〜 7月14日 〜


・・・・・・帰ってきたぜ、天美館・・・・・・。
メルルが帰ってきたと風の噂に聞いて1週間・・・・・・ようやくこの俺っちも、自分のいるべき場所に気づいたってところか。フッ、この俺っちが感傷とはな。どうも独り言が多くなっていけねえぜ。
・・・・・・。
やっぱりここんちじゃ、メルルの料理が最高だな。この色つやといい、盛り付けといい・・・・・・
・・・・・・。
・・・・・・。
フッ。まあ、たまには失敗もあるさ。可愛げがあるってもんよ。
・・・・・・。(きょとん?)
肝心なのは見た目じゃねえ、中身だ。味だ。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・????
い、いやいや、料理は愛情だ。そして思い出こそが最高のスパイスなんだぜ。そうだ、思い出すだろ、あの頃を・・・・・・。生まれて以来、星空だけがベッドの天井だった俺っちが流れ着いた場所・・・・・・この天美館で初めてありついた食い物のあまりの旨さに、俺っちの涙腺は緩んじまったもんさ。そうさ、もう分かったろ、それがメルルの料理だったのさ・・・・・・。
・・・・・・。(じ〜〜〜)
はっ!? そうか、分かったぜ! これはあまりにマズイ、つまり、これは料理じゃねえんだ。料理でない他の何かだ。そうだ、そうに違いねえ。俺っちとした事がそんな事にも気がつかねえとはな、笑っちまうじゃねえか。
・・・・・・みゃ〜。
(ビクゥゥゥッッ!!)
みゃあ〜? (ねずみさん、おいしー?)
・・・・・・よ、よお。猫のお嬢さん、ひさしぶりだな。いつからいたんだ?
みゅ! (ずっと〜)
・・・・・・フッ、こんな所で別れた女と会っちまうたあ、俺っちもヤキが回ったもんだ。・・・・・・心の底から会いたくなかったぜ。
みゃあ? (おいしい〜?)
当然、このピザのようなホットケーキのような謎の物体の事を言ってるんだろうな。そうだな、それ以外の解釈などありえるはずがない。ネズミの事なんかであるはずがないな。ならば答えてやるが、極めて個性的にして未曾有の味だと言っておこう。
にゃあ。(それ、みずはが作ったの〜。おいしくないから、みゃあも食べなかったの)
・・・・・・「みずは」って誰だ? 猫の子じゃあるまいし、ちょっと目を離した隙にまた増えたのか?
みゃあ! (みゃあね、ねこのこ〜)
不幸な事に、そんなこたあ分かってる。フッ、だがそれを聞いて安心したぜ。こいつがメルルの作った物だったらどうしようかと思ったぜ。
ふにゃぁ〜。(メルルね、またいなくなっちゃった・・・・・・)
な、なにっ!?
みゃあ! (でもね、また帰ってくるって。そしたらね、みゃあね、またおいしいお菓子作ってもらうの〜)
そ、そーかい。そういう事は早く言いな。しかしそうなると、この空腹を癒すものを他に探す必要があるな。
ふみゃあ。(みずはが作ったお好み焼きは〜?)
いいかい、猫のお嬢さん。俺っちは今、こいつは料理じゃないと決めたんだぜ。男ってのはな、一度決めた事はそう簡単にはくつがえせねえ不器用な生き物なのさ・・・・・・。
みゃ〜? (みゃあよくわかんない)
・・・・・・あっそ。じゃああっち行ってな。俺っちはこれから今日のパンを手に入れなきゃならねえんだよ。
ふみゃうぅ〜。(やーん、つまんない〜)
さーて、他に残り物でもねえかな?(ごそごそ)
みゃーあー。(つまんない〜。遊んでよ〜)
・・・・・・ちっ、さすがに夏場は冷蔵庫行きか。あれは俺っちじゃ開けられねえしな。ポテチでもねえかな? (ちょこちょこ)
(ぴくっ!)
うっ、棚まで届かねえ・・・・・・。踏み台にできそうな所はないか・・・・・・?(きょろきょろ・・・・・・ととととと)
みゃあ〜!! (ぱっ!!)
うおっ!?!! (ころころころころ)
ふみゃ?
・・・・・・き、効いたぜ、今のねこぱんちはよぉ・・・・・・。爪が出てないのがせめてもの救いだが・・・・・・って、いきなり狩猟本能に目覚めるんじゃないっ!!!!
みゃあ〜♪ (ネズミさんおもしろ〜い。もっと遊んで〜!)
俺っちは忙しいんだ。一人で遊んでろ。(ととととと)
みゃあ〜!! (ぱっ!)
うおおおおおおおお!! (ころころころころころ)
みゃあ〜♪ (わ〜い、ネズミさんて、いっぱいころがる〜♪)
(くっ・・・・・・俺っちとした事が、猫の前に背中を見せちまうとは。油断したぜ。だがどうする、やつとはスピードが違いすぎる・・・・・・こうなれば、これまで数々の強敵をやりすごしてきた、じっと動かずに死んだフリだ!)
みゃ〜!
・・・・・・。
・・・・・・みゃ〜?
・・・・・・。
・・・・・・? (ちょんちょん)
(くくっ、わき腹はやめろわき腹は・・・・・・くすぐったいじゃねえか)
・・・・・・。
・・・・・・。
ふみゅう? (ネズミさん、動かなくなちゃった〜)
・・・・・・(そうだそうだ、だからあっち行ってくれ)。
・・・・・・。
・・・・・・。
(はむ)
(うをっ!? しまった、く、食われる!?)
ふなあ〜。(とてとてとてとて)
(おいこら待て、どこ連れてく気だ!? はっ、まさか、これは獲物を飼い主に見せて褒めてもらうとかいう、飼い猫の習性か!? それなら、やつが離した瞬間が逃げるチャンスだ!)
な〜!
あ、みゃあちゃん。なにくわえてるの?
な〜。(ネズミさん、でんちきれちゃった〜)
(ちょっと待てこら、俺っちは電池なんかで動いてるんじゃねー!)
やん、ネズミ!?・・・・・・と思ったけど、おもちゃ? おにいちゃんからもらったの? 可愛い〜!
みゃあ。
(「みゃあ」じゃねえだろ「みゃあ」じゃ)
わぁ、やわらか〜い。すご〜い、本物みた〜い!
(やめろ、わき腹は弱いんだぁ・・・・・・くくっ、いかん、笑ってしまう・・・・・・)
あれ、今ちょっと動いた? 縫いぐるみじゃないの? どうやって動いてるかな? 電池?
(猫と同じ事言うな〜!)
ボタン電池かな〜? みゃあちゃん、一緒に行っておにいちゃんに訊いてみよっか?
みゃあ!
(お前ら、言葉が通じてないのになんで会話が成立するんだ・・・・・・?)
なに騒いでるの?
あ、これ!
なに・・・・・・きゃっ!
大丈夫だよ、おもちゃだもん。
なんだぁ。びっくりさせないでよ〜。でもそれ・・・・・・ホントにおもちゃ? なんか妙にリアルくない?
そっかな〜? ねえみゃあちゃん、これ、本物?
みゃあ?
どーでもいいけど、本物かもしれないもの持って、どうしてそんなに落ちついてられるわけ?
だってけっこう可愛いよ♪ ほら、手触りもいいし。
そ、そう・・・・・・かな?
・・・・・・。
・・・・・・。(なでなで)
(ぴくっ!)
あれ?
あ、まだちょっと電池残ってるみたいなの。おにいちゃんに新しいのに取り替えてもらおうと思って。
な、なんだそっかぁ。びっくりした。(なでなで)
(くっ・・・・・・巧い、巧すぎる・・・・・・くくくっ・・・・・・)
え?
(だぁーっ!!)
きゃっ!? (ぽいっ!)
(うおっ!? チャンスだ! 逃げろぉぉぉぉぉ!!!!)
みゃあ〜!! (とてとてとてとて・・・・・・)
・・・・・・えーっと・・・・・・。本物?
・・・・・・。
あは、あはは。騙したわけじゃないよ。あたし、ホントにおもちゃだと思ったんだもん!
・・・・・・瑞葉。
・・・・・・ごめん。
今週は、お掃除強化週間ね。
はぁい。ねえ、でも・・・・・・。
なに!?
けっこう可愛かったよね?
・・・・・・。



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