・・・? |
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よいしょっ。この時間て、いつもお散歩の時間なの? |
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うん、少し涼しくなってくるから。お店の事務所にはクーラーが入ってるんだけど、そればっかりじゃ丈夫に育たないし、それに赤ちゃんて、ちゃんと人のしゃべることとか音とか聞いてるんだって。だから、なるべく外に出ていろんなものを見たり聞いたりするほうがいいんだって。 |
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へ〜、そうなんだぁ。なんて名前なの? |
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綾瀬ちゃん。女の子だよ。綾瀬ちゃん、おねえちゃんに挨拶しようね。 |
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だぁーぁ〜。 |
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こんにちは、綾瀬ちゃん! あたし、瑞葉だよ。み・ず・は。言えるかな〜? |
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み〜う〜? |
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み〜う〜じゃなくて、みずは〜。 |
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みぅあ〜? |
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「みぅあ〜」だって〜! 可愛い〜 (ぎゅ!) |
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くすっ☆ 言葉は分かっても、まだちゃんと発音できないの。わたしの名前も「みょ〜り〜」としか言えないし。 |
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やぁん、可愛い可愛い可愛いぃ〜 |
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きゃはっ。きゃっ。 |
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ね〜、可愛いでしょ!? |
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うん、可愛い〜☆ あ、ねえ―― |
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え? |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・? |
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(じー・・・・・・) |
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???? |
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・・・・・・髪、触ってもいい? |
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え? わたしの? うん、いいけど・・・・・・???? |
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・・・・・・わぁ、いいなぁ・・・・・・さらさらすべすべ〜。あたしもこういう髪が良かったんだけどなぁ・・・・・・。 |
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瑞葉ちゃんだって、髪きれいだよ! |
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だって、あたしのは細すぎるもん。こういうきれいな栗色にならないし、静電気にも弱いし・・・・・・。やっぱり、みよりちゃんの方がいいのかなぁ・・・・・・。 |
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・・・・・・? |
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ねえ、みよりちゃん、将来はおにいちゃんと結婚するの? |
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え?・・・・・・ええぇぇぇぇっっ!? |
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しないの? |
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え、だって、わたし、そんなの考えた事・・・・・・(あせあせ)。 |
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なかった? |
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・・・・・・えと・・・・・・なくは・・・・・・ないけど・・・・・・。 |
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やっぱりそっかぁ・・・・・・そうだよねぇ。 |
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・・・・・・。 |
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おにいちゃんのお嫁さんになるのは、あたしだと思ってたんだけどなぁ・・・・・・。 |
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(どきっ!!) |
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それなのに、帰ってきてみたらあたしの事はすっかり忘れてるし、このみちゃんと付き合ってるっていうし、メルルちゃんもフランスから飛んできちゃうくらいおにいちゃんが好きだっていうし、それなのに本命はどっちでもないなんていうし―― |
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・・・・・・。 |
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そのうえ本命のみよりちゃんはあたしそっくりだし、そのくせいきなりいなくなったとかいきなり再会しちゃったとか宏樹くんと一緒にいたとか、もう!・・・・・・わけわかんないよぅ・・・・・・。 |
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それは・・・・・・。 |
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ねえみよりちゃん。なんで一度、おにいちゃんと別れちゃったの? こんな事おにいちゃんには聞けないし、このみちゃんはちゃんと教えてくれないし、メルルちゃんには聞きそびれちゃったし・・・・・・。もしみよりちゃんに会ったら、聞いてみようと思ってたの。 |
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だって、わたしがそばにいたら・・・・・・あのひとを不幸にしちゃうもん・・・・・・。 |
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なんで? みよりちゃん、そんなに悪女なの? |
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え、あ、悪女?? |
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あれ? 魔性の女っていうんだっけ? |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・そうなのかも。どんなに願っても、わたしはご主人様の幸せにはなれないもん。なってあげられない。わたしは、ただの想い出だから・・・・・・。 |
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想い出って・・・・・・それ、このみちゃんが言ってた、天使だかなんだかっていうの? みよりちゃんて、ほんとに人間じゃないの? 信じられないよ、そんなの・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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べつに、いいけど。それはそれで。じゃあ、もうおにいちゃんとは会わないの? |
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・・・・・・。 |
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そんな中途半端なんじゃ、あたしだって、どうしたらいいかわかんないよぅ・・・・・・。 |
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・・・・・・瑞葉ちゃん、ご主人様とたくさん約束したんだもんね。 |
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え・・・・・・!? |
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真っ白な服で撮った写真、できあがったらちょうだいねって。もう、瑞葉ちゃんに黙ったままどこにも行かないって。大人になっておにいちゃんが絵描きさんになったら、絵のモデルさんになってあげるって。庭のあの木にみかんが生ったら、一緒に食べようねって・・・・・・。 |
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・・・・・・!! |
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約束、瑞葉ちゃんはちゃんと覚えてるんだよね。わたしが生まれても、瑞葉ちゃんは忘れなかったんだもんね・・・・・・。 |
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え、なんで――みよりちゃんがそんな事知ってるの!? おにいちゃんに聞いたの? おにいちゃん、あたしには忘れたなんて言ってたのに、なんでみよりちゃんには話したの!? |
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ううん、違うの。あのひとは覚えてないよ。わたしが、想い出、とっちゃったから・・・・・・。 |
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・・・・・・本当なの? |
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・・・・・・。 |
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あたし――あたし・・・・・・もう、帰るね・・・・・・。 |
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だけど、きっともう少しで取り戻せるから・・・・・・。だから、瑞葉ちゃん・・・・・・。 |
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・・・・・・!! (たったったっ・・・・・・) |
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・・・・・・。 |
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あー、あー? |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・? |
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これで、いいんだよね。これで、みんな元に戻るんだから。ずっと前になくした忘れ物を取り戻して、想いだして・・・・・・それで、わたしのいない、約束した毎日に戻るんだから・・・・・・。 |
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ふぇぇ・・・・・・。 |
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(でも、・・・・・・痛い・・・・・・。胸が、痛いよぅ・・・・・・) |
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ふぇぇぇん! ふぇぇぇぇん! |
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――泣いてるよ、赤ちゃん。 |
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・・・・・・!! |
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よく知らないけど、赤ちゃんて、周りの大人の感情に敏感だって話だし。一昨年結婚したうちの姉貴が言ってたけど。 |
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・・・・・・宏樹さん・・・・・・。 |
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さっきの、天瀬だろ? なんか言われたのか? あいつ、子供なだけにけっこうキツイところがあるからな・・・・・・。 |
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ううん、そうじゃないの・・・・・・。そうじゃないの・・・・・・。 |
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そっか。無理に言わなくてもいいけど・・・・・・でも、俺で良ければ、いつでも話くらい聞くから。 |
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・・・・・・!! (ぎゅ・・・・・・) |
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(卑怯なのかもしれない、俺は・・・・・・。だけど)――だけど、君が心配なのは、本当だから・・・・・・。 |
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・・・・・・!・・・・・・・・!! |
| 〜〜〜〜〜夜 天美館・寝室〜〜〜〜〜 |
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(・・・・・・かちゃ) |
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・・・・・・ん? みゃあ? じゃないか、ここにいるもんな・・・・・・。 |
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あ、おにいちゃん、まだ起きてたの・・・・・・。 |
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あー、瑞葉か。どうしたんだ? |
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一緒に寝たいの・・・・・・。 |
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って、マズイだろそれは・・・・・・。俺がもう寝てて意識がないんならまだしも。 |
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だめ・・・・・・? |
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ダメ。当たり前だろ。 |
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じゃあ、お話するだけでもいいから。 |
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それはいいけど・・・・・・もう遅いから明日の方がいいんじゃないか? 明日も予備校だろ? |
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今日がいいの。 |
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・・・・・・分かったよ。そこに明かりのスイッチがあるから―― |
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ううん、点けなくてもいいよ・・・・・・。(もぞもぞ・・・・・・ひょい) |
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みゅ? みゃあ〜・・・・・・。 |
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え? |
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(もぞもぞ) |
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ふみゅぅぅ〜。 |
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おい、話するだけなのになんでベッドに入ってくるんだよ。しかもみゃあまでどかして。 |
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大丈夫、ちゃんと枕持ってきてるから。 |
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いや、そういう問題じゃなくて・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・襲いたくならないって、保証はないぞ。 |
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じゃあ、あたしのこと、襲ってもいいからって言ったら、一緒に寝ていい? |
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・・・・・・お前な。 |
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えへへ、あたしの勝ち〜。 |
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なにが勝ちなんだ、なにが。 |
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えー、なんとなく。いいの、そしたら責任とっておにいちゃんのお嫁さんにしてもらうから。 |
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ったく・・・・・・お前って、どこまで本気なんだ? |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・それで? なんか・・・・・・嫌な事でもあったのか? |
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あのね、もうすぐ、予備校の合宿があるの。 |
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ああ・・・・・・風邪なら、無理に参加しなくてもいいんじゃないか? |
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ううん、それはいいんだけど・・・・・・あのね、今日、電話があったんだけど、ママ、お母さんね、合宿の最終日にこっちに帰ってくるんだって。北海道でのお仕事が終わったから。 |
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ああ、良かったじゃんか。 |
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うん・・・・・・。 |
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・・・・・・それが、嫌なのか? |
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・・・・・・あたし、そしたら、家に帰らなきゃだめ・・・・・・? |
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そりゃ、そうした方がいいだろけど・・・・・・。 |
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おにいちゃん、あたしがいない方がいい? |
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そんな事は言ってないだろ。でも、帰った方が母親も安心するんじゃないか? |
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でも、そしたら、一緒に寝られなくなっちゃうよ。 |
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あのなぁ。理由になってないぞ、それ。 |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・お前さえ良ければ、通いになるだけでバイトは続けてもらった方がありがたいし・・・・・・。そんなに深刻に考えなくったって、家はすぐ近くなんだし。 |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・瑞葉? |
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でも・・・・・・近いって言っても、窓からおにいちゃんが見えないもん。 |
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・・・・・・。 |
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今日ね、みよりちゃんと会ってきたの。 |
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みよりと? |
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あたし、やっぱりまだおにいちゃんが好きなのかなぁ・・・・・・。もしみよりちゃんがあたしとぜんぜん違ってたら、きっと悩まなかったのにな・・・・・・。 |
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・・・・・・お前とみよりとは違うよ。 |
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そんなの分かってるもん。分かってるし、分かってるけど、・・・・・・わかんないよぅ・・・・・・。 |
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お前、言ってる事が訳わかんなくなってきたぞ・・・・・・。 |
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あたし、おにいちゃんを「おにいちゃん」て呼んで、おにいちゃんにそういうふうに「お前」って呼ばれるのが好きなの。あたしって、いつになっても妹なのかなぁ、やっぱり・・・・・・。 |
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瑞葉・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・もう、寝ろよ。今夜は、ここにいてもいいから。 |
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・・・・・・うん。おやすみなさい・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |