〜 8月2日 〜


〜〜〜〜〜予備校〜〜〜〜〜
おはよう、瑞葉。
あ、おはよ〜・・・・・・。
あれ、なんか顔色良くないよ。大丈夫?
ふにゅぅぅ〜〜〜〜・・・・・・昨日、雨に濡れたら熱出ちゃって。
夕立、すごかったもんね。風邪?
ん〜、わかんない。でも熱は下がったし、たぶん精神的なものじゃないかなあ? 昨日いろいろあったから。
そか。あれからどうしたの?
・・・・・・。
おにいちゃんの本命カノジョとあたしの元カレに会っちゃった・・・・・・。
あら〜・・・・・・な、なんかすごい状況。あれ? でも、瑞葉ってしばらく北海道にいたんでしょ? その元カレって北海道の人じゃないの?
そうだけど。東京の大学に進学して、バイトでこっちに来てるんだって。
それって、瑞葉を追ってきたんじゃない!?
知らないもん。
・・・・・・あ、冷たい。
だって、おにいちゃんの方が優しいも〜ん。
おにいちゃんって・・・・・・血がつながってるって訳じゃないんでしょ?
え〜、ゆーたんまでそんなこと言う?
瑞葉が「おにいちゃん」て呼ぶのはべつにいいとしても・・・・・・ほら、ホントの兄妹ってわけじゃないのに、他の女の子が自分のカレシがちょっかい出してるのを見たらどーかなーって。一般的にカノジョの立場からして。
・・・・・・う〜。
でしょ?
でも・・・・・・おにいちゃんの本命って。
うん。
あたしによく似てるんだよ。
・・・・・・え〜っと・・・・・・そうなの?
うん・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・複雑だね。
複雑でしょ。
・・・・・・。
・・・・・・はぁ・・・・・・。
〜〜〜〜〜街〜〜〜〜〜
二人で歩くのも、半年ぶりだな。
うん・・・・・・。
仕事、ホントに休んで良かったのか? まだ開店セール中だろ?
うん、へいき。雪子さんに聞いたら大丈夫だって。たまには一日中赤ちゃんといてあげたいし、前のお店でバイトしてた子も来てくれるからって。
そっか、ならいいけど。そういえばみよりさ、今どこに住んでるんだ?
ここから二駅のとこ。雪子さんの家でお世話になってるの。
あれから・・・・・・ずっと?
うん・・・・・・。本当は一度、天美館の前まで来た事もあるの。だけど・・・・・・。
もし、そのとき玄関を叩いてくれてたら・・・・・・。
・・・・・・。
俺、どうしてたかな。お前をむりやりどこかにさらって行ってたかもしれない。みよりにだって時間が必要だったのに、俺は気づいてやれなかったから・・・・・・。
ご主人様・・・・・・。ごめんなさい、でも、わたし・・・・・・。
分かってるよ・・・・・・。だけど、前にも言ったろ? お前にとってお前は、想い出よりもずっと確かで、大切なものなんだって・・・・・・。お前は俺の目の前にいて、話もできるし、触れる事だってできる。幻なんかじゃ、ないんだから。
・・・・・・。じゃあ、手をつないでいてくれる? はぐれないように・・・・・・。
・・・・・・うん。(ぎゅ)
・・・・・・。
(そういえば瑞葉も、手をつなぐのを・・・・・・。そっか、単に甘えてるんじゃなくて、瑞葉もなにか不安だったのかもしれないな・・・・・・)
・・・・・・あ・・・・・・、ここ、前のお店があった場所。
ああ・・・・・・。
・・・・・・わたし、どこに行ったらいいかわからなくて。このまま消えるのも・・・・・・思い切れなくて。気がついたら、ここに来てたの。ご主人様にオルゴール買ってもらったお店。だけど、もうお店の中は空っぽで、工事も始まってて・・・・・・。
・・・・・・そっか。
それでね、そこに雪子さんがいたの。旦那さんと一緒に。やっぱり、最後にお別れを言いに来たんだって。想い出がたくさんつまった場所だから。ふたりが出逢った場所だから・・・・・・って。
うん・・・・・・。
だけど・・・・・・ここに来て、わたしに会って、気が変わったって言ってた。もう一度お店を始めようって。わたしみたいな子が、もう一度あなたと巡り逢える場所を残しておくために。幸せな想い出を、今に変えるために。
あは・・・・・・。あのひとの言いそうな事だな。
だけど、だから・・・・・・。
そうだな。だから俺はまた、お前と逢えたんだよな・・・・・・。
うん・・・・・・。
・・・・・・。
あ、それでね、そのとき、もう雪子さんのお腹、大きかったから。新しいお店の事とか、赤ちゃんの事とか、いろいろ手伝ってもらえたらって。くすっ・・・・・・わたし、メイド服のまま飛び出して来ちゃったから、家事とか得意そうに見えたのかもね。
料理とかもやってるのか?
んっと・・・・・・あんまり、料理はやってないの。雪子さんと旦那さんの邪魔しちゃ悪いし。朝は忙しいからわたしがやってるけど。
そっか。また、みよりのカレー食べたいな。
・・・・・・ほんとに?
ああ。・・・・・・あ、ちょっと待て、でもアーモンドチョコだけは入れるなよ。
やだ、そんな事覚えてないでよ〜! じゃあわたし、今度作りに行ってあげるね!
うん、飯抜いて待ってるよ。
えへへっ☆ ねえご主人様、いつもはなに食べてるの? このみちゃんとメルルちゃん、もういなくなっちゃったんでしょ?
あー、いや、このみはなんだかんだでうちにいてくれてる。メルルは今はフランスだけど、秋からこっちの大学に留学する事になったから、またうちに来るってさ。
あ・・・・・・そう、なの・・・・・・。
それから、瑞葉な・・・・・・すぐ近くに実家があるんだけど、両親ともに仕事でまだこっちに戻って来れなくてさ。うちに住み込みで働いてもらってる。実際問題として、このみだけじゃ掃除が大変だったしさ。みよりって、実は掃除上手かったんだな。
えへへ☆
そだ、メルルの親父さんと瑞葉って、知り合いだったんだってさ。瑞葉、病気の療養でフランスにいた事があってさ・・・・・・それからは北海道にいたらしいんだけど。そのときに。メルルがうちに来たのも、そもそも瑞葉がうちの事を教えたからなんだと。
え、そうだったの!?
案外、幼稚園のアルバムひっくり返したら、このみと瑞葉も一緒に写ってたりしてな。まあ、いくらなんでもそれはないだろけど・・・・・・けっこう、みんな今までにもどこかで会ってたのかもな。
うん・・・・・・。
あ、それじゃわたし、やっぱり、行かない方がいいかな・・・・・・このみちゃんがいるんじゃ、ちゃんと栄養のあるもの食べてるよね・・・・・・。
みより・・・・・・。でも俺は、お前のカレーが食べたいんだよ。
・・・・・・。
みよりと、一緒にいたいんだよ・・・・・・。
・・・・・・わたし、でいいの?
(ぎゅ)
あっ、やだ、こんな所で・・・・・・(どきどき)。
こうしていれば、手をつないでるだけより、もっとはぐれないだろ。恥ずかしいくらいなんでもない。お前はもう、どこにいないんじゃないかって、そう思いながら待つのに比べれば・・・・・・。
・・・・・・。だけど、怖いの・・・・・・。
俺では、守ってやれない事なのか・・・・・・?
だって、・・・・・・あなたに抱かれていると、泣きたくなるくらい安心するから・・・・・・・。
〜〜〜〜〜天美館〜〜〜〜〜
・・・・・・大丈夫、瑞葉? 顔赤いよ? また熱が出てきたんじゃない?
ん〜、そうかな〜? 熱っぽいかな〜。
ん〜・・・・・・やっぱり、ちょっと熱があるみたいね。今日は無理しないで休めば良かったのに、予備校。
だって、もうすぐ集中合宿だし、ついていけなくなっちゃうもん・・・・・・。あたし、英語とかはできるけど、ホントに理科が苦手だから。
1日くらい大丈夫じゃない?
ん〜、このみちゃんだって、去年はメイドさんやりながら受験だったんでしょ?
うん・・・・・・でもあたしはそんなに専門教科は重要じゃなかったし・・・・・・予備校も行ってなかったからそれなりに時間はあったしね。
いいなぁ。このみちゃん、頭良くって。あたしなんか、自分の面倒も自分で見られないもん・・・・・・。あたし、小さいころにおにいちゃんと出逢えなかったら、どうなってたのかな・・・・・・。
・・・・・・どうって、そんな深刻な事?
あたし、・・・・・・・深刻だよぉ〜。すっごい深刻だよぉ。なんなんだろ、なんなのかなぁ? なんか・・・・・・やきもちやいてるみたいで、やだな・・・・・・。
なに、好きな人でもできたの?
・・・・・・おにいちゃん。
あ、えっ・・・・・・!?
――とね、みよりちゃんと、逢っちゃった・・・・・・。
みより!?
みよりちゃんと、逢っちゃったの。昨日。おにいちゃんと一緒に・・・・・・!
・・・・・・そう。そうなんだ。あは、そっかぁ。みより、見つかったんだ・・・・・・。
ねえこのみちゃん、あたし、どうしよう? どうしたらいいのかな!? わかんないよぉ、なんか頭がこんがらがっちゃうよぉ。
そんなこと、・・・・・・あたしの方が聞きたいわよ・・・・・・。

・・・・・・そんな、こと・・・・・・
・・・・・・後編に続く



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