■ビジネスクライアントの魅力
先日、通販で
DESKPRO 575というPCを購入した。
COMPAQのビジネスクライアント用PCである。
実は、このDESKPROというPC、会社でここ2〜3年使用しているので、個人的に馴染み深いマシンである。たいへん
地味なマシンなのだが、なかなかどうして、よくできている。
ドライバーなしで開けられるメンテナンス性の良い筐体は、厚い鋼板で構成され、まさに
質実剛健。
COMPAQオリジナルの
TriFlexチップセット、いち早く装備された
筐体内温度計、全モデルにオンボード搭載された
AMD製ネットワークコントローラ(でも10BASE-T/5)と、随所に
作りのよさが感じられる。マザーボード上に搭載されたチップが、ほとんど
COMPAQのカスタムチップというのが、このマシンの性格を物語っているといえよう。
筐体デザインもシンプルで好感が持てる(個人的にはDESKPRO 2000などの次世代以降の筐体デザインは好きになれない)。
そこで、貴重(?)なDESKPRO使用経験を生かして、
DESKPROシリーズ……それも
PCI DESKPROと呼ばれる、「575」「590」「5100」などの
初期型DESKPROを
選ぶコツ・使うコツについて、ここで書いてみようと思う(笑)。
あくまでも経験に基づいたものなので、ひょっとしたら誤った記述があるかもしれない。そのときには、ぜひ情報をお寄せいただきたいと思う。
■DESKPROの型番
DESKPROの
型番は、次のようなフォーマットをしている。
|
DESKPRO 590/3 720QV
DESKPRO 5100/4 1080MX/CDS |
最初の数値は、最初の桁が
CPU種別、残りの桁が
CPUクロック周波数を示している。「4100」ならi486DX4 100MHz、「590」ならPentium 90MHzである。
スラッシュの次の数値は、
筐体の形状である。これについては後述する。
次の数値はMB単位の
HD容量である。ちなみに、DESKPROシリーズの内蔵HDDは、すべてE-IDEだ。
QVや
MXは、搭載している
ビデオチップの種類を示している。これについても後述する。
最後の
CDSだが、これが付いているモデルはCD-ROM内蔵である(SONY製4倍速のものが多いようだが、Creative製もあるようだ)。
ただし、中古などでは、ただの「5100」「590」などしか示されておらず、細かい点までわからないことも多い。この場合は、後述するように筐体などから判断して欲しい。
モデルによってはサウンドカード内蔵のものもあるらしいが、このあたりになると、正直にいってよく分からない。
なお、
DESKPRO XLというシリーズもあるが、こちらは
EISAマシンで、まったく別のPCといえる。AHA-2940互換SCSIチップオンボード、スピーカ・マイク内蔵キーボードなど、かなりマニアックなPCなので、興味のある方は調べてみて欲しい。ここでは省略する。
■DESKPROを買う
まず、CPUだが、
Pentiumのものを選べばよいだろう。クロックは、75〜133までのバリエーションがある(らしい)。
筐体という点では、
DESKPRO/3よりも、
DESKPRO/4や
DESKPRO/5といった、ベイとスロットの多いモデルがいいだろう。中古などで型番が完全ではなく、モデルの違いがわからない場合は、外見を見るしかない。3と4がデスクトップ型、5はタワー型である。
3は、外部5インチベイが2つのロープロファイルモデルである。2つのベイのうちの1つはFDドライブとスペーサーで占められている。つまり、FDドライブを外さない限り5インチベイの機器は1つしか搭載できない(CD-ROM内蔵モデルは、そのままでは増設不可となる)。内部ベイは3.5インチが1つである。拡張スロットも、PCI/ISA*1、ISA*2と少なめだ。
4は、外部ベイは5インチベイが2つと3.5インチベイが1つで、3.5インチのほうにはFDドライブが搭載されている。内部ベイは3.5インチが1つである。拡張スロットは、PCI/ISA*2、ISA*2である。
5は、外部5インチベイが3つある。3.5インチFDは専用ベイに納められているため、3つとも使うことができる。手元の資料によると、内部ベイは3.5インチ*2。拡張スロットはPCI*1、PCI/ISA*1、ISA*3とのことである(手元に実機がないのだ)。
なお、各筐体とも全拡張スロットで
フルサイズカードが使用可能である(そのため、筐体内は実に広々としている。金具を自作すれば、3.5インチHDの2台くらいは増設できるだろう)。
ものによっては、ESSチップ搭載のサウンドカードを内蔵したモデルもある。このカードは専用スロットに収まるので、拡張スロットを消費せず、お得である。
DESKPROには、搭載する
ビデオチップの違いによって、大きく
MXと
QVの二種類のモデルがある。MXは、
QVision 2000+という
MatroxのOEM(UltimaのOEMらしい)のPCIビデオカード(RAM 2MB)が搭載されている。
QVは、
QVision 1280+というAT&T製のチップ(RAM 1MB)が、オンボードで搭載されている。
筆者の経験から、
QVモデルにビデオカードを増設すると、全体的にマシンが不安定になる傾向があるようだ。ビデオカードを変更する予定があるなら、
MXモデルを強くお勧めする。反対に、サーバ用途などビデオにこだわらない場合には、スロットが多く使えるQVモデルがよいだろう。
外見からは、拡張スロットにビデオカードが差してあるものがMXモデル、マザーボード上の10BASE-Tコネクタの横にVGAコネクタがあるものがQVモデルである。
まれには、また別のビデオチップ(CL-GD5434など)を搭載したものもあるらしいが、詳細は不明である。
■BIOSセットアップ
さて、中古ショップで吟味してDESKPROを買ったとしよう。
DESKPROの
BIOSには、他のPCにはない
大きな特徴がある。それは、PCの基本設定を行なう、いわゆる
BIOS Setupの画面(AWARD BIOSなら起動時にDelキーを押すと出てくるあれだ)が
存在しないのである。
それでは、どうやって設定を行なうのかというと……それらの設定を行なうプログラムは、
HD上に設けられた特殊なパーティション(診断パーティションというらしい)に納められているのである。
DESKPROの起動時によく画面を見ていると、メモリチェック後、ビープ音が鳴った後に
カーソルが右上に移動する瞬間がある。その時に、タイミングよく
F10キーを押すのだ。すると、PCのSETUPプログラムが立ち上がる。
しかし、中古品などを購入した場合、状態によってはHDが
初期化されていて、診断パーティションが消えうせている場合がある。また、HDを交換した場合も、当然ながら診断パーティションは存在しない。
こういった場合には、
診断パーティションを作成する必要がある。
COMPAQのサイトから、PCI DESKTOP用の
F10 SETUPなるプログラムと
診断プログラムをダウンロードし、作成したディスクからマシンを起動することで、診断パーティションを作成することが可能である。
ちなみに、HDに空きがない場合には、作成したF10 SETUPディスクを使うことで、診断パーティションなしでPCの設定することもできる。
なお、SETUPユーティリティ自体の使い方は、他のPCと大きく異ならないので省略する。
■ハードウェアの拡張
DESKPROの外部ベイに機器を増設する場合、
専用のレールが必要である。これらは、秋葉原では
T-ZONEミナミや
ツクモDOS/V館などで扱われているようだ。特に前者では、ジャンク扱いで安く売られていることがあるので、見かけたらゲットしよう。
「専用のレールが必要とは、さすがメーカー製だけあって
独善的な……」と思ったが、
某社のPCでは、専用レールが必要にもかかわらず、レール単品では販売されていないというケースがあった。それに比べればまだましである。
また、いざというときはガムテープ固定、筐体への穴空けなどの
技を使うしかないだろう。
メモリスロットは、
72pin SIMMスロットが6本である。筆者が使用していたDESKPROはFast Pageだったが、ロットによってはEDOが標準装備のものもある。全てのDESKPROでEDOが動くかどうかは、残念ながら
不明である。
■ソフトウェアのセットアップ
Windows95、
Windows98、
WindowsNT 4.0とも、特に問題なく動作するはずである。ドライバ類は、
COMPAQのサイトにアップロードされている。
■クロックアップ
DESKPROの
クロックアップは、拍子抜けするほど
簡単である。
筐体を開けると、内部にベースクロックとCPU倍率を設定するためのディップスイッチの位置と、設定方法が書かれている。それに従ってディップスイッチを変更するだけである。
筆者の経験では、
575・
590などの
ベースクロックが50MHzと60MHzのモデルのマザーボードは共通で、これらはベースクロックを
66MHzに設定することはできない。575・590は、最大までクロックアップしても120MHz止まりである。
倍率設定は各モデルとも
1.5倍と
2倍が可能である。
そのため、590より575を、5120より5100を選んだほうが賢いかもしれない。
なお、CPUファンは装備されておらず、ヒートシンクでの放熱のため、クロックアップ時にはファンを取りつけたほうがよさそうである。
■最後に
DESKPROシリーズは、ちょうどWindows95が発売された前後に販売されていたPCである。
あれから3年、企業などでもPCの交代が進み、中古市場にも比較的安価・潤沢に出回っているようである。
第一線で使うのはさすがに無理だが、用途によってはまだまだ使えるだろう。自作PCに混じって、メーカー製PCが1台くらいあってもよいのではないだろうか。