随分経ちました。
ご主人様はまだ帰ってきません。
とっても退屈です。
この部屋にはゲーム機もありません。ご主人様はゲームをしません。
それは、ちょっと損していると思います。
今度、KCEの新型ゲーム機が出ますから、紹介してみようと思います。
更に待ちました。
ご主人様は一向に帰ってくる様子がありません。
もう11時過ぎです。
普段ならもう眠っている時間です。
ロボットは眠らなくても長時間行動できますが、急に生活のリズムを崩すと、体内のメモリに蓄積されている生活パターンが崩れてしまいます。
お肌にも良くありません。
人間はご主人様で、私たちはその使いです。
それは当たり前です。私たちは人間の作った道具なのですから。
とはいっても、ぞんざいに扱っていい理由にはなりません。
使いには使いのルールがあるように、主人には主人のルールがあると思うからです。
ペットでもロボットでも同じです。
人間は強い権利を持っています。
それは事実です。でも、権利には義務が付いてくるのも事実です。
そういえば。
昔、「小さくても大切ないのち」というフレーズがありました。
私はあれが、ちょっと苦手です。
いのちには、大きいも小さいもないと思うからです。
話がそれましたね。
扉が叩かれたとき、私はちょっとうとうとしていました。
いけません。私はすぐに扉を開けました。
でも。
そこに立っていたのは、ご主人様ではなくて。
一人の女の人でした。