整 形 外 科 紹 介 | 藤 間 病 院            令和5年 1月 12日更新

 骨粗鬆症 (こつそしょうしょう) の診療

  骨密度測定機器はDXA法 (PRODIGY(GE Healthcare))を使用し、原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)による診断と治療を行います。
 薬物治療開始基準により、骨密度がYAMの70%以下、または−2.5SD以下の場合に薬物治療を開始します。また、骨密度がYAMの70%以上80%未満で、FRAXの10年間の骨折確率が15%以上の場合と大腿骨近位部骨折の家族歴がある場合に薬物治療を開始します。骨折予防のために、薬物療法とともに骨のためによい食事療法と身体活動の指導を心がけています。
 FRAX(fracture risk assessment tool)とは、WHO(世界保健機構)が開発し、2008年に発表した骨折リスク評価法です。この評価法は40歳以上の方が対象で今後10年以内に予想される、骨折リスクの確率が計算できます。


 

 スポーツ外来診療

 
スポーツ外傷と障害の予防を念頭に置き、可能な限りスポーツ復帰を目指し た診療を行います。スポーツ復帰のためのツールであるJスケール(慈恵医大スケール)を活用し指導します。整形外科開設から診療したスポーツ外来患者数は10,666例を数えます。定期的に統計的な検討と症例検討を行い、スポーツ傷害の受診者の診療にフィードバックできるよう努めています。

 骨折の診療

 
若年者から高齢者までの骨折の診療を行っています。保存療法と手術療法の選択は、骨折の転位と関節内骨折の有無と患者さんのインホームドチョイスを尊重し決めています。大腿骨頚部骨折、脊椎椎体圧迫骨折、上腕骨の近位端と遠位端骨折、足関節脱臼骨折、橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折、手指骨折等の骨折治療に保存療法と手術療法を行っています。

 変形性関節症の診療

  中高年者の股関節・膝関節・足関節・足趾関節・肩関節・肘関節・手関節・指関節などの変形性関節症による急性痛・慢性痛と機能障害を診療しています。治療は運動療法、薬物療法(湿布、内服薬、関節注射)、理学療法などを行います。多くの方は痛みと機能障害が軽快し日常生活に支障がなくなります。しかし、変形性関節症の病態が進行し疼痛と機能障害のため日常生活機能が著しく障害され、手術を希望する場合には、当院で人工膝関節置換術と人工股関節置換術などを行います。

 関節リウマチ(RA)の診療

  RAによる関節炎の腫れと痛みが軽快し、病気の進行が停止している状態の「寛解」を目指す診療を行います。免疫の過剰反応による炎症を抑える抗リウマチ薬や生物学的製剤とNSAID(非ステロイド性消炎鎮痛剤)やステロイド剤を併用して寛解導入を目指します。また、日常生活や仕事に支障のない状態の機能的寛解も併せて目指します。総合的疾患活動性の評価は診療毎に行います。疾患活動性の指標はDAS 28 ESR 、CDAI、HAQ、RAPID-3を活用します。疾患活動性の情報を患者さんに提供し、薬物療法を維持するか、増量、減量するか、改善した場合に休薬するかを患者さんと共に決める診療(協同的意思決定)を心がけています。
 超音波検査により関節滑膜の肥厚と炎症を評価し、臨床的寛解、機能的寛解と併せて関節破壊が起こらない構造的寛解を目指します。
RAによる関節の機能障害がみられる場合、運動療法・理学療法・装具療法とともに令和3年1月からRA患者にSARAH(Strengthening and Stretching for Rheumatoid Arthritis of the Hand)エキササイズプログラムを導入して、手指・手関節の機能障害に対するリハビリテーションに取り組んでいます。
残念ながら関節の機能障害が残った場合、股関節・膝関節・肘関節の手術療法として人工関節全置換術を患者さんと相談して行っています。

 ロコモティブシンドロームを普及させるための診療 ( 略称:ロコモ、和名:運動器症候群 )

  ロコモとは、足腰の衰えに早く気づきロコモーショントレーニング(ロコトレ:片脚立ちやスクワットなどの足腰の運動)により下肢の機能低下による移動動作の障害と転倒による骨折予防を行って健康寿命を延伸する考え方です。骨粗鬆症、変形性関節症、腰部脊柱管狭窄症などの運動器の病気はロコモの原因と考えられます。これらの疾患で受診する中高年の患者さんに、立ちあがりテスト・2ステップテスト・ロコモ25の問診の3つのテストから構成されるロコモ度テストによりロコモ度を算出します。ロコモ度評価は@該当しない、Aロコモド1、Bロコモド2Cロコモ度3の4群に分類されます。ロコモ度3の患者さんを放置すると寝たきりのリスクが高まります。ロコモ度1、ロコモ度2は「運動器の傷害によって、移動機能が低下した状態」であることを自覚し、片脚立ちやスクワットなどのロコトレを積極的に取り組んでいただくよう指導し寝たきり予防に取り組んでいます。

 サルコペニア(筋肉減少症)の診療

  2022年6月14日公表の2022年版高齢社会白書(内閣府)では、65歳以上人口は、3,621万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は28.9%で、65歳以上の人口に占める割合が21%を超える超高齢社会です。熊谷市の高齢化率は、令和4年12月1日現在30.67%で1年前と比べ0.3%増加し全国平均の28.9%を1.77%上回り、超高齢社会が進展しています。 内閣府の統計では65〜74歳人口は「段階の世代」が高齢期に入った後に平成28年の1,767万人でピークを迎えた。その後は、増減を繰り返し、令和23年の1,715万人に至った後に、減少に転じると推計されています。一方、75歳以上人口は、令和36年まで増加傾向が続くと見込まれています。
高齢者は移動能力が減退し、生活不活発となり、転倒により骨折のリスクが増加し、フレイル状態となる傾向があります。フレイル(虚弱)の中心的病態であるサルコペニアは、筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で、身体機能障害、QOL低下、死のリスクを伴うものと考えられています。このため、サルコペニアを診断し治療することは超高齢社会において重要です。サルコペニアを診断する世界的な統一基準はまだできていませんが、診断基準の基盤はDXA法による筋肉量の評価です。身長の2乗で除したSMI(skeletal muscle mass index) 値が用いられます。当院はDXA法による筋肉量の測定と評価を行いサルコペニアの予防と治療を行っています。

 理学療法室の診療について

  理学療法1の基準で保険診療しています。理学療法士は、牧田・馬場・杉浦の3名で入院と外来患者の機能訓練と理学療法の診療を行っています。外来では、整形外科疾患全般の理学療法と手術患者と骨折患者の退院後の機能訓練を行っています。具体的には股関節・膝関節の人工股関節全置換術、股関節の人工骨頭置換術、大腿骨頚部骨折・上腕骨近位端骨折・橈骨遠位端骨折などの観血的整復固定術の手術前後のリハビリテーションを行っています。立ちあがりテスト・2ステップテスト・ロコモ25から構成されるロコモ度テストは、2020年9月10日に日本整形外科学会は新しい臨床判断値のロコモ度3(身体的フレイル相当(一般社団法人日本老年医学会))を追加しました。当院では2020年9月10日以前のロコモ度テストの結果にも臨床判断値のロコモ度3を加えて比較ができるようにしました。ロコモ度テスト時に運動器不安定症の機能評価基準であるTUG(Timed Up & Go Test)時間と開眼片脚立ち時間に高齢者のMental Frailtyを加えて調査しています。ロコモ度評価で非該当・ロコモ度1・ロコモ度2・ロコモ度3に群別し、見合った運動を毎日の生活の中でいつ行うかを宣言していただき運動習慣が定着するよう取り組んでいます。またロコモ度テストは半年を目安に行い「運動器の傷害によって、移動機能が低下した状態」のロコモ予防に役立てています。当院で構成した「肩こり体操」の指導と運動継続のサポートを平成31年1月から行っています。肩こり体操を毎日の生活の中でいつ行うかを宣言していただき運動習慣が定着するよう支援しています。自発的に体操を実施し習慣化していただくことが目標です。令和3年1月からRA患者にSARAH(Strengthening and Stretching for Rheumatoid Arthritis of the Hand)エキササイズプログラムを導入して、手指・手関節の機能障害に対するリハビリテーションに取り組んでいます。

 足趾爪の診療

  高齢者は下肢機能の低下と爪の加齢変化の影響で足趾爪が変形します。また、高齢者は柔軟性の低下、視力や手指の巧緻性の低下により爪切りができなくなり、足部のスキンケアもできにくくなります。このため、爪白癬・足白癬・爪変形・爪肥厚・陥入爪・巻爪などで治療の必要性が多くなります。 一般的に足趾の爪のトラブルによる受診は後回しになります。爪白癬・足白癬・爪変形・爪肥厚・陥入爪・巻爪がひどくても、足趾爪の診療を遠慮して受診しない場合が多く、関節リウマチや足部の疾患や外傷などで足趾を診療した時に治療を開始する場合がほとんどです。 爪白癬は外用剤と内服薬の進歩によりきれいな爪となり喜んでいただくことを多く経験します。しかし、痛みと炎症を伴う陥入爪・巻爪は受診する場合が多いと思います。陥入爪・巻爪による急性痛と慢性炎症は痛みの程度によってさまざまな治療法(パッキング法、ガター法、マチワイヤー法など)を選択して加療します。 足趾爪と足部の皮膚・関節の診療もしていますので藤間病院の様々な診療科の診察のついでに遠慮なく申し出てください。  最近の学会発表、論文、著書を以下に記載します。 ( スポーツ選手の診療、整形外科・リウマチ科の症例を学会・研究会で発表し論文にまとめています。今後の診療に役立つと考え行っています )

 最近の学会発表、論文、著書を以下に記載します
( スポーツ選手の診療、整形外科・リウマチ科の症例を学会・研究会で発表し論文にまとめています。今後の診療に役立つと考え行っています ) 

発 表
(1) 第59回埼玉県医学会総会 令和4年2月27日 日曜日 
〈 健康スポーツ医会で発表 〉
 @ 関節リウマチ患者の転倒調査
  藤間病院 整形外科・リウマチ科
  萎沢 利行、村瀬鎮雄、今村恵一郎、間浩通、池上拓
 A 転倒歴の調査結果 −当院アンケート調査より−
  藤間病院 整形外科
  今村惠一郎、萎沢利行、村瀬鎮雄、間 浩通、池上 拓
〈 整形外科医会で発表 〉
 @ Nail-Patellaの1例   
  藤間病院 整形外科
  間浩通、萎沢利行、村瀬鎮雄、今村恵一郎、池上 拓

(2) 第60回埼玉県医学会総会 令和5年2月26日 日曜日
〈 健康スポーツ医会で発表 〉
 @ 足爪の管理について
  藤間病院 整形外科
  萎沢 利行、村瀬鎮雄、今村恵一郎、間浩通、池上拓、萎沢亨
 A 足爪の爪切りアンケート調査
  藤間病院 整形外科、
  今村惠一郎、萎沢利行、村瀬鎮雄、間 浩通、池上 拓、萎沢亨

〈 整形外科医会で発表 〉
 @ 臼蓋回転骨切り後の長期成績
  藤間病院 整形外科、
  間浩通、萎沢利行、村瀬鎮雄、今村恵一郎、池上 拓


2)論 文

 1.野球の1塁守備で発生した右大腿屈筋の筋断裂の1症例
  藤間病院 整形外科
  萎沢利行、村瀬鎮雄、曽雌茂、今村惠一郎、間浩通、奥津裕也、中島由晴、宮下次廣
  埼玉県医学会雑誌 第53巻 第1号 437-443 2018年
 2.バレーボール選手の筋損傷および筋・腱付着部傷について
  藤間病院 整形外科
  今村惠一郎、萎沢利行、村瀬鎮雄、曽雌茂、間浩通、奥津裕也
  埼玉県医学会雑誌 第53巻 第1号 444-449 2018年
 3.反張膝に人工膝関節置換術を施工した1例
  藤間病院 整形外科
  間浩通、萎沢利行、村瀬鎮雄、曽雌茂、今村惠一郎、奥津裕也
  埼玉県医学会雑誌 第53巻 第1号 422-425 2018年
 4.人工股関節全置換術後ポリエチレンライナーのみの再置換術
  藤間病院 整形外科
  間浩通、萎沢利行、村瀬鎮雄、今村惠一郎、中島由晴
  埼玉県医学会雑誌 第54巻 第1号 387-389 2019年 
 5.埼玉県バレーボール選手と指導者の肩こりの検討
  埼玉医科大学病院参加婦人科、藤間病院 整形外科
  仲神宏子、萎沢利行、村瀬鎮雄、今村惠一郎、間浩通、中島由晴
  埼玉県医学会雑誌 第54巻 第1号 403-406 2019年
 6.肩こりと運動器の痛みの検討
  藤間病院 整形外科
  萎沢利行、村瀬鎮雄、今村惠一郎、間浩通、中島由晴
  埼玉県医学会雑誌 第54巻 第1号 407-412 2019年
 7.バレーボール選手の肩傷害について
  藤間病院 整形外科
  今村惠一郎、間浩通、萎沢利行、村瀬鎮雄、中島由晴
  埼玉県医学会雑誌 第54巻 第1号 413-419 2019年

 8.ラグビーワールドカップ2019埼玉・熊谷開催の医療救護について
  萎沢利行1、久保壽朗2、石丸安明3、三輪佳雅4
  藤間病院1、埼玉慈恵病院2、熊谷ディアベクリニック3、三輪医院4 
  埼玉県医学会雑誌 第55巻 第1号 209-214 2020年

 9.当院スポーツ外来におけるバレーボール選手の足関節・足部損傷
  藤間病院 整形外科 
  今村恵一郎、萎沢利行、村瀬鎮雄、間浩通、中島由晴
  埼玉県医学会雑誌 第55巻 第1号 222-226 2020年

10. 頸椎捻挫と鑑別を要したリウマチ性多発筋痛症の1例
  藤間病院 整形外科 
  中島由晴、萎沢利行、村瀬鎮雄、今村恵一郎、間浩通
  埼玉県医学会雑誌 第55巻 第1号 227-230 2020年

11. 化膿性胸鎖関節炎の1例
  藤間病院 整形外科 
  間浩通、萎沢利行、村瀬鎮雄、今村恵一郎、中島由晴
  埼玉県医学会雑誌 第55巻 第1号 231-233 2020年

12. Crowned Dens Syndromeの小経験
  藤間病院 整形外科 
  中島由晴、萎沢利行、村瀬鎮雄、今村恵一郎、間浩通
  埼玉県医学会雑誌 第55巻 第2号 400-402 2021年

13. 健診現場で受診者が転倒骨折した場合の対応と予防
  藤間病院総合健診システム 萎沢利行 
  日本総合健診医学会 優良施設認定基準研修会・実査委員研修会報告 HEP Vol。48, No.6, 43 2021

14. 寛骨臼回転骨切術後の人工股関節置換術の治療成績
  藤間病院 整形外科 
  間浩通、萎沢利行、村瀬鎮雄、今村恵一郎、池上拓
  埼玉県医学会雑誌 第56巻 第1号 85-88 2022年

15. 関節リウマチ患者のロコモ度評価について
  藤間病院 整形外科,リウマチ科,放射線科 
  萎沢利行 、村瀬鎮雄 、今村恵一郎、間浩通、池上拓、宮下次廣
  埼玉県医学会雑誌 第56巻 第1号 99-104 2022年

16. 当院における肩こり体操の検討
  藤間病院 整形外科,放射線科
  今村恵一郎、萎沢利行、村瀬鎮雄、間浩通、池上拓、宮下次廣
  埼玉県医学会雑誌 第56巻 第1号 105-111 2022年


3)著 書
  1.バレーボール選手の肩関節痛と肩こり 
     平成31年4月20日 発行  
     埼玉県バレーボール協会・医科学委員会委員長 萎沢利行
  2.健診・人間ドックハンドブック 改訂7版 
     2022年2月25日 発行
     分担執筆 21.骨密度検査 260−281 中外医学社