〜 4月18日 〜


あ、瑞葉。制服なんだけど・・・・・・。
え、もうできたのーっ!? すご〜い、昨日サイズ合わせたばっかりなのに〜。
なんか、1着だけ試作って事で、出来合いの服を改造して作ったんだってさ。で、一応上下のバランスみてくれって事でさっき来て置いてったんだけど。
それでも早いね〜。あ、そっか。考えてみればこの制服だって1着だけ注文してるわけじゃないし、ご主人様ってけっこうお得意様なんだ♪
まあ・・・・・・そうかな。あと、部屋も2階に用意しといたから、このみに案内してもらって見ておいてくれ。
ご主人様は?
ちょっと郵便局まで。メルルにさ、手紙の返事を出してやんないと。そだ、ついでに、このみの分も持って行ってやろうか?
あ、うん。ありがと。今取ってくるね!(たったった・・・・・・)
瑞葉も、あとでそれ着てみといて。たぶん、そーだなー・・・・・・30分ちょいくらいで帰ってくるから。
うん。おにいちゃん、メイドさんの服、好きなの?
う。・・・・・・まあ・・・・・・。
じゃ、ずっと着ててあげるね。楽しみにしてて♪
楽しみにって・・・・・・、まあいいけど。
ね、それで、エプロンとブラウスは分かるんだけど、このピンクの帯ってどうするの?
こうやって肩からかけて・・・・・・でその上からエプロンの帯を締める、と。エプロンの前を押さえるって役目だけど、まあ、どっちかっていうとただの飾りだな。前と後ろの長さは適当にアレンジしてもいいよ。
うん、わかった☆
ご主人様、持ってきたよ〜。
ん。じゃ、ちょっと行ってくるよ。
うん、お願いね、手紙。
行ってらしゃ〜い!
〜〜〜〜〜10分後〜〜〜〜〜
わぁ、かわいい〜〜〜〜 ねえ、似合います!?
あ、ほんと〜。かわいいかわいい!
ひらひらのついたカチューシャはないのかなあ?
ちゃんとしたやつには一緒についてくるんじゃない?
そうですね、はやくできないかな〜〜?
それじゃ、サイズ良さそうだったらまた着替えてね。お部屋とか案内するから。
あ、このままでいいです。おにいちゃんにも見せてあげたいから。そだ、おにいちゃんじゃなくて、「ご主人様」って言ったほうがいいのかなあ? そーいえば、おにいちゃんて昔はメイドさんからは「おぼっちゃん」って呼ばれてたし。
あはは、おぼっちゃん〜!? なんか変な感じ〜。
そだね、お客さん・・・・・・じゃなくて、お客様が来てる時は「ご主人様」って呼ばないとダメかな。普段はどうでもいいって言ってたけど、みんなそのまま「ご主人様」って呼んでたし。
清羽さんも、名前じゃ呼ばないんですか!?
え、な、なんで?
だって、おにいちゃんの恋人なんでしょ?
・・・・・・どうなのかなあ。本当に恋人っぽくなったら、そしたら名前で呼ぶかな。なんせあのひと、二人ほど物好きな子が予約済みだから。恋人宣言ができるのはまだまだ、かな。
おにいちゃんてもてるんだ〜。あたしもちょっとどきどきしちゃった。12年ぶりに会ったら、おにいちゃん、けっこうかっこよくなってるんだもん。
(どきどき)え〜、あたしが言うのもなんだけど、そんなにかっこいいかな〜!? 普通じゃない!?
ん〜、そうとも言うかも。
・・・・・・。
あ、そういえば他のひとって、どうしちゃったんですか? 今年になって辞めちゃったんですか?
っていうか・・・・・・えっと、もともと3人いたのよね。さっき手紙のことでちょっと言ってたけど、メルルっていう子と、みよりっていう子と、あとあたし。メルルはフランスの名門のお嬢様なんだけど、なんかいろいろ事情があってここに勉強しに来てて。で、いまはフランスに帰国中。
それで・・・・・・あの、もう一人の、みよりさんて、あたしと似てる・・・・・・んですか?
・・・・・・そうね。ね、瑞葉って、双子の姉妹っていたりしない?
え、いませんけど・・・・・・。
そっか・・・・・・。
ん〜、なんて言ったらいいのかなあ・・・・・・。よくわかんないんだけど、どうも天使かなにかだったらしいのよね。幽霊じゃないとは思うんだけど。
はい?
だから、よくわかんないんだってば。とにかく・・・・・・今は、いない。それでも、あのひと、まだ待ってるの。みよりを。
・・・・・・あたしに、似てるんですよね。
うん。
・・・・・・。
・・・・・・。
あ、そだ! ね、昨日から不思議だったんですけど、清羽さんも、日本以外の国のひとなんですか?
え、あたし?
だって、すっごいきれいなブルーアイだし・・・・・・なんとなく、髪も藍みがかってる感じだし。
あ、これ? あたし、おばあちゃんがアイルランド人で、クォーターなの。あたしは国籍も言葉も日本だけどね。おばあちゃんの息子にあたるお父さんも、それからあたしの弟も黒い目なんだけど、なんかあたしだけ隔世遺伝したらしくて。ただでさえ青い目って日系人には遺伝しづらいのに、すっごい珍しいって高校のとき生物の先生が言ってたなあ。
いいなあ。あたし、髪以外は普通・・・・・・。
そういえば瑞葉の髪も、なんか日本人っぽくない鳶色だよね。脱色でも染めたんでも出ないよね、こういう色。
あたし、普通よりちょっとだけ色素が薄いらしいんです。それで、髪も一本一本が細すぎてこういう色になるんだって。本当はもう少し太いほうが透明感があってきれいに見えるんですけど・・・・・・。
前はおにいちゃんが長い髪が好きだって言うからずっと伸ばしてたんですけど、なんかもう、切るのもったいなくて。それに、これくらい長い髪って、今けっこう貴重ですよね☆
そだね。それじゃそろそろ案内しよっか。荷物、ひとつ持つね。あ、あと、あたしのこと、「このみ」でいいわよ。高校出たばかりなら同い年なんだし。タメ口で。
ほんと? じゃあそうするね! よろしくね、このみちゃん☆
うん、こちらこそよろしく〜。
それじゃ、まず1階から。キッチンとか食堂とか絵の展示室とか・・・・・・あ、でももしかして、だいたい分かる?
うん、覚えてる。壁紙とかカーテンとかは昔と変わってるみたいですけど。
そっか、じゃ、とりあえずわかんなくなったらでいっかな。それじゃ2階。(とことこ)
(続いてとことこ)
えっと、これも知ってるかもしれないけど、2階はご主人様の寝室とか書斎とか、あたしたちの私室。あとお客さん用の空き部屋。なんかもともと使用人部屋って1階だったらしいんだけど、今はご主人様のアトリエになってるんだって。
あ、お風呂とかは? 下にある大きなお風呂?
んーん、時間がばらばらだったし、普通は自分の部屋で入るかな。お客さん用の部屋、今あたしたちでひとつずつ使ってて、バス・トイレ・エアコン完備だから。ちなみに、瑞葉の部屋もそうよ。
あ、じゃあ家具もみんなあるの?
うん、ただ、アンティークばっかりであんまり可愛いのはないけど。あ、でもテレビはみんなして下のティールームで観るのが多かったかな。
で、みよりとメルルの部屋もそのまま残ってるから。そこがメルルの部屋で、隣がみよりの部屋。まあ、ドアプレート見れば分かるけど。
はぁい。
それから――
(がちゃ)
きゃ!
(きょとん?)。
こっち側にはご主人様の部屋。こうやって、よくみゃあちゃんが出入りしてるから。みゃあって、この子の名前ね。
え、ど、どうやってドア開けてるの!?
さあ〜? ま、現実を受け止めましょ。
・・・・・・(じー)。
・・・・・・(じー)。
・・・・・・なにやってんの?
(・・・・・・とこ、とこ、とこ、とこ)
(ぱっ!)つかまえた〜!
みゃ!?
わぁ、ふあふあしてて気持ちい〜! (すりすり)
(じたばたじたばた)。
(なでなで)。
・・・・・・ふみゅ。
昨日は顔見ただけで逃げちゃうんだもん。この子って、人見知りするの?
どっちかっていうとやたら人懐っこいほうだと思うけど・・・・・・みよりが帰ってきたんだと思ったけど、匂いが違うからびっくりしたんじゃない?
そっかあ。あたし、瑞葉だよ。よろしくね、みゃあちゃん☆
みゅ? みゃあ〜。(ぺろぺろ)
やん、くすぐった〜い☆ それじゃまたね、みゃあちゃん。
ふみゃ。(とてとてとてとて・・・・・・)
それから、ここがあたしの部屋で、隣が瑞葉の部屋ね。掃除はしておいたし家具も一通り揃ってると思うけど・・・・・・なにか足りないものがあったら言ってね。はい、これ鍵。
はぁい。(がちゃ)
わぁ・・・・・・広〜い! お客さん用のお部屋って、初めて見た〜。
あ、窓側って、もしかして中庭?
(とことこ)あ!
どしたの?
あれって、みかんの木だよね?!
どれ?・・・・・・あ、あれ? ん〜、よくわかんないなぁ。去年は実をつけなかったし、なんかそういう種類の木なのかなぁって思ってたけど。
みかんの木だよ。天美館のシンボルツリー。おにいちゃんが生まれた年に植えたんだって。あんなに大きくなったんだ〜。
あ、そうなの? ご主人様、なにも言ってなかったけど・・・・・・。

・・・・・・それも、一緒に忘れちゃったのかな・・・・・・。
小さい時・・・・・・。
ん?
小さい時、あたし、身体が弱くって、外で遊べなくて。近所の男の子で一緒に遊んでくれたの、おにいちゃんだけだったの。おにいちゃんて、ほんとは運動神経良かったんだけど、戦争ごっことかは嫌いで、男の子の友達からはときどき馬鹿にされてたけど、でも、あたしと一緒に遊んでくれたのって、おにいちゃんだけ・・・・・・。
あたし、その時ってまだ幼稚園だったけど、本気でおにいちゃんが好きで、将来おにいちゃんのお嫁さんになるのって、あたししかないって思ってたりして。
・・・・・・。
でね、あの木に実がなったら、一緒に食べようねって。結局、あたしが発作で倒れて入院しちゃう年まで、一度も実はならなかったんだけど・・・・・・。6月だったかな、きれいな白い花が咲いてたの、すっごいはっきり覚えてるの。
・・・・・・。
・・・・・・なんて、どう!?
ど、どうって?
小さい時のおにいちゃん。可愛いでしょ? 参考になった?
(あせあせ)な、もう、なに言ってるかな〜!?
うふふっ☆ ね、みかんの周りの花壇は? きれい〜☆
あ、あれ、みよりが作ったハーブ園。いつの間にかあんなに広げちゃって、ハーブ以外の花も一緒に育ててたみたいだけど。あたしじゃよく手入れの仕方はわかんないんだけど、とりあえずお水は毎日あげてる。
みよりさんて・・・・・・
・・・・・・?
どんな、ひとだったの・・・・・・?
写真、見てみる?
・・・・・・うん。
ちょっと待ってて、アルバム持ってくるから。

・・・・・・これ。この子。
・・・・・・っ!!
似てるでしょ? 「天瀬」っていう苗字も一緒だし・・・・・・だから・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・切ないけど、みよりが今でもご主人様の本命。というより、みよりだけが、かな。あのひとって、すごく優しかったり、反対にすごく冷たかったりして。ううん、冷たくして、誰もそばに近寄らせてくれない。本当は寂しがりやのくせに、いま愛せなければ、愛される資格がないなんて思って。傷つける事に怖がりで。
そんなひとが、いちばん好きだった子。おっちょこちょいで、子供っぽくて、無意味に元気でそのくせ泣き虫で。純粋で、優しくて。そんな、子。みよりって。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・でも・・・・・・。
・・・・・・?
あたしのほうがちょっとだけ、おっぱいおっきい気がする〜!
・・・・・・(がくっ)。
そ、そう・・・・・・良かったわね・・・・・・。
あはっ☆ そっか、いい子なんだね、みよりちゃん。会ってみたいな〜。
そだね、いつかきっと帰ってくると思うよ。あ、どっちかって言うと、メルルの方が早いかな。フランスと日本の距離なんて、大した事ないもんね。
それまでに、あのひとを虜にしとかないとね☆
わあ、このみちゃん積極的〜!
えへへ、自信はないわけじゃないもん。あたしだって、メルルほどじゃないけど、それなりに可愛いと思うし。
あ、それじゃ、あたしはそろそろ下に降りてるから。ご主人様もそろそろ帰ってくるだろし。部屋の中とか適当に見てて。荷解き始めてもいいし。
はぁい。おにいちゃんが帰ってきたら呼んでね! メイドさん服、見せてあげたいから☆
はいはい。



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