整 形 外 科 紹 介

藤間病院の整形外科診療について          
藤間病院整形外科診療の平成30年の足跡と平成31年の目標について 藤間病院 整形外科 萎沢利行

1.平成29年と平成30年の整形外科診療の勤務医師の変遷と専門領域について
 慈恵医大整形外科教室の丸毛啓史主任教授の就任から現在まで派遣していただき活躍した医師を記載します。月曜日の外来診療は、油井直子医師が平成16年7月より平成21年6月まで、斉藤滋医師が平成21年7月から21年12月まで、平成22年1月から上野豊医師が平成25年6月まで勤務し二人体制の診療でしたが、平成25年7月から萎沢医師が1月人で外来診療しています。火曜日の外来診療は、曽雌茂医師が平成11年1月より勤務していましたが、慈恵医大整形外科の勤務体制の変更により平成29年12月26日で勤務を終了しました。19年間の長きにわたり脊椎診療を中心に診療し貢献いただいたことに感謝します。慈恵医大整形外科客員教授の村瀬鎮雄医師は、平成19年10月9日より火曜日に月2回の勤務で、平成25年からは2・3・4週の火曜日に外来診療していましたが、平成30年4月から2・4週の火曜日の勤務になっています。
 水曜日は、祭友昭医師が平成18年6月まで、中村陽介医師が19年6月まで勤務し、間浩道医師は19年7月より勤務していましたが平成30年1月9日から火曜日に変更して引き続き診療しています。平成30年1月10日から水曜日の診療は萎沢医師が1人で外来診療しています。
木曜日は16年4月より今村惠一郎医師が1日勤務し引き続き診療しています。第1木曜日だけは平成30年4月から半日勤務で午前中の外来診察しています。
金曜日は、大森俊行医師が平成16年6月まで勤務し、宮坂輝幸医師が平成16年7月から平成25年12月まで勤務し、平成26年1月から平成29年12月まで奥津裕也医師が勤務していただきました。平成29年1月からは中島由晴医師が診療しています。
 土曜日は15年4月より今村惠一郎医師が引き続いて診療します。
病院の当直医として、整形外科医師の間浩道医師は毎週火曜日、平成30年1月から
中島由晴医師が毎週金曜日に勤務していただいています。
平成30年1月から勤務する整形外科医師の専門分野を月曜日から土曜日まで述べます。
「月曜日」
萎沢利行医師が午前の外来を担当し、整形外科全般、慢性関節リウマチ、関節疾患、スポーツ傷害の診療を行います。
「火曜日」
村瀬、間、萎沢医師の3名で午前の外来診療を行います。
村瀬鎮雄医師は股関節疾患の専門医で午前の外来は、股関節疾患の術後のフォローと新患患者の予約診療を行い、午後は人工股関節置換術、臼蓋回転骨切り術などの股関節手術を担当します。
間浩道医師は整形外科領域の外傷の専門医で外傷と一般整形外科の診療を担当します。
午後は、入院患者の回診と整形外科領域の手術に協力していただいています。
「水曜日」
萎沢医師が午前の外来を担当し、整形外科全般、リウマチ、スポーツ外傷、爪診療肩こり診療を行います。
「木曜日」
今村惠一郎・萎沢利行医師の2名で午前の外来診療を行います。今村恵一郎医師は、午前中は手と肘などの上肢疾患と整形外科領域全般の外来診療を担当する手外科専門医です。午後は、手根管症候群・肘部管症候群・弾発指、手部・上肢部の骨折などの手術療法を担当します。整形外科領域の超音波検査で多くの論文を発表し、超音波検査の専門家です。また、入院患者の回診と午後の予約外来も担当しています。
「金曜日」
中島由晴・萎沢利行医師の2名で午前の外来診療を行います。中島由晴医師は、慈恵医大整形外科学教室の脊椎班の主要メンバーで午前は脊椎疾患を中心に整形外科一般外来診療を担当する整形外科専門医です。午後は入院患者の回診と萎沢医師と一緒に整形外科の手術を担当しています。
「土曜日」
今村惠一郎・萎沢利行医師の2名で午前の外来診療を行います。今村恵一郎医師は、手と肘などの上肢疾患と整形外科領域全般の外来診療を担当する整形外科専門医です。必要な場合超音波検査・神経電動速度検査を行っています。
最後に、月曜日から土曜日の午前の外来を担当する萎沢医師の整形外科診療内容を述べます。
@ 「脊椎骨粗鬆症診療」
平成26年11月に導入した骨密度測定機器 (PRODIGY(GE Healthcare))で検査し、原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)に合致する骨密度測定を行い、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」による診断と治療を行います。薬物治療開始基準により、骨密度がYAMの70%以下、または−2.5SD以下の場合に薬物治療を開始します。また、薬物療法とともに合わせて栄養・運動指導を行います。また、大腿骨近位部骨折または椎体骨折が無く、肋骨・骨盤(恥骨、坐骨、仙骨を含む)・上腕骨近位端・橈骨遠位端・下腿骨の脆弱性骨折が無い場合で、骨密度がYAMの70%より大きく80%未満でも、FRAXの10年間の骨折確率15%以上の場合と大腿骨近位部骨折の家族歴がある場合には薬物治療を開始します。
A 「スポーツ外来診療」 
スポーツ外傷と障害の予防を念頭に置き、可能な限りスポーツ復帰を目指した診
療を行っています。スポーツ復帰のためのツールであるJスケールを活用してス
ポーツ復帰の指導を行います。当院整形外科開設からスポーツ外来受診者は10,
0500名を数えます。統計的な検討を定期的に行い、診療にフィードバックできるよう努めています。
B 「骨折の診療」 
若年者から高齢者まで骨折の場合、治療を保存療法とするか手術療法にするかは、整形外科学の適応と患者の意向の両方を加味して治療方針を決めています。
具体的な骨折診療は、大腿骨頚部骨折、脊椎椎体圧迫骨折、上腕骨中枢端・遠位端骨折、足関節脱臼骨折、橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折、手指骨折等が主な骨折症例です。手術が適応となる場合、適切な手術方法を実施して早期の社会復帰を目指す医療を行っています。
C 「変形性関節症の診療」
中高年者の股関節・膝関節・足関節・肩関節・肘関節・手関節・指関節等の変形性関節症の診療を行います。薬物療法・運動療法・理学療法などの保存療法を主に行います。疼痛・機能障害が強く日常生活に困る場合で手術を希望する場合、手術療法として人工膝関節置換術・人工股関節置換術・足関節固定術等を行っています。
D 「関節リウマチの診療」
関節リウマチによる関節の腫れと痛みに対して、適切な薬物療法を行い症状が軽快し進行が停止している「寛解」を目指す診療をしています。抗リウマチ薬や生物学的製剤などの薬物療法の進歩により、他のNSAIDやステロイド剤を使用して発症早期から臨床的寛解を目指す診療を行っています。また、日常生活や仕事が支障なくできる機能的寛解も目指します。そのため、関節リウマチの総合的疾患活動性の評価であるDAS ESR 28、CDAI、HAQを活用し患者さんとともに疾患活動性をコントロールする診療をしています。超音波検査により関節の滑膜肥厚と炎症を評価し、臨床的寛解、機能的寛解と併せて関節破壊を起こさない構造的寛解を目指す診療をしています。
E 「ロコモティブシンドロームの普及のための診療」(略称:ロコモ、和名:運動器症候群の普及)
ロコモは、介護を必要とする虚弱(フレイル)老人とならないために足腰の衰えに早く気づきロコモーショントレーニング(ロコトレ)すなわち、片足立ちやスクワットなどの足腰の運動を適切に行い健康寿命の延伸を目的とする概念です。
脊椎骨粗鬆症、変形性関節症、腰部脊柱管狭窄症など整形外科領域の病気はロコモを引き起こします。適切にロコモ対策を行うことで健康寿命が伸びるよう啓蒙しています。藤間病院の整形外科診療を受けた中高年の全ての患者さんが、ロコモに取り組むよう保健指導しています。
F 「理学療法室の診療について」
 平成19年8月1日より理学療法1の基準で保険診療しています。理学療法士は、牧田、杉浦、馬場の3名の理学療法士で入院と外来患者の機能訓練と理学療法を行っています。
人工股関節置換術、人工膝関節置換術、人工骨頭置換術、股関節臼蓋回転骨切り術、大腿骨頚部骨折観血的整復固定術などの手術前後のリハビリテーションを行います。歩行・片脚起立・up&goの3項目評価や、7つのロコチェック、立ちあがりテスト・2ステップテスト・ロコモ25によるロコモ度評価等を定期的に行い「運動器の傷害によって、移動機能が低下した状態」であるロコモ予防とリハビリに役立てています。
平成31年1月から開始した肩こり診療の体操・理学療法を担当しています。 
G 足趾の爪の診療
 爪甲側縁先端が側爪溝皮膚とその周囲を損傷する陥入爪の痛みと炎症はつらいものです。当科では20年前よりマチワイヤー法、ガター法を行っており最近では侵襲の少ない爪カール法、パッキング法も加えた保存療法を中心に診療しています。併せて巻き爪,爪下外骨腫、爪白癬などの足趾の爪疾患等の診療も行っています。高齢になると下肢機能と足趾の機能の低下の影響で足趾の爪変形が進みます。また体幹四肢関節の柔軟性低下、視力・手指の巧緻性の低下により自分で足趾の皮膚管理や爪切りができにくくなるため爪甲鉤彎症などの爪変形・肥厚爪や爪白癬などの感染症に罹患するリスクが高まります。一般的に足趾の爪の診療は後回しになる傾向があり、爪の変形・疾患がひどくなっても、足など診てもらっては申し訳ないとの考えで受診しない場合がしばしば見られます。爪診療に取り組んでいますので遠慮なく申し出てください。

2.平成31年の整形外科診療の目標
 整形外科全般と特色のある診療分野で地域医療に貢献できる診療を目指します。特色ある整形外科分野として、股関節・膝関節・肩関節を中心とした手術も含めた診療、脊椎外科診療、手の外科診療、足部疾患の診療、関節リウマチ診療、スポーツ整形外科診療を行います。
@ 整形外科診療について
(ア) 外来診療
 体幹・四肢の運動器の急性の疼痛・3か月以上継続する慢性の疼痛・肩こり、体幹・四肢の機能障害で受診した場合   まず整形外科診療を行います。整形外科以外の診療が必要な疾患の場合当院の適切な診療科の診療を受けられるよう紹介いたします。
(イ) 入院診療
 適切な手術と保存療法により早期の社会復帰のため入院期間の短縮を目指した入院診療を行っています。回診は、早朝と午後に行い提供する医療の質の向上に努めています。
A 理学療法室について
 3人の理学療法士が機能訓練を担当しています。研修学生を受け入れ、若い理学療法士の卵の皆様との交流の中で機能訓練の質の向上を目指します。総合健診システムを受診し、保健指導が必要な受診者の運動指導を担当します。平成31年1月から開始した肩こり診療の体操・理学療法を担当します。理学療法室で担当する受診者と患者数の増強が課題です。
B スポーツ外来について
 スポーツ外来は、特別な診療時間帯を設定せずに整形外科診療の中で実施しています。
C 手術療法
 股関節・膝関節の人工関節置換術、股関節臼蓋回転骨切り術、膝関節の関節鏡視下
手術、腰椎・頚椎部の脊柱管拡大手術、手根管症候群の鏡視下切開術、および大腿骨頚部骨折・上腕骨中枢右端骨折、橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折等の観血的整復固定術を実施してきました。手術症例に対して術前に検討し十分な準備をして手術を行うことを基本にしています。術後もしっかりフォローアップしています。
D 関節リウマチ
 NSAIDやステロイド剤と従来型抗リウマチ薬に加えて生物学的製剤8種類とバイオシミラー1剤の注射薬と低分子の内服リウマチ薬を2種類使用し、寛解導入を目指す治療で良好な結果が得られています。今後、開発された抗リウマチ薬の情報を収集して適切に使用するリウマチ診療を行います。
リウマチ診療で貢献できるために、整形外科医の関節の診療と内科医の診察と薬物診療の両方ができるリウマチ医を目指し研鑽を積んでいます。当院を受診するリウマチ患者さんが臨床的寛解、機能的寛解、構造的寛解、社会的寛解が得られ喜んでもらえる診療を目指します。超音波検査で関節の滑膜肥厚と炎症の評価を行ない滑膜炎の厳格なコントロールにより関節破壊を起こさせない診療を実践します。超音波検査技師と連携して適切な関節評価を行いリウマチ診療に役立てます。寛解期間が6カ月間継続した場合、患者様の考えを尊重して薬物の減量、薬物の休薬に取り組んでいます。遠慮なく申し出てください。
E サルコペニアの診療
 平成30年版内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上の日本の高齢化率は平成29年10月1日で27.7%です。熊谷市の平成30年12月1日の高齢化率は28.6%で1年前と比べ1.0%増加し全国平均をやや上回っています。
高齢者は移動能力が減退し、生活不活発となり、転倒による骨折のリスクが増し、フレイル(虚弱)状態のリスクが高まります。フレイル(虚弱)の中心的病態であるサルコペニア(筋肉減少症)は、75歳を超える後期高齢者では有症率が上昇し身体機能障害や死亡と強く関連すると指摘されています。このため、サルコペニアへの対処は65歳以上の高齢者の人口に占める割合が21%を超える超高齢社会で重要な課題です。
サルコペニアを診断する世界的な統一基準はまだできていませんが、診断基準の基盤はDXA法による筋肉量の評価です。体格の影響を補正するため、DXA法による筋肉量を被験者の身長の2乗で除したSMI(skeletal muscle mass index) 値を用います。男性7.0s/m2未満、女性5.4s/m2未満の基準値によりサルコペニアと診断します。
当院はDXA法による筋肉量の測定と評価によりサルコペニアの予防と診療を行っています。
F平成31年は肩こりの診療に取り組んでいこうと考えています。
 国民生活基礎調査で肩こりは女性で1番、男性も2番目に多い愁訴です。肩こりは検査しても要因が見つからない本態性肩こり、内科・婦人科・整形外科などの疾患と関連する症候性肩こりと心因性肩こりに分類されます。健診医師・各診療科医師と連携深め、本態性肩こりと症候性肩こりの診療を藤間病院に定着させたいと考えています。超音波エラストグラフィによる肩こりの評価、理学療法士による姿勢の評価と肩こり体操と理学療法による治療、整形外科医による内服薬・注射療法・生活指導を行い、肩こりの悩みを軽減させたいと考えています。

3.学会・研究会で発表し、論文を作成する作業は、整形外科・リウマチ・スポーツ分野の診療内容を見直すことができて診療内容の向上に役立と考え実践しています
平成30年の学会発表、論文、著書は以下の如くです。
1)発表
第55回埼玉県医学会総会 平成30年2月25日 日曜日 
健康スポーツ医会で発表
@ 演題名 野球の1塁守備で発生した右大腿屈筋の筋断裂の1症例
藤間病院 整形外科
   萎沢利行、村瀬鎮雄、曽雌茂、今村恵一郎、間浩通、奥津裕也、中島由晴
A 演題名 バレーボール選手の筋損傷および筋・腱付着部傷について
藤間病院 整形外科
今村恵一郎、萎沢利行、村瀬鎮雄、曽雌茂、間浩通、奥津裕也
整形外科医会で発表
  反張膝に人工膝関節置換術を施工した1例
  藤間病院 整形外科
  間浩通、萎沢利行、村瀬鎮雄、曽雌茂、今村恵一郎、奥津裕也
2) 論文
1.野球の1塁守備で発生した右大腿屈筋の筋断裂の1症例
藤間病院 整形外科
   萎沢利行、村瀬鎮雄、曽雌茂、今村恵一郎、間浩通、奥津裕也、中島由晴、宮下次廣
 埼玉県医学会雑誌 第53巻 第1号 437-443 2018年
2.バレーボール選手の筋損傷および筋・腱付着部傷について
藤間病院 整形外科
今村恵一郎、萎沢利行、村瀬鎮雄、曽雌茂、間浩通、奥津裕也
埼玉県医学会雑誌 第53巻 第1号 444-449 2018年
3.反張膝に人工膝関節置換術を施工した1例
  藤間病院 整形外科
  間浩通、萎沢利行、村瀬鎮雄、曽雌茂、今村恵一郎、奥津裕也
  埼玉県医学会雑誌 第53巻 第1号 422-425 2018年
3) 著書 
1.埼玉県健康スポーツ医会 25周年記念誌 埼玉県健康スポーツ医会
会長 萎沢利行 平成30年8月25日 発行
2.熊谷市健康スポーツ医会 25周年記念誌 「あゆみ」 熊谷市健康スポーツ医会
  代表 萎沢利行 平成30年10月23日 発行

 
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