*
「ご主人様。ビーストウォーズメタルスのデストロン陣営をコンプリートしたいのでおこずかい下さい」
「下さい」
「君らいきなり何を言うのかな?」
「ギンギラボディーに目が眩んでしまったのです」
「です」
「駄目だよ。……もうすぐクリスマスだから、それまで我慢したら?」
「私は無宗派なのでそんなバテレンの祭りなど関係無く今欲しいのです」
「欲しいです」
「駄目だってば。我慢しなって」
「ご主人様のけち」
「けち」
「ユニちゃんをエコーに使うのも止めなさい」
「うう、もういいです! 私らは自分で稼ぎます! 行きましょうユニちゃん」
「ちゃん」
「もうエコーはいいです。さあ、いざ日雇いのバイトへ!」
*
というわけなのです。
やはりお金はみずから労働して得てこそ尊いもの。今日は勤労感謝の日ですしね。
「セリオさん」
おや? ユニちゃんが何か聞いてきました。
「あの。アルバイトをするのは良いのですが……」
何か疑問点でも?
「なぜ、このようなビルの工事などをしているのでしょうか?
わたしたちは、肉体労働向きのセッティングをされていないと思うのですけど」
いい質問ですね。ユニちゃん。それは。
「それは?」
なんか面白そうだったからです。
「……そうでしょうか?」
まあ、いいって事ですよ。
*
でもって、仕事は終了しました。
なんか一波乱あるかなー、とか思ってましたけれど。
単身で海外から出稼ぎに来てると言うペドロさんと知り合いになったことを除けば、特になにもなく終了しました。
封筒の中には今日の働き分のお給料。ありがたいことです。
「終わりましたね」
そうですね。
「では、さっそく買い物に行かれるのですか?」
もちです。さくさく行きましょう。
あ、でも、その前にご主人様に電話をしないと。
私たちはおうちに電話をかけました。でも。
(……ツーツーツー)
「お留守、みたいですね」
はい。そう、ですね。
「今日は休日だと言うのに。
ご主人様は、休祭日のあまり関係無い仕事をなされてますね」
そう……ですね。
……。
ねえ、ユニちゃん。
「はい?」
働くのって、お金を稼ぐのって、大変だったですね。
「はい。そうでした」
……ねえ、ユニちゃん。
「はい?」
*
「ただいまー。ごめん、急に出かけなきゃ行けなくなっちゃって」
「あ、おかえりなさいませ。外、寒くなかったですか?」
「うん、ちょっと……あれ? 何かいい匂いがするけど?」
「あ、はい。今日はすき焼きなんですよ。奮発しました」
「……え? でも、今は月末だし」
「あ、安心して下さい。お金は私の今日のお給料から出しましたから」
「え? でも、買いたい物があるって」
「……いや、いーんですよ。えへへ。ちょっと、食い気の方が勝っちゃっただけですから。さ、早く食べましょ」
「……うん」
*
そうしてすき焼きのたれのCMのごとく暖かな食事が始める。
他方。
「……私、メタルスコンボイ、欲しかったです……」
二人とともに食卓についているユニが誰にも気付かれぬようにそう呟く。
いや、セリオ(偽)はユニの分の給料には手を付けちゃいないが、それでもお姉さんが我慢した横では買いづらい。
今は耐えろ、HMX−17ユニ。
大丈夫。今にクリスマス商戦がやってくる!
(オチなし。ギャフン)