「あ、おはよ、セリオ(偽)」
と、おっしゃられました。
それが私の名前なのでしょうか?
なぜか、違うような気がしました。
*
朝、僕は目を醒ました。
枕投げの一発が奇麗にあごに入った所までは覚えているが、それ以後は覚えていない。
情けないが気を失ってしまったのかもしれない。
セリオ(偽)にかかれば枕も立派な凶器と化す。
…怒らせないように注意しよう。
と、セリオ(偽)の方を見ると、彼女も目を醒ましたようだった。
僕は挨拶をする。
返事はない。彼女は何かけげんそうな顔をしている。
何かあったんだろうか?
まあ、いいや、とりあえず朝ご飯でも食べに行こうか。
そこで僕は、驚くべき風景を見た。
セリオ(偽)が、あまりご飯を食べなかったのだ。
天変地異の前触れだろうか?
*
「あっちゃあ」
「どうかしましたか?」
「見てよこれ。『あの子』が出てきちゃってる」
「…なんでこんなことに?」
「多分、昨日の夜の頭部への衝撃が原因だと思うが…詳しいことは分からんなあ」
「いいんですか? 彼女は認識能力こそ付いてますけど、まだ細かいデバッグは済んでないんでしょう?」
「うーん…それにこのまんまじゃ、元の人格との融合も考えられるしなあ」
「だから、一つの電子脳に二つの人格を置いとくなんて事、しない方が良かったんですよ」
「しかし、データを取るにはそこが格好の場所だし」
「もう、良いですから、さっさと回収作業を始めましょう」
「ああ、もう始めてる。今日中には何とかなるだろ」