〜 8月1日 〜


・・・・・・止んだ、かな?
綾瀬ちゃん、良かったね。もうごろごろぴかぴか、どっかにいっちゃったって!(ぎゅ!)
ひっく、ひっく・・・・・・。
大丈夫だよな、濡れてないよな?
うん。ありがとう、ご主人様☆ ご主人様も大丈夫だった?
・・・・・・。
ああ。けど、さすがに足元は水が撥ねてきたからな・・・・・・靴が濡れてきもちわりー。
あ、タオルがあるから、拭いてあげるね。
いいよ。ていうか染みこんでるからムダだし・・・・・・。
・・・・・・おにいちゃん・・・・・・。
あれ? 瑞葉・・・・・・具合悪いのか!?
ちょっと・・・・・・寒い・・・・・・。
雨に濡れて急に冷えたからな・・・・・・。それじゃ、早く帰って寝たほうがいいな。
(こくん)。
あ、みより・・・・・・。
俺、店まで送って行くよ。
あ、うん。ありがとう・・・・・・。(ちら)
・・・・・・また明日な。
うん・・・・・・。
瑞葉、歩けるか?
・・・・・・(こくん)。
辛かったら言えよ。今日は車で来てるから、駐車場まで行けばあとは寝てられるから。
瑞葉ちゃん、大丈夫?
うん・・・・・・大丈夫、おにいちゃんと一緒だから・・・・・・。
うん、そっか・・・・・・。
・・・・・・。
じゃ、俺らも行こうか。暗くなったら危ないし。
え、うん。それじゃあ、またね・・・・・・。(とことこ・・・・・・)
・・・・・・(けほ、けほ)。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・おぶってってやるよ。ほら。
ん・・・・・・重くない・・・・・・?
ああ。どっちかっていうと軽いかな。
・・・・・・ねえ、おにいちゃん。
ん?
背中・・・・・・、あたしの胸の感触する?
(よろっ・・・・・・)み、瑞葉お前なぁ・・・・・・いきなりなに言い出すかな。
さっき、雨が降ってきたとき、おにいちゃん、みよりちゃんに抱きついてたでしょ。
いや、俺が抱きついた訳じゃないんだけど・・・・・・。
あたし、いいなあって思って。すごく羨ましくって。おにいちゃん、あたしとは腕も組んでくれないのに。
それとこれとは違うだろ。それに・・・・・・。
あたし、おにいちゃんの恋人じゃないよ。わかってる。違うけど。でも、そういうのじゃなくても・・・・・・

・・・・・・あったかいんだもん・・・・・・。
瑞葉・・・・・・。
おにいちゃん、忘れちゃった? 小さいときも、こんな事があったんだよ・・・・・・。
・・・・・・。
なにがあったのかは忘れちゃったけど、おにいちゃん、ご両親にひどく怒られて家出して。子供の事だからすぐに帰ってくるなんて思いもしなかったから、あたし、一生懸命おにいちゃんのこと探して。来るなっていうのについてって、そのうち喘息がひどくなって歩けなくなっちゃって。
・・・・・・。
おにいちゃん、家まであたしをおぶってってくれた。でも、勝手についてったのはあたしなのに、おにいちゃん、そのせいでまた怒られちゃって・・・・・・。

だけど、もう何も言わずにどこへも行かないって、あたしに約束してくれた・・・・・・。
(・・・・・・!! そうだ。守り続けるって、約束した・・・・・・。俺は、ずっとここで・・・・・・)
おにいちゃん・・・・・・ホントに忘れちゃったの? あたしのこと、みんな忘れちゃったの・・・・・・?
・・・・・・瑞葉。
・・・・・・。
・・・・・・みずちゃん・・・・・・。
おにいちゃん・・・・・・!! (ぎゅ・・・・・・)
〜〜〜〜〜駅前〜〜〜〜〜
――ところでみよりちゃんさ、前にメイドの仕事やってたりした?
うん。この服も、ほんとはお店のじゃなくて、ご主人様に作ってもらったの。
へー・・・・・・今時、ホントにそんな家もあるんだな〜。
館自体はそんなに大きくはないけど、あ、って言っても、普通の家よりずっと大きいし、部屋もいっぱいあるけど。それより庭が広くって芝刈りが大変で。わたし、花壇作ってたんだけど、どうなったかなぁ。ちゃんと世話してくれてるかなぁ・・・・・・。
ガーデニングってやつ?
そうそう! ご主人様なんか、「庭いじり」なんて言うんだよ〜。
あはは、なんかいきなり年寄りくさくなるなぁ。
・・・・・・やっぱり、そうかなあ?
あ、いや、みよりちゃんが年寄りくさいって意味じゃないよ。どんな花植えてたの?
ご主人様がハーブティー好きだから、最初はほとんどハーブだったんだけど。慣れてきてからは、いつも花が咲いてるように、咲く時期が違う多年草を植えてたの!
へ〜。よくハーブ栽培セットとかって売ってるけど、あれってほっといても育つもんなのかな? 簡単なら部屋のインテリア代わりに育ててみようかな。
うん、栽培セットの土は最初から肥料が混ざってるから。たまに株を分けたりしないとあんまり大きくならないけど、簡単だよ。
よし、じゃああとで食えるやつ買ってこよう。
くすっ。あ、ねえ、最初に逢ったとき、わたしと誰かと間違えたって言ってたけど・・・・・・。
うん。さっきの天瀬瑞葉だよ。そんなにある苗字じゃないと思ってたけど・・・・・・まさか双子だったりとか?
・・・・・・。
・・・・・・マジ?
えっ、ううん、違うよ。
そ、そっか、意味ありげな沈黙だったからなんとなく焦っちったよ。
・・・・・・恋人だった?
・・・・・・それ未満、だよ。せいぜい。
あ、ごめんなさい・・・・・・。
謝るような事じゃないけど、謝られるとよけい情けなくなるなぁ。
ごめんなさい、あっ。
・・・・・・。
・・・・・・あぅ〜・・・・・・。
あはは・・・・・・。まあどのみち、天瀬は「おにいちゃん」ばっかりだったから。
・・・・・・。
・・・・・・あ、ここまで来れば大丈夫だから。
うん。また店に顔出すよ。・・・・・・あ、それと・・・・・・。
これ。Pっちの番号。暇で暇でどーしょーもない時にでもかけてよ。
え、うん・・・・・・?
そんでさ、もし良かったら・・・・・・ここなら東京にもすぐに出てこられるし・・・・・・俺が来てもいいし。――俺と、付き合わない?
・・・・・・? えっ!?
ナンパじゃないよ。真剣に言ってる。
・・・・・・あ、でも・・・・・・。
――あら。みよりちゃん。お帰りなさい。
あっ、雪子さん!
傘もってきたんだけど・・・・・・もう雨やんじゃったわね。
ま〜ま〜。
はいはい、良い子にしてた?
ちゃあん。
そっちの男の子は・・・・・・あ、昨日来てくれた子ね。みよりちゃんのお友達?
あ、柊宏樹って言います。
またお店にも来てね。男の子でも気に入るような小物も用意しておくから。
ええ。――それじゃ、俺はこれで。
あ、うん。送ってくれて、ありがとう。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・みよりちゃん、今日、誰か懐かしいひとに逢わなかった?
えっ、なんで分かるの!?
今日、お店に来てくれたから、教えちゃったんだけど・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・いつまでも、このままでいる事はできないわよ。いつかは・・・・・・。
・・・・・・うん・・・・・・。



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