■Celeronの夢、ふたたび
筆者は、メインマシンで10か月に渡ってPPGA版のCeleron 300AMHzを使用してきた。
定格動作周波数は66*4.5の
300MHzだが、FSBを
100MHzに設定して100*4.5の
450MHzで稼働させていた。冷却は、パッケージに付属のファンのみだが、きわめて安定動作していた。
No.17にも書いたが、Celeron 300AMHzのオーバークロックは、成功率が比較的高いことから、当時
メジャーになった方法である。いまでもユーザーは多いのではないかと思う。実際、この方法の
コストパフォーマンスは絶大で、しばらくはCPUの速度に不満はなかった。
しかしながら、ここのところ、
Age of Kingsをプレイしたりすると、さすがにもたつきが感じられるようになってきた。
そんな折、インターネット上では、いわゆる
Coppermineコアの
Pentium3を使ったオーバークロック成功例を、しばしば見かけるようになってきた。定格のFSBが100MHzであるCoppermineを、
FSB 133MHzなどで動かすのだ。
まさに、
Celeronの夢ふたたび、といったところである。
しかし、
440BXチップセットのマザーボードの多くは、100MHzより高いFSBでは、
PCIバスのクロックがそれに引きずられる形で、定格である
33MHzよりも高いクロックになってしまう。そのため、PCIカードが動作しなくなってしまう可能性が高い。つまり、安全にオーバークロックを行なうには、
正式に133MHzに対応したチップセットのマザーボードが必要なわけである。それらのチップセットなら、FSBが133MHzでも、PCIバスが33MHzに設定される。
筆者が使用しているマザーボードは、440BXチップセットの
GIGA-BYTE・
GA-BX2000である。数ヶ月前に購入したばかりであり、オーバークロックのためにマザーボードを交換するとなると、出費が馬鹿にならない。また、買い換えるにせよ、もっともメジャーな133MHz対応チップセットである
Apollo Proのパフォーマンスには、いまひとつ確信が持てないのだ。
そこで、CPUの速度に不満を感じつつも、漠然とPentium3の500EMHzが\2万を切ったら買い換えようか、と考えていた。
■440BXとPCIバスクロック
ところが、掲示板などの情報によると、440BXチップセットでも、
FSB 133MHz設定時にPCIが33MHzになるものがあるらしい。
試しにGA-BX2000のマニュアルを確認してみると、FSB 133MHz・PCI 33MHzの設定があるではないか。こうなると、オーバークロックへの期待が高まる。
さらに情報収集してみると、
AGPクロックは、
440BXチップセットでは、FSB 133MHz時には
必ず88MHzに設定されてしまうようだ。これを定格66MHzに設定できるマザーボードは存在しないらしい。
このことがネックになってオーバークロックに失敗することも多いらしいが、現在使用中の
Matrox・
G400は、比較的オーバークロック耐性が高いことがわかった。また、
Shiva氏の
G400 Utilityを使用すれば、本来は2倍に設定されるAGPクロックを1倍に設定することで、ビデオカードに供給される実クロックを押さえることも可能だ。
筆者の環境は、偶然にも、オーバークロックの成功率が比較的高い組み合わせのようだ。
というわけで、ふたたびオーバークロックに挑戦したのである。
■事前準備と購入、定格動作
オーバークロックに当たっては、前述のように現在のパーツをそのまま使用し、耐性の高いパーツを用意するなどの準備は、特に行なわなかった。
ビデオカードは
G400。メモリは、
PC100の
CL=2なら、ほとんどの場合は133MHzでもCL=3なら動作するらしい。PCIカード類については、PCIクロックは33MHzで動作するので、そのまま使えるはずである。
懸念は、
133MHzで動作することになる
440BXチップセットだ。最初からヒートシンクが接着されているが、もし発熱が大きいようなら、ファンなどによる冷却が必要だろう。
購入する
Pentium3は、今回はオーバークロック動作を狙うため、FSBが
100MHzであることが必須条件である。オーバークロック時にクロックが上がりすぎないことが成功の鍵であるため、
500EMHzを選択することにした。
CoppermineのPentium3には
SECC2版と
FC-PGA版があるが、500EMHzは
FC-PGA版しかないため、それを購入。もしも失敗したときには、素直に500MHzで使う所存である。
GA-BX2000はSlot1 CPU対応なので、FC-PGAからSlot1へのアダプタが必要になるが、定番の
SOLTEK・
SL-02A++を購入してきた。
LaOX・
ザ・コンピュータ館にて、CPUが
\25,100、アダプタが
\2,850だった。
購入後、さっそくCPUを交換する。アダプタの高さが、いままでのものより高かったため、ケース内のベイと干渉してしまうというトラブルが発生するが、そのベイに搭載されていたHDDを別の場所に移すことで解決した(具体的には、ケースの床の上に両面テープで固定した(苦笑))。
FC-PGA Pentium3のリテール版に付属するファンは、Celeronのものよりも若干背が高くなっているが、一般的には問題ない大きさだろう。
ヒートシンクには、Coppermineのコアに接触する部分に、
熱伝導パッドらしきものが取りつけられている。とりあえずそのまま使うことにしたが、パッドよりはシリコングリスのほうが熱伝導性が高いので、そのうちグリスに変えた方がよいのだろう。
さて、あらかじめGA-BX2000の
BIOSはCoppermine対応のものに書き換えてある。Coppermine登場前のマザーボードではBIOS書き換えは必須といえる。
電源を投入すると、
問題なく立ち上がった。いくつかベンチマークを動かしてみても動作は安定しており、性能が向上していることも確認できた。
■いよいよオーバークロック
さて、定格動作を確認したら、いよいよ
オーバークロックである。
GA-BX2000の場合は簡単で、マザーボード上の
ディップスイッチを切り換え、FSBを133MHzに設定するだけである。
アダプタのジャンパを切り換えることでCPUコアの
電圧設定も可能だが、CoppermineのCPUの場合、コア電圧を上げなくてもオーバークロックできるケースが多いとのことである。電圧設定はデフォルトのままとした。
各スイッチの設定を確認したら、いよいよ
起動である。オーバークロック後の電源投入は、いつもどきどきするものである。
異臭や
異音がしたら、すぐにスイッチを切れるように準備をしておくことは、いうまでもない。
電源スイッチをおもむろに押すと、いつものビープ音が鳴った。画面には「
PENTIUM III-MMX CPU at 667EBMHz」と表示されている。とりあえず
第一関門は突破である。
そのまま見守ると、Windowsがいつも通り立ち上がった。いくつかアプリケーションを動かしてみるが、異状はない。速度も、なんとなく向上しているようだ。
続いて、
ベンチマークである。ベンチマークは、速度が計測できるのはもちろんのこと、マシンに
負荷をかけるので、安定しているかどうかをはかる目安にもなる。
3DMark2000および
Final Realityを動かしてみたが、どちらも
正常動作した。動作は安定しているらしい。一安心である。
ベンチマークの結果は、Celeron 450MHzにくらべて、目に見えて向上した。実際のアプリケーションの処理速度も、特に重いアプリケーションにおいて、体感できる程度に改善された。
気になる発熱だが、CPUのヒートシンクは、触ると
やや温かく感じる程度である。このくらいなら問題ないだろう。
懸念された440BXチップセットも、ヒートシンクの温度はほぼ同じくらいだ。100MHzのときと較べても、
ほんのすこし温かくなったかどうかである。追加の冷却は必要なさそうだ。
■さいごに
その後、数日利用しているが、CPUに原因があると思われるトラブルは、まったく起きていない。CPU負荷がきわめて高いと思われる
Age of Kingsの8人対戦も、問題なかった。
今回のCPU交換は、おおむね成功だったといえるだろう。
オーバークロックには、故障時に保証がまったく受けられなくなる(CPUだけではなく、影響するすべての部品がそうである)、トラブルが起きたときの原因の切り分けが困難、部品の寿命が短くなる、など
デメリットが多い。とはいえ、成功時の
コストパフォーマンスは抜群である。願わくば、メーカー側も無粋なオーバークロック制限などは行なわず、このまま中〜上級者の遊びとして残してくれることを期待したい。
■追加情報・ビデオカードが壊れる 2000/01/22
667MHzで
一週間ほど使用していたが、ある朝、電源を入れると、
ディスプレイになにも映らなかった。起動時のビープ音やHDDアクセスはいっけん正常に見えるが、そのままにしておくとFDDのアクセスランプが点灯した状態で停止してしまう。
CPUのクロックを定格に戻しても、CPUを別のものに交換しても同じ症状だったが、ビデオカードを
G400 Dual Headから、以前使用していた
G200へ交換すると、PCが起動した。
オーバークロック動作で、
ビデオカードを破壊してしまったのである。
インターネットで調査すると、
Shiva氏のページや
奈酢美氏のページ、
ようちん氏の
黄金時代に、有効な情報があった。どうやらこの状態は、G400の
BIOSが破壊されたときに相当するようだ。FDDアクセスを行なうのは、BIOSリカバリー用FDを読み込もうとしているらしい。
G400のBIOSが破壊されるのは、比較的よくある現象らしく、
黄金時代にBIOS復旧手順が公開されていた。
詳細はそちらを見ていただくとして、手順にしたがって作業を行なったところ、なんとかBIOSを復旧することができ、
正常に起動するようになった。
情報を公開されている各氏に感謝である。
幸い、ビデオカード以外のパーツには、特に影響はなかったようだ。
なんとか復旧することができたものの、もしビデオカードが壊れていたら、ばかにならない出費であった。いままでオーバークロックでデータを破壊したことこそあれ、部品を壊したことはなかったのだが、今回は危うかった。
オーバークロックの危険性をあらためて認識した。
筆者の場合、Coppermineのオーバークロックは、133MHz正式対応のマザーボードを入手するなど、状況が整うまで
封印しようと思う。
■追加情報・Apollo Pro 133Aマザーボード購入 2000/02/03
Apollo Pro 133Aチップセットを搭載した、
ASUSの
P3V4Xを購入した。発売されたばかりのマザーボードである。
ASUSの初期リビジョンはいろいろとトラブルが多いとの噂を耳にするので、可能なら前モデルの
P3V133を購入したかったのだが、残念ながら見つけることができなかった。
さて、早速組み立て、Coppermineを導入して電源を投入すると、
デフォルトの設定(すべてAUTO)のままで、
667MHzのオーバークロック動作で起動した。その周波数で動かそうとしてはいたが、ちょっと困ったものである。AGPは66MHz、メモリは133MHzで動作している。
OSには
Windows98 Second Editionを導入した。インストールは問題なく終了し、VIAのチップセットもきちんと認識された。
AGPドライバのみ導入する必要があるとのことなので、
VIAのサイトから最新版をダウンロードし、組み込んだ。
その後、アプリケーションをインストールして動かしてみたが、特に問題は起きていない。VIAのチップセットということで、若干不安があったのだが、かなり安定しているようだ。
メモリモジュールは、上述のPC100対応のものだが、133MHzのCL=3で問題なく動作している。
さて、肝心のパフォーマンスであるが、
3DMark2000で計測したところ、上記のGA-BX2000と同条件で
2424と、あまり振るわない結果になった。やはりパフォーマンスでは、オーバークロックした440BXには一歩譲るらしい。
とはいえ、CPU(とメモリ)しかオーバークロックしていないという
安心感はあるし(気休めではあるが)、FSB 100MHzでの440BXよりは高パフォーマンスのようだ。
このまま安定して使えるようなら、VIAのチップセットもそれほど悪くない選択肢だといえるだろう。