「今日は海の日です」
「そだね」
「海に行きてえです」
「なんだいやぶからぼうに」
家の家電製品はふつーじゃないようだ。
「よく見たら、この前買った服の中に水着があったのです」
「よく見なきゃ気付かないような買い物をしないように」
「それはともかく道具は使われてこそ華、服は着なきゃあかんです」
「なんか、口調が変だよ」
昼間、テレビばっか見ているからだろうか?
「つーわけで、海、行きましょう」
「だから、お金ないんだってば」
「そこ、何とかなりません?」
「なりません」
実際、食費を捻出するので手一杯なのだ。
「ふにゅう、ご主人様の意地悪ぅ」
「可愛い子ぶってもダメ」
「じゃあ、せめてプールでも」
「…プールねえ」
それにしても、何故こんなに泳ぎたがるんだろう?
「ああ、きらめく水面、飛び散る波飛沫、そして小麦色の肌…」
「君は日焼けしないでしょ」
「そこらへんはばっちりです」
「は?」
どういう事だろう?
「メイドロボ用拡張パーツ「渚のバンカラ人魚」のサンプル版が届きました」
「それ、何?」
「平たく言うと夏用の皮膚です。一日しか持続しませんが、見た目が人間と
見分けつかなくなりますし、ちゃんと日焼けもします。防水能力も高まります」
「ああ、つまりそれを試したいって訳ね」
そういえば、今朝方なにか郵便物があった気がする。
「ですから、行きましょう」
「…まあ、プールぐらいなら」
「本当ですか? ありがとうございますっ」
「はは…まあ、市民プールなら安いし」
それに、僕としてもセリオ(偽)の水着姿を見たくもあったし、ね。