〜 7月7日 〜
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(トゥルルルルルル、トゥルルルルルル) |
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あ、電話だー。(とことこ) |
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・・・・・・メルルか、ジョルジュさんかな? |
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はい、・・・・・・あ、はい・・・・・・えっ、わぁ、ひさしぶりー! あたし、瑞葉です!・・・・・・そうそう! うん、元気!・・・・・・え? うん、えっと、ちょっと待ってね。ねえおにいちゃん、メルルちゃんたち、旅行いつごろ帰って来るって言ってたっけ? |
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あ? 今日の夕方にはって言ってたけど。明日の夕方の便でフランスに帰るからって。 |
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そっか、ありがと! あ、もしもし? 今日の夕方だって。・・・・・・えっ、これから? うん、うん、わかった☆ じゃあ待ってまーす!(がちゃ☆) |
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・・・・・・ちなみに、誰? 瑞葉の知り合いみたいだけど。 |
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うん! これからこっち来るって! |
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そっか。べつにいいけど。じゃあ俺は顔出さないほうがいいかな? |
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えー、おにいちゃんがいなかったら話になんないよ〜? |
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・・・・・・はあ? |
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だって・・・・・・ |
| 〜〜〜〜〜夕方〜〜〜〜〜 | |
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ご主人様、ただいま戻りました! |
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ああ、お帰り。 |
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ふむ。思ったより遅くなってしまったな。日本の鉄道は時間に正確なのはいいが、少しくらいは乗客を待っていてくれても良さそうなものだが。 |
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特急の団体とかなら1分くらいは待ってくれるけど・・・・・・毎回やってたら時刻表作る意味がないでしょ。 |
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ふむ。それも理屈だな。 |
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それより・・・・・・えーと、あー・・・・・・。 |
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? どうかなさいましたか、ご主人様? |
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お帰りなさい、メルル。 |
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え!? お母様! |
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うふふ。びっくりした? 私も来ちゃった。 |
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ふむ。レイチェ・・・・・・なぜ君がここにいるのだね? |
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Mon amour(ねえ、あなた)? 確か、今度日本に行くときは、私も連れて行ってくれるはずじゃなかったかしら? |
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・・・・・・いや、それは、今回は急だったしな、学術調査という訳でもないし、君も孤児院のほうで忙しかったようだし・・・・・・。 |
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約束したわよね? |
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いや、それは、確かにそうだが・・・・・・今度というのは必ずしもこの次という訳ではなく、「今度」や「次」という言葉自体に「次の機会」という意味が含まれているものだし・・・・・・。 |
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約束したのよね? |
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あ、そういえば、3年前、おっしゃってましたね。 |
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ね? メルルもそう言ってるんだから、確かよね? |
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・・・・・・う・・・・・・む。 |
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・・・・・・。 |
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(ひそひそ)ご主人様、なににやにやしてんの? |
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(ひそひそ)いやあ、おもしれーなと思って。 |
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(ひそひそ)おにいちゃん、意地わるーい。 |
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(ひそひそ)そう言うお前だって、目が笑ってるぞ。 |
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(ひそひそ)えー、そんな事ないもん。 |
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・・・・・・分かった、私が悪かった。しかし本当に急だったのだから、仕方がないところもあるだろう? |
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急って言ったって、あなたが急に日本まで行って話をしてくるなんて言い出したんでしょ? 1週間待ってくれれば私も一緒に来れたのに。 本当、ごめんなさいね、私の夫がご迷惑かけちゃって。 |
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へ? あ、はい・・・・・・。 |
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(ひそひそ)おにいちゃんったら、「はい」とか言ってるし〜。 |
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(ひそひそ)いきなり話を振られたから本音が出ちゃったのね。 |
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そういう訳だから、ちょっと上のお部屋を貸してくださいね。どうも夫婦の話し合いが必要みたいだから。 |
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はあ。どーぞ。 |
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じゃ、ちょっといいわね? あなた。 |
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ふむ。しかし、全面的に私が悪いという訳では・・・・・・。(とぼとぼ) |
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・・・・・・ね、ね、夫婦の話し合いって?!(どきどき) |
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よーするに、夫婦喧嘩だろ、この場合・・・・・・。 |
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そんなミもフタもない。 |
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けどさ・・・・・・メルルの家族って、みんないきなり来るのが趣味なのか? |
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え、いえ、そんな事はないと思いますが・・・・・・。 |
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一応、手紙なり電話なりはしてくるのよね。でもいつも直前だから。 |
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あ・・・・・・そうですね、申し訳ありません・・・・・・。 |
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べつに謝るほどの事でもないよ。メルルが悪いわけでもないしな。それより、旅行、どうだった? 親父さんと話ができたか? |
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はい。ご主人様のこと、たくさん聞いていただきました・・・・・・。 |
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そっか・・・・・・今夜は送別会かな。なんか知らないけど、レイチェさんまで来ちゃったし。 |
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じゃあ、お寿司でもとる? 日本食がいいのよね? |
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わ、私、生のお魚さんは・・・・・・。 |
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お魚さんて。 |
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だって、テレビで見ましたけれど、まだ生きてうちに料理してしまうんですよ。お口やエラが動いてるんですよ。 |
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活け造りの事か? 確かにあれは俺もどーかと思うけど。それに夏場はナマモノはな〜。 |
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ねえ、それより、今日って七夕でしょ? 神社でお祭りじゃなかった? もうやってないの? |
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あー、あそこの祭りは灯篭流しはやっても花火が上がらないから忘れてたな・・・・・・。去年の七夕はうちでやったし。 |
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そういえば、そうだったよね。みよりがみゃあちゃんと一緒に歌いながら飾り作ってて。 |
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ご主人様が笹をとってきてくださったんですよね。 |
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うん。そか、そうだったな・・・・・・なんか、今年はばたばたしてて忘れてたよ。 |
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神社のお祭りって、確かおっきな竹が用意してあって、短冊持っていけば結んでもらえたよね? |
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うん、小さいときはそんな感じだったけど、何年も行ってないからなあ。女友達同士で行って、彼氏持ちの同級生とかと会っちゃったら寒いし。 |
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あはは、そーだな。じゃあみんなして行ってみるか? もしジョルジュさんが無事だったら、ジョルジュさんとレイチェさんも誘って。 |
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もし無事だったらって・・・・・・。 |
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いやなんとなく。あ、そーだ。ついでにコンビニに寄って、花火買ってこようかな。メルル、花火好きだろ? |
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はい! |
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じゃあさ、メルル。帰ってきたばかりで疲れてるとこ悪いけど、二人を呼んできてくんない? 俺らじゃなんか行きづらいし・・・・・・。あ、休んでからでいいけどさ。 |
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あ、はい、そうですね。かしこまりました。 |
| 〜〜〜〜〜2階〜〜〜〜〜 | |
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なあ、レイチェ。確かに今回、私が一人で先に来てしまった事は謝ろう。しかしだね、仕方がないという部分はあったと思わないか? |
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なに言ってるの? |
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い、いや、そういう言い方をされると立つ瀬がないのだが・・・・・・。 |
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フフ、そういう意味じゃないわよ。本当はね、そんなに怒ってる訳でもないのよ。私も、1週間くらいは日本にいるつもりだし。まあ、あなたは学会があるから明日には帰らないとでしょうけど。 |
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ふむ。それはそうだが・・・・・・やっぱり怒ってないか? |
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さあ? それで、どうだった? 彼、3年前と変わってた? |
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ふむ・・・・・・君の目からどうだね? |
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そうね、ちょっと頼りない気もするけど、人は好さそうよね。顔も悪くないし。 |
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ふむ。だがそれだけではない。メルルは、この1年で驚くほど美しくなったと思わないか? |
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ええ。もともとそういう年齢ではあるけど・・・・・・。 |
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そうだろうな。だが、彼のおかげもあるような気もするんだよ。 |
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くすっ・・・・・・そうでしょうね。恋はいちばんのお化粧だもの。 |
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それはそうだろうが・・・・・・そういう単純な事じゃなくてだな。 |
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分かってるわよ。いい? 女はね、誰かを好きになると、そのひとの事を一生懸命に知ろうとするわけ。最初は名前が知りたいとか、住んでる所が知りたいとか。でね、付き合ってるうちに、趣味を合わせようとしたり、ものの考え方まで理解したいって思うの。誰もがそこまでっていうわけじゃないけど、やっぱり影響されちゃうのよね、お互いに。 |
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なんだ。私の言いたい事は最初から分かっていたんじゃないか。 |
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そうよ。もう17年も夫婦をやってるんだもの。メルルがきれいになったのは、彼から輝くものをもらったから。そう言いたいんでしょ? |
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ああ。違うと思うかね? |
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いいえ、そうなんでしょうね。ただ、この年であんなふうにベタ惚れしちゃうと、母親としては将来が心配なんだけど。 |
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ふむ。その事だがな。私は彼がメルルと一緒になる気がないのなら、すぐにでも連れて帰ろうと思っていたんだが・・・・・・それは、私から言ってはいけない事だと言われたよ。 |
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・・・・・・? |
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彼自身の口から拒まなければ、メルルにはずっと未練が残るから、なのだそうだ。決して嫌いではないだろうに、こんなふうにあえて嫌われるように仕向けるというのは、辛いものだよ。それも、本来なら私の役目だったはずのものだ。 |
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・・・・・・そうね。父親だものね。 |
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レイチェ。君はメルルくらいの年齢ではなにをしていたかね? |
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学校に行ってたわよ、もちろん。でなきゃ、大学であなたと出逢う事もなかったでしょ。 |
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ふむ。あの頃の君はまだ・・・・・・いや、なんでもない。つまり、私たちは急ぎすぎたのではないかという事だ。いくらメルルに才能があるからと言っても、社会の常識を身につけられなければ仕方がないし、それに、一緒に旅行してみて気がついたのだが、どうもメルルは初対面の人間の前では控えめすぎるところがあるようだ。おそらくは、家でも大学でも、限られた人間としか付き合っていないからなのだろうが・・・・・・。 |
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それ、あなたが自分で気がついたの? |
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い、いや、実を言えば彼に言われるまで考えもしなかったが・・・・・・人見知りするのも、単に慎み深いのだと思っていたしな。 |
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まあ、ちょっと内気なくらい可愛いものだし、メルルも好きな人相手に言うべき事はちゃんと言えるみたいだから、そんなに気にする事もないと思うけど・・・・・・フランスの方には友達は少ないかもしれないわね。 |
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あのまま大学に戻らせていたら、私はずっと気がつかなかったかもしれない。ここのメイドの子・・・・・・料理が上手で、特にテンプラが美味いんだが・・・・・・ともメルルはずいぶん仲が良いようだ。娘には、同じ年頃の友人も必要なんだよな。図らずも、彼はそれも与えてくれた。彼には、いくら感謝しても足りないくらいだ。 |
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そうね。 |
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ふむ? さっきから気になっていたのだが、君はみんな気づいていたのかね? |
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あの子の母親だもの。当然でしょ。それで、私、考えたんだけど・・・・・・。 |
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(コン、コン)お父様、お母様、少しよろしいでしょうか? |
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(がちゃ)あら、メルル。どうしたの? |
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はい、あの、神社でお祭りがあるそうなのですが、ご一緒いたしませんか? |
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ふむ。それはいいな。ご同伴させてもらう事にしよう。 |
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あら本当? ちょうど良かったわ、私、浴衣を持ってきてるのよ。メルルにもね。 |
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浴衣か。風情があるな。私の分もあるのだろうね? |
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忘れてたわ。 |
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・・・・・・ふむ。やっぱり怒ってるじゃないか・・・・・・。 |
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それじゃあ、着替えなくっちゃね。メルル、こっちにいらっしゃい。着せてあげるから。あなたは出ていてね。(ごそごそ) |
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ふむ・・・・・・。(とぼとぼ・・・・・・がちゃ) |
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お母様、どうなさったんですか、これ・・・・・・? |
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こっちに到着するのが7月7日の七夕だって分かってたから、途中で買ってきたの。ちゃんと着方も教わったから安心してね。日本のデパートの店員って、親切なのか慇懃なのかよく分からないわね。はい、それじゃ、服を脱いで。 |
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はい・・・・・・。あの、ナイトガウンみたいに着ればいいのでしょうか? |
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あ、そんなに胸を開けちゃだめよ。こっちのドレスとは感覚が違うんだから。それに、そういう色っぽい格好は、好きな人の前でするようにとっておくの。いい? |
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は、はい。 |
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ちょっとむこう向いててね。帯結んであげるから。・・・・・・はい、いいわよ。あら! |
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に、似合いませんか? |
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その逆! いいじゃない、可愛いわよ。私じゃ髪を結わえてあげられないのが残念だけど、でも、この方が似合うかしらね。 |
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そうですか!? ありがとうございます。あ、私、去年ご主人様からお誕生日にいただいたリボンがありますので、持って参りますね! |
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そんな物まで持ってきてたの? それじゃ、その前に髪を梳かしてあげるわ。鏡の前にお座りなさいな。 |
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はい。 |
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メルルは本当に素直でいい子なのにね。ジョルジュの言い分じゃないけど、普通の男だったら放っておかないと思うのに。 |
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・・・・・・ご主人様には、もう愛しておられる方がいるんです。今はここにはいませんが、いつか必ず帰ってくるんです。もし、私がその方なら、絶対にそうします・・・・・・。 |
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だから、・・・・・・振られちゃったのね。 |
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・・・・・・はい。私、やっぱり帰ってきてはいけなかったんです。私が好きという言葉を口にするたびに、ご主人様は辛そうなお顔をするから。私がそうさせてしまっているから・・・・・・。 |
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もし、いつになっても帰って来ないとしても、彼はそうし続けるのかしら? |
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ご主人様は、優しい方なんです。みよりさんのいない間だけ、他の女性を愛するなんて、できない方なんです。 |
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でも、メルルはそんな人が好きなの? |
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(・・・・・・こくん)。 |
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そっかぁ・・・・・・。でもね、メルル。男と女の関係なんて、本人にも分からないものよ。わたしとジョルジュもね、大学で出逢った頃は仲が悪くて、結婚する事になるなんて考えてもみなかったわ。お父様って、ああいう性格でしょ? やたら人のする事に口を出したがる。わたし、自分で言うのもなんだけど、男性からもてたから、今度は変な人に好かれちゃったなって思ってたわ。 |
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そうなのですか? |
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でもね、そのうちそれが当たり前になってきて。学生の時は、二人で部屋を借りて暮らした事もあるのよ。まあ、フランスじゃ結婚前の「お試し期間」みたいな同棲は珍しくないけれど、ジョルジュには最初婚約者がいたから、当時はずいぶんうるさい事になってたみたいね。 |
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お父様って、お母様と逢う以前にご婚約なさってたんですか!? |
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そうなのよ。エルテーヌ家って、家柄が家柄だから。でも、選んでくれたのは私。私が選んだのも、あの人。 |
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・・・・・・。 |
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メルル。好きなんでしょ? 本当に、もうその気持ちを置いておうちに帰れる? |
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だって、私・・・・・・。 |
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そうね、私たち、やっぱりあなたを急がせすぎているわね。ごめんなさい、メルル。考えるのは、ゆっくりでいいから。 |
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でも私、明日にはもう・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |