〜 8月9日 〜
| 〜〜〜〜〜公園〜〜〜〜〜 | |
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・・・・・・あ、雪子さん。すみません、遅くに呼び出したりして。帰りは車で送りますから。 |
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いいのよ。それより、みよりちゃんがいなくなったって・・・・・・。 |
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この時間に行けそうな所は探したんですけど・・・・・・そちらにも戻ってないんですか? |
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ええ・・・・・・。家のほうにも帰ってないみたい。 |
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どこか、行き先とか心当たりはありませんか? |
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いえ・・・・・・。とにかく、まずは落ち着いて考えた方がいいわ。もしかしたら、ちょっと出かけただけかもしれないし・・・・・・。 |
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だけど・・・・・・! |
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・・・・・・そうね。ごめんなさい、気休めよね。 |
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・・・・・・俺、みよりの事を知らなすぎるんです。1年近く一緒にいたっていうのに、あいつのこと、あいつの話、なにも聞いてやれなかった。みよりがいなくなったあとも、あいつを呼び戻すのに、あいつがいつも世話してた花壇をもっときれいにしてやるくらいしか、思いつかなかった・・・・・・。 |
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みよりちゃんが、「想い出」だから? だから、話を聞くのが怖かったのね。 |
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・・・・・・知ってるんですか? |
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ええ、だいたい・・・・・・。 |
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みよりは、俺の「想い出」・・・・・・。それにこだわっていたのは俺の方だったんだ。本当は、ずっと不安だった。みよりの、俺の想い出から生まれたっていう言葉が。俺がみよりを好きになるって事は、結局は自分の失くしたものにこだわってるだけじゃないかって。本当は俺には誰も愛せないし、そんなんじゃ、誰からも愛される資格はないんじゃないかって。だから、俺はみよりの「ほんとう」を見てやれてなかったのかもしれない・・・・・・。 |
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想い出は、自分ひとりで作ったものだと思ってる? |
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・・・・・・。 |
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・・・・・・? |
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・・・・・・違う、と思う。昔、俺のそばには、瑞葉がいた。そしてたぶん、同じくらい昔から、みよりがいた。俺は、みよりの想い出をもってるんだから・・・・・・・。 |
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そうよ。想い出は確かに自分の心の一部だけれど、君が独りで作ったものじゃないわ。心の風景には、どこかに必ずそこに連れて行ってくれたひとがいるんだから。楽しい想い出も悲しい想い出も、独りぼっちでは生まれてこられない。そこには必ず誰かがいる。人でも動物でも、心をもった誰かがいる。想い出は、今まで出会ってきたたくさんのひとたちからの贈り物なの。辛い想い出だって、それを君にくれたひとはもしかしたら君を憎んでいたかもしれないけど、想い出はいつだって君の幸せを願ってる。自分みたいな想い出が、もう君を苦しめないように。これからどこかで出逢う優しい想い出たちが、自分を忘れさせてくれるように。 |
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・・・・・・。 |
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だけど、可哀相に・・・・・・・だからあの子は、君に大切に想われるほど、優しくされるほど消えなければいけないと思ってしまうのよ・・・・・・・。 |
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みよりは、悲しい想い出だったって言うんですか・・・・・・? |
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どんなに楽しかった記憶も、別れの辛さがそれを上回ってしまう事だってあるわ。愛しければ、愛しいほど・・・・・・。いずれ時が癒してくれるかもしれないけれど、それを黙って見ていられなかった想い出がいたのね。お節介で、おっちょこちょいで、優しすぎて・・・・・・君を、愛してしまった想い出が・・・・・・。 |
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みより・・・・・・。 |
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もしかしたら、君のもともとの約束のひとは、みよりちゃんじゃなかったのかもしれない。それとも、みよりちゃんがただそう思い込んでるだけなのかもしれない。常識で考えれば、むしろそうでしょうね。だけど、君があの子の抱えている心の氷を融かしてあげられない限り、どんなに愛していたって、あの子は君のそばにはいられない。あの子の胸のぬくもりは、君のためにあるから。それでは、あの子自身の心の氷は融かしきれないから。それだけは、真実なのよ。 |
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俺は・・・・・・守ります。みよりを。約束したんだから。世界中の全てが俺を責めたって。 |
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・・・・・・。 |
| (Piririririri!) | |
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!!・・・・・・あ、ケータイ・・・・・・もしもし? |
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あ、柊です。いま病院の近くからかけてるんですけど・・・・・・天瀬、急に具合が悪くなったみたいなんです! 寝てるんだと思ったら意識がなくて。さっき、看護婦さんが見回りに来て、それで・・・・・・。俺は家族の人じゃないからって追い出されちゃったんですけど・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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もしもし? どうかしたんですか? |
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あ、ああ・・・・・・分かった。今、こっちもみよりがいなくなって・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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いなくなった!? みよりちゃんが? |
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それで、雪子さん・・・・・・えーと、みよりがやっかいになってる人にも来てもらったんだけど、そっちにも帰ってないって・・・・・・。 |
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じゃあ、とりあえず天瀬の方は俺がついてますから、そっちはみよりちゃんを探してください! |
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すまない、頼む・・・・・・。 |
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はい。またあとで連絡します。(Pi) |
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・・・・・・。瑞葉が倒れたって連絡が入ったとき、みよりが消えそうに見えた。みよりと、瑞葉・・・・・・みよりと瑞葉の間に、何があるっていうんだ・・・・・・。まさか、みよりは、もう・・・・・・。 |
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・・・・・・誰も、君を責めはしない。なにもかもを敵に回す必要なんかない。だけど、君がみよりちゃんを選ぶなら、みよりちゃんはもうここにはいられない。そして、大切なひとたちをも失う事になるかもしれない。想い出は、独りだけのものじゃないから。君が選ぼうとしている道は、そういう事なのよ・・・・・・。 |
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雪子さん・・・・・・!? |
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それでも、君はみよりちゃんを愛してあげられる? 何かを得るために何かをなくす、そんな選択じゃないわ。何もかも失いながら、そして最後にその愛するひとさえ失うのが分かっていながら、それでも愛してあげられる? |
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・・・・・・。 |
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みよりちゃんみたいな子は、そんなに珍しくはないのよ。ただ、みよりちゃんはちょっとだけ、ずるをしちゃったのね。本当なら、誰かに愛されて生まれてくるはずだったのに、それを待てなかった。人はみんな、誰かを愛するために生まれてくるのかもしれないわ。だけど、いつしか生まれたときにもっていた気持ちを忘れて、思いもしなかった優しさを見つける。そうして、また新しい愛を育てていくの。それが、自然なのよ。それなのに・・・・・・。 |
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雪子さん、あなたは・・・・・・? |
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わたしにも昔、愛しているひとがいたわ。その気持ちは今も確かにあるけれど、あのときと同じままじゃない。今のわたしは、優しさを見つけて、幸せの作り方を知ったから。あのときよりも、愛するものが増えたから・・・・・・。 |
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・・・・・・。 |
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君がどうするかを決めるのは、君自身よ。時間はあまりない。・・・・・・だけど、探すのに困ったなら、いちばん最初に探した所に戻ってみなさい。忘れ物は、それをなくした場所で君が来るのを待っているものだから・・・・・・。 |
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俺は・・・・・・。 俺は、―――― |