状況を説明すると、僕は今、買い物に来ている。
 だがしかし、僕の物を買うためじゃない。
 それでも、僕はたくさんの荷物を持つことになっている。

 まあ、そういうわけだ。

「セリオ(偽)さん。まだ買うんですかぁ?」
「そりゃそーです。バーゲンです。買えるだけ買うです。買いだめです」
「いやしかし、我が家の経済的状況を考慮するとですね」
「そんなことより私が受けた精神的打撃の方が深刻です。ストレスがたまると
回路に過負荷がかかります。過負荷は回路に深刻なダメージを与えます。
 あっぱらぱーになったりもします。これはいけません。ストレスは解消するべきです」

 理屈が通っているようで、決して通っていないような気がする。
 まあ、買い物に付き合うこと自体はいい。
 僕だって、セリオがやってくる前は、何かしら洋服でも買ってやろうかな、とも思っていた。
 とは言っても、僕はあまり服のことなどは解らない。
 女物の服ならなおさらだ。
 そんなんだから、服の選択はセリオ自身に任せようと思っていた。
 だから、今日の行動は予定通りとも言えなくもないのだけれど。
 にしても、いつまで買い物してるんだろう?

「セリオ(偽)さぁん。僕ちょっと向こうの方で休んでてもいい?」
「おっけーです。ご主人様。ここが一段落したら私もそっちに行きます」

 ご主人様。ねえ。
 最初のうちは、彼女も確かに僕の言う事を聞いてくれていた。
 しかしながら、段々と態度がぞんざいになってきている気がする。
 彼女のかぶっていた猫がにゃあにゃあ鳴きながらどっかに行ったような感じだ。
 
「どっちがご主人様なんだか」

 そこらへんにあったベンチに座りながら、そう呟く。
 僕としてはあまり気にはならないのだが、メイドロボとしては何かしら問題がある気がする。
 そんな感じでぼーとしながら天井を見ていると、セリオ(偽)さんの声が聞こえた。

「ご主人様ー♪」

 なんか声が明るい。
 機嫌は直ったようだ。まずは良し。
 僕が目線を下げるとそこには。

「似合いますか?」

 早速着替えているセリオ(偽)がいた。
 なんか色々ポーズを取りながら、くるっと一回転してくれたりもする。
 実際にこの仕草をする人を見たのははじめてだ。

「ん。似合ってんじゃない?」
「へへ、ありがとうございますっ」

 とりあえず気はすんだようだ。
 まあ、変な事言ってまた怒らすのもなんだし。
 本当に似合っているとも思うし。

 そして、山ほどの荷物を(僕が)抱え、僕たちは家路についた。
 本当に、どっちが主人なんだろうね?

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