6.登場国家

 「Almagest -Overture-」で登場する国家のうち、いくつかをご紹介します。
 他の国家の設定はマニュアルに収められています。


地球統一連邦(Unified federation of the Earth)

 主星:ソル星系アース
 元首:ジェームス・ジャクソン連邦大統領
 主義:保守
 所有惑星数:9

 人類の正統政府。地球を始めとする太陽系の諸惑星とアルファケンタウリの古い殖民惑星を直轄区とし、アガスティア行政区、メガリス行政区に総督を派遣している銀河社会の盟主である。
 地球の自然環境は、恒星間移民により人口が大幅に減少した事から一定の水準まで回復しているものの、居住可能領域の著しい減少と資源の枯渇は深刻で、その繁栄は殖民惑星への圧制によって支えられている。連邦の権力構造は設立当初の理想をかすませるほどに複雑なものとなり、もはやそこには殖民惑星の民意を反映する術はなく、大半の政治家達にとっては、既得権益の保持こそが自らの最大の使命である。

 元首ジェームス・ジャクソン連邦大統領はそうした政治の力学によってその地位に
いる人物であり、その卓越した政治力は自身の地位の維持だけに注がれている。歴代の連邦大統領の中では比較的穏健派であるが、これは殖民惑星に対して好意的なためというより、軍事的・政治的に直轄区の力が他の行政区より弱まるのを嫌っての事のである。

 かつては敵対的な異星生命体から人類を守るための力であるとされた宇宙軍も、「宇宙人」の存在が再びかすんだ今となっては当時の活力を失っており、有能とは言い切れない者が重要な地位を占めている。しかしそんな状態であっても、一度政府が全軍の発動を承認すれば、惑星規模の独立運動など風前の灯火に過ぎないというのが大方の軍事評論家の意見である。


セレスティア共和国

 主星:セレスタイト星系クリアウォーター
 元首:ハンス・トリティン首相
 主義:改革
 所有惑星数:2


 セレスティア共和国主星クリアウォーターは、生物相とその進化の歴史、大気組成から重力に至るまであらゆる点で地球に酷似しており、「人類が生まれなかったもうひとつの地球」とまで言われる惑星である。
 未だ地球で人類以外の高等知性が出現していないように、今後この惑星で独自の知的生命体が生まれるかどうかは未知数であるが、入植地となる大陸は限定され、工業力の大半は衛星軌道上や星系内の他惑星を中心に建設されるなど、クリアウォーターの環境保護はセレスタイト星系開発における最重要課題となっている。
 ひとつの惑星に負担を集中させない開発計画は、星系内の豊かな資源分布という恵まれた条件があってこそのものであるが、視点を変えれば、星間国家の構築を強く意識したものであったとも言えるだろう。この星系への移民の選抜には知識層・富裕層が優先されてきたという経緯もあり、「持てる者の驕り」という批判も強いが、セレスタイト星系の住民の間では、当初から「新しい星間国家」を模索する風潮が強かったのである。

 そんな折、連邦政府の政治体制の改革を求める最中で起こったファンロン事件は、彼らに決定的な行動を起こさせるのに十分なものであった。すでに惑星行政府の議席の半数近くを占めるようになっていたクリアウォーター独立派は、精力的な政治活動で中立派を抱き込むと、賛同する惑星アメトリンとともに独立の是非を民主的な選挙で国民に問うたのである。
 その過程でいくつもの党が立ち、あるものは淘汰され、あるものは統合され大きくなっていったが、最終的に新国家「セレスティア共和国」の初代首相となったのは、弱冠26歳のハンス・トリティンであった。
 彼はメディアのコメンテーターとして人気の高かった若手の星間政治学者なのだが、自ら議員章を望んでいたわけではなかった。しかし、星系中に広がった独立運動は、大きな知名度とリベラルなイメージをもった「政治の専門家」である彼を放っておいてはくれず、それはまた、独立派の実力者達が渇望していたものでもあった。――彼らは、実務能力よりも、集票力のあるタレント候補を必要としていたのである。
 しかし、出馬を決意したトリティンが選挙を通じて国民に見せたのは、老獪な政治家達相手にもまったく譲るところのない類まれな調停センスであり、対立候補へのネガティブキャンペーンすらも「正義の告発」に変えてしまう弁舌能力であった。そんな彼が同じ党の候補者からさえ脅威として認識されるようになるまで、そう長い時間はかからなかった。
 そして全ての票が数え上げられた時それは現実のものとなり、トリティンは初代首相の座を手にしたのである。だが、彼が何を思いその地位を求めるに至ったのか、全てを知る者はあまりに少ない。

 新設されたセレスティア宇宙軍の士官は、中央から辺境に追いやられた、有能だが政治的な駆け引きには弱い人物が中心。独立運動に参加した動機はそれぞれだが、いずれにしてもトリティン首相の目指す未来を注視している事だけは間違いない。


W.L.T.C.

 主星:ロゼッタ星系グッドホープ
 元首:マチス・フライヤー総帥
 主義:改革
 所有惑星数:1


 W.L.T.C.は「We leave the cradle(我々は揺り籠を後にする)」の頭文字で、「ウィルザック」と通称される急進的な銀河進出運動である。既知銀河全般に多くの支持者をもつが、連邦政府は自分達の意思とは無関係に動く彼らを快く思っていない。
 W.L.T.C.は7年ほど前に、提唱者であるウィルステッド・ハーモニア博士と、活動のカリスマ的存在だった博士の長女キャロル・ハーモニアを事故で同時に失うという不幸に見舞われているが、この時分裂しかけた組織を再び現在の形にまとめあげたのが、博士の最も優秀な弟子の一人だったマチス・フライヤーである。

 フライヤー総帥は強い信念をもち能力的にも極めて優れた人物で、W.L.T.C.の中でも原理主義的な考え、すなわち銀河の未踏領域への進出を第一義としている。しかし、今のW.L.T.C.は営利面を優先する一派や政治団体を自認する一派などが混在しており、必ずしも全面的な支持を得ているとは言えず、その指導力を発揮しきれていないのが実情である。

 W.L.T.C.の本拠地である惑星グッドホープは、近年になって稀少資源採掘のために殖民が強行された惑星だが、その生活インフラの整備にはW.L.T.C.の資本や技術者が多く関わっていた。そのため、住民の間では連邦政府よりもW.L.T.C.に共感する者が多く、他の新国家に呼応して独立宣言を行う際にも、W.L.T.C.に政権を委託し運命共同体となる事を選択している。(実務的な問題として、グッドホープ自治議会は独自の星間ネットワークや宇宙艦隊運用ノウハウを持っていなかったためでもある)

 惑星の経済力は脆弱で、多くの支援団体の援助によって辛うじて支えられている状態だが、フライヤー総帥以外にも優秀な人材が揃っており、その潜在的な艦隊運用能力は連邦行政区にも匹敵する。

 なお、この惑星グッドホープは、「ロゼッタ星系知的生命体探査計画」において人工のものと思われる電波が観測された惑星であり、銀河の未知という名の嵐を越えた場所として、地球の喜望峰になぞらえて命名されている。
 W.L.T.C.が本拠地としてこの惑星を選んだのも、ある種のロマンティシズムを刺激するものがあったから、という話もあながち嘘ではないだろう。



 上記の3ヵ国以外に、フリーダムトーチ共和国、イザナミ皇国、ファンロン共和国、ブラオローゼ公国、神聖メシアン教国、オリンピア連合、アガスティア行政区、メガリス行政区、アプサラス特別区、の合計11ヵ国が登場します。
 自国として選んだ国家によって、ゲーム序盤の難易度は大きく変化します。所有惑星の数は経済力の強さとほぼイコールですし、最初から交戦国や対立主義の国家に挟まれてしまっている国家もあります。
 ゲームが進んでも、戦略的な位置関係に悩まされたり、仕官要請に応じやすい人物も限られてきたりするでしょう。


7.登場人物

 「オーヴァーチュア」で登場する代表的な人物をご紹介します。




1段目左から
 ◆ハンス・トリティン (27歳。セレスティア首相。メインシナリオの主人公)
 ◆マチス・フライヤー (27歳。W.L.T.C.総帥)
 ◆アリス・オルトワール (20歳。セレスティア宇宙軍新任司令官)
 ◆メイリ・アシュレイ (20歳。セレスティア首相府総務秘書官。またの名を雑用係)

2段目左から
 ◆ランドルフ・ベルモンド (34歳。セレスティア宇宙軍第1艦隊司令官)
 ◆ジェームス・ジャクソン (67歳。地球統一連邦大統領)
 ◆クローネ・トラパトーニ (27歳。アプサラス特別区首長)
 ◆ルートヴィヒ・ライプニッツ (24歳。ブラオローゼ公王)

3段目左から
 ◆ナナミ・イクセ (23歳。イザナミ女皇)
 ◆サティーラナ・ジャナンタ (35歳。アガスティア行政区総督)
 ◆ポール・アップルシード (32歳。フリーダムトーチ大統領)
 ◆アイザック・バートン (50歳。オリンピア連合評議長)

4段目左から
 ◆ウェンディ・マークライト (29歳。メガリス行政区総督)
 ◆ジョンソン・パク (54歳。ファンロン大統領)
 ◆マイケル・ガーディアン (66歳。神聖メシアン教国教皇)
 ◆ナタリヤ・セルゲーエフ (?歳。セレスティア共和国首相府主席秘書官)


 このほか、ゲーム中には秘書官を除いて100名の多彩な士官達が登場します。
 もちろん同じ顔グラフィックの士官は一人もいませんし、その能力も様々です。一度のプレイで配下にできるのは、おそらくは彼らのうちの2割ほどになるかと思います。自国として選ぶ国家を変えれば、また違った士官達があなたを支えてくれるでしょう。
 能力を重視するだけでなく、好みの士官ばかりを使ってエンディングを目指してみるのも面白いかもしれません。凡庸な人物でも、経験を積んで階級が上がれば大艦隊の指揮を執る事も可能です。


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