〜 8月1日 〜


・・・・・・聞いたよ。いま、ベビーシッターやってるんだって?
うん。雪子さんの所で。
雪子さんていうのか。・・・・・・あれから、ずっと?
・・・・・・うん。
――そっか。
・・・・・・。
ご主人様・・・・・・わたし、どうしたらいいかわからなくて。もう・・・・・・消えちゃおうと思ったけど、だけど・・・・・・!!
俺は、またみよりに逢えて嬉しいよ。心の底から。
・・・・・・!!
だから、頼むから、もうそんな事は考えないでくれ。もう、消えるなんて言うなよ・・・・・・。
わたし、あなたと、一緒にいたい。でも・・・・・・。
今は、無理でもいいから。けど、いつか・・・・・・。少しずつでもいい。お前さえそれを望んでくれるなら、どんなに無理な事だって、俺がなんとかしてみせるからさ。誰がどんなに俺の事を責めたとしても、お前のためなら。俺が、なんとかしてみせるから・・・・・・。
ご主人様・・・・・・。
みより・・・・・・。
だぁーうー。あーーあーーー!!
あ。
・・・・・・っと。お、俺のせいか?!
あ、ミルクの時間!
持ち歩いてるのか? 夏場だと、悪くなっちゃうような気がするけど・・・・・・。
うん、だから、水筒のお湯と粉ミルクに分けてあるの。ベビーカーに入ってるから・・・・・・。
ん。これか? どうすればいい??
えっと・・・・・・あん、貸して! わたしがやるから。ご主人様は赤ちゃんみててあげて。
え、俺が!? あ、あ〜〜〜〜〜う〜〜〜〜〜。なあみより、どうすればいい!?
ふぇぇぇ、ふぇぇぇぇぇぇんっ!
あ、あー。えーと、日本語通じるのか? ニ・ホ・ン・ゴ・ワ・カ・リ・マ・ス・カ?? い、いないいないばあ????
ふぇ・・・・・・あ・・・・・・? (きょとん?)
あっ、泣き止んだ!?
だぁーあ〜。
み、みより、なんか赤ちゃん、なんか探してるみたいだぞ、どうすればいいんだ!?
え、ちょっと待って。まだ熱いかな、大丈夫かな〜?
あ〜、え〜と。
(ぎゅ)
・・・・・・う。みより、なんか俺、赤ちゃんに捕まったぞ!? どうすればいいんだ!?
きゃっ。あ〜。
う〜〜〜〜〜〜。
あ、はいはい。ミルクでちゅよ〜。
だぁ〜あ。
はい、おてて離してね。ミルク飲みまちょうね〜。
・・・・・・びっくりした。こんな小さい手でも、ものを掴めるんだな〜。
くすっ☆ 綾瀬ちゃんて、女の子だから、ご主人様が気にいったのかな!?
そ、そーなのか?? て、照れるゼ。
くすくすっ☆
あ〜・・・・・・まあ、落ち着いたんならなんでもいいや。
あー、そだ。ところでみより・・・・・・。
はい? なに?
さっきから気になってたんだけど、その服・・・・・・。
あっ、あのね、いまメイドさんて流行りだって聞いたから、これ着てたらお客さん増えるかなーって。・・・・・・ごめんなさい、これ、ご主人様の家の服なのに。
いや、それはべつにいいけど。みよりのだし。てゆーか・・・・・・どこで流行ってるんだ、どこで。
・・・・・・わかんない。でもバイトの友達が言ってたし。
その友達って・・・・・・、いや、まあいいか。
(こくこく)・・・・・・ぷあ。あぁー。
あ、もうミルクごちそうさまでちゅかぁ?
あー、あー。
じゃあ、おねんねして、もう少ししたら、ママのとこに帰りまちょうね。
だぁー。
・・・・・・ロシア語だな。
えっ?
あ、いや、なんでもない・・・・・・。みより、赤ちゃんあやすの上手なんだな。
えへへ。ご主人様も抱っこしてみる!?
え、い、いいよ。落としたりまた泣かしたりしたら大変だし・・・・・・(汗)。
そう? 可愛いのに〜。ね〜?
(ねむねむ)
可愛いな・・・・・・。
でしょ!?
あー、いや、赤ちゃんだけじゃなくて・・・・・・。
(ゴロゴロ・・・・・・)
あれ? 雷!?
あ、夕立がくるかな・・・・・・。まだ遠そうけど、この空じゃ早く戻った方がいいな。
(――ポツっ)
雨・・・・・・降ってきちゃった? まだこっちは晴れてるのに〜。
風に運ばれてきたんだろ。休憩所に屋根があるって言っても、横殴りの雨になったらマズイなあ・・・・・・。とりあえず、ベビーカーをこっちに運び込もう。それで中に寝かせておけばたぶん濡れないだろ。なんだったら、風が来る方に俺が立ってるし。
え、でも早く帰らないと。雪子さんも心配してるだろうから・・・・・・。
だって・・・・・・手後れじゃないか?
ザーーーーーーーーーーっ
あ・・・・・・。
みよりは赤ちゃんが怖がらないようにみててやれよ。俺、こっちで壁になってるから。あ、そだ。あと電話番号が分かるなら、連絡しておいた方がいいかもな。ほれ、ケータイ――
カッ! ドドーーーーーン
きゃっ!?(ひしっ!)

・・・・・・あ・・・・・・。
(ぎゅ・・・・・・)
(どきどき)・・・・・・。
ひくっ・・・・・・ふぇぇぇぇぇぇぇ!!
あっ! よちよち・・・・・・大丈夫だからね。大きな音して、びっくりしちゃったね。
・・・・・・。
あ、で、連絡・・・・・・。
あ、うん。
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!(ばたばたばたばた)
・・・・・・!!
あ、瑞葉。
やぁぁぁぁん、なんでいきなり夕立なんてくるのー!?
なんでって・・・・・・夕立ってそういうもんだろ。あっちの方は晴れてるし、すぐに通りすぎるんじゃないか?
参ったなぁ。俺、ひとっ走りして傘買ってこようか?
それで、どうするの?
どうするって、帰るんだろ。
だめだよ。だって赤ちゃんが濡れて風邪でもひいたら大変だもん。ね、おにいちゃん?
そうだな。焦らなくったって、そのうち止むだろし・・・・・・。
あ、ご主人様ありがとう。雪子さん、ゆっくりでいいって。
・・・・・・ご主人様?
・・・・・・。
・・・・・・。
あ、いや、これはなんてゆーか職業的なもので・・・・・・なあ?
え、うん。あ、そっか、もうご主人様って呼んだら変なんだ・・・・・・。
おにいちゃん!
あ? ああ。なに?
・・・・・・なんでもないぃ!!
なんだよ・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。



・・・・・・1時間後