「セリオ(偽)さん? 僕NHKが見たいんだけど」
「私は違う番組が見たいです」
「…何見るの?」
「劇場版DRYmon。この7作目はファンの間でも人気が高い作品です。必見です」
「…漫画?」
「アニメです」
「…NHK見せて」
「やです」
「…見せやがれ」
「…解りました。そこまで言うなら、勝負しましょう」
「なんの?」
セリオ(偽)は、胸元からすっとカード(?)を取り出し、
「花札です」
なんでそんなもんを胸元に入れているんだろう?
僕の疑問を気にもしない様子で、セリオ(偽)は勝負の準備を進めた。
セリオシリーズには、サテライトシステムというものが搭載されている。
衛星経由で、来栖川のホストコンピュータからデータをダウンロードすることにより、
さまざまなジャンルのスペシャリストになれるという能力らしい。
うちのセリオ(偽)は、その機能を使うのが苦手なのだと思っていた。
時と場合によっては得意なようだ。
「これで、私の10連勝ですね」
「…強いんだね」
「勿論です。わりと無敵です」
結局、NHKはビデオ撮りにして、一緒に漫画を見た。
子供向けかと思いきや、全然そんなこと無くて、毒のきいた面白い作品だった。
でも子供が見たら泣くぞ。多分。
番組も終わったので、眠ることにした。
僕は床に布団を敷き、セリオ(偽)は押し入れに潜り込む。
この前の風呂場の一件があってから、セリオ(偽)はどうも僕に警戒心を抱いているらしい。
まあ、機嫌は直っているらしいから、良いんだけど。
「いいですかご主人様。毎日言っているのに今日もまた言うのもアレですけれど、この押し入れの扉を開けて入ってきちゃ駄目です。不許可です。入ってくると大変です。すごいことになります。自分がまだ生きているのを呪うようなことになります」
「わかっているってば。毎日聞いているから」
「それでは、お休みなさいませ」
「はーい。お休みー」
電気が消える。
じゃね。セリオ。
また明日。