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「こんふりくとの見たロンドン」 第1回・電脳街編


■トテナムコートロード
 今回の出張では、日本から持参したガイドブック「地球の歩き方」を参考にした。その中で、「ロンドンの秋葉原」として紹介されているのが、トテナムコートロードである。
 この通りは、ロンドン市街中心部の少し北から、さらに北に向かって伸びる道路である。トラファルガー広場とユーストン駅の中間あたりに位置する、全長1km弱の通りだ。少し東には、かの大英博物館がある。もしロンドンの地図をお持ちの方は、参照してみて欲しい。

■初めての訪問
 初めてトテナムコートロードを訪れたのは、9月1日であった。
 私が泊っていたホテルは Oxford Street 沿いにあった。この日、私は午前10時頃にホテルを出て、近くのバス停から8番のバスに乗った。ロンドンといえば、大英博物館。初めての個人行動の日、とりあえず大英博物館を目指したのだ。
 バスに乗り慣れていないので、だいぶ行きすぎてから降りる。道を間違えそうになるが、なんとか現在位置を把握して10時半には目的地に着いた。
 しかし、この日は日曜日。日曜日、大英博物館は午後2時半の開館なのである。よくガイドブックを読むときちんと書いてあるのだが、不注意な私はまったく気付かなかったのだ。大英博物館前には、私同様に早く来すぎたのか、大勢の観光客がうろうろしていた。中にはツアー客も……。
 待っていてもしかたないので、ガイドブックでチェックしてあった、すぐ近くのトテナムコートロードへ向かうことにする。大英博物館からは約200mほどである。
 しかし、この日は日曜日……。ロンドンでは日曜日には多くの店が休みとなる。ここも例外ではなく、すべての店がシャッターを下ろしていた。通りを歩く人もまばらで、閑散としている。日曜日の秋葉原の喧騒を思いながら、トロカデロへ向かったのであった……。
(写真・誰もいない大英博物館前)

■再び訪問
 翌翌週、今度は土曜日にトテナムコートロードへ赴いた。ホテルからの通信に失敗したため、音響カプラを入手して無難に通信しようと思ったのである。
 別のホテルに移ったため、今度は地下鉄を使った。Central LineのTottenham Court Rd.駅で降りて外に出ると、交差点に出た。日曜日と違って、おそろしいほどの人ごみである。まさに、人ひとヒト。さらに、出口が悪かったのか、どちらへ行けば電気街なのかわからない……。
 地図を広げて確認していると、初老の男性が話しかけてきた。「大英博物館へ行きたいのか?」と言っている……らしい。そこで、トテナムコートロードへ行って、コンピュータのアクセサリが買いたいというと、詳しく教えてくれた。イギリスの人はなかなか親切である。
 指差してくれた方角へ進むと、見覚えのある風景……おお、今度はちゃんと店も開いているではないか。秋葉原同様、道の両側に並ぶのは電気製品を扱う店ばかりである。ついでにいうと、なぜかXXXなビデオを扱う店もいっしょに並んでいる。
 それぞれの店の看板にはその店の名前と共に、メーカーのロゴが書かれていた。SONY、Panasonic、AIWA、NECなどなど……ほとんどがおなじみのメーカーである。また、各店にはショーウィンドウが設けてあり、扱っている商品とその値段がディスプレイしてある。なかなか便利だ。
 PCを扱っている店を確認しつつ、歩いてみた。

■秋葉原と似ているけど、どこか違う
 PC専門店は、秋葉原のそれと似た雰囲気である。店頭デモのPC、ケーブルのつるしてあるコーナー、陳列されているゲーム、などなど……。違うところといえば、モデムや各種カードなど小さいわりに値の張る品物が、しっかりとガラスケースに納められているか、もしくは店員のいるカウンターのうしろ(要するに客が直接さわれないところ)に置かれていることだろうか(LaOXザ・コンピュータ館に似ている)。
 自作派向けのパーツを置いている店もあったが、少数派という印象を受けた。しかし、秋葉原でも自作派向けの店の絶対数は少ないので、比率からいくと似たようなものであろう。パーツ専門という店はなく、メーカー製PCを扱う店でいっしょにパーツも扱っていた。
 また、PC専門店以外にも、PC+携帯電話とか、PC+AV機器などの複合型の店舗も多かった。
 店の規模は、全体的に小さい。ほとんどの店が1フロアで、面積もそれほど広くない(10〜20坪くらい?)。秋葉原のように雑居ビルに何軒もの店が入っているというような形も、まったく見られなかった。石丸電機やLaOX、サトームセンのような巨大複合家電店は、まったくといっていいほど、ない
 もっとも、一介の観光客がちょっと訪れただけである。ひょっとすると、現地人しか知らないような店が、秋葉原同様、あるのかもしれない。

■製品
 見掛ける製品は、ほとんど日本と同じである。売れ筋PCのスペックも、日本とほとんど同じだ。
 ただし、ディスプレイは14インチが主流だった。Pentium 166MHz マシンでも平気で14インチのディスプレイが付属していた。ビデオカードのVRAMも、まだ1MBが標準のようだ。どうやらイギリス人は表示系にはあまりこだわらないらしい。
 日本ではみかけないものというと、PC WAVE誌でおなじみのハンドヘルドコンピュータ・PSIONがあった。これはどこのPCショップでもまず扱っており、周辺機器なども充実しているという印象を受けた。
 また、サブノートパソコンは、ほとんど見掛けなかった。
 日本メーカーは、ロンドンでも強かった。デスクトップPC本体こそ日本製はほとんどないが(三菱のアプリコットはそこそこ見掛けた)、周辺機器は強い。特にプリンタはエプソンを始めとした日本製がほとんど。ノートPCも、東芝、NEC、そしてIBMが三大メーカーのようだ。

■値段
 肝心の値段は、どの製品も秋葉原より若干高めである。食品や衣料品の値段が日本よりかなり安いことを考えると、現地の人にとってPCはかなり高額の品物ではないかと思う。そのためだろうか、PCのレンタルサービス(月間いくら、でPCセットを貸しているらしい)の店を電気街以外でもみかけた。

■せ、狭い
 さて、しばらく歩くと、電器店がなくなってしまった。どうやら、電気街としての規模はかなり小さいようだ。秋葉原の十分の一程度ではないだろうか。トテナムコートロードのうち、電器店の並んでいる部分はほんの数百メートルほどであった。

■音響カプラの探索
 さて、トテナムコートロードの雰囲気が大体つかめたところで、音響カプラを探すことにした。あっちの店、こっちの店と歩くが……どこにも置いてない。
 商品が充実していそうな店で、店員に聞くことにした。
 「カプラはありますか」と怪しげな英語でたずねると、店員が示したのはモジュラージャックをイギリス式からRJ11(アメリカ・日本式)に変換するアダプタ。「そうじゃなくて、電話の受話器につけるやつだ」というと、電話の会話を録音するプラグを出してくれた。違うって。身振り手振りで形を説明すると、「これか?」と指差してくれる。見ると、ただのヘッドホン。う〜ん、形はちょっと似てるけどね……。
 こうして怪しげな会話を続けること数分、やっと「受話器を使ってモデムの代わりに通信できるやつ」ということで意思疎通に成功。しかし……その店にはなかった……。どっと疲れた私は、入手をあきらめてトロカデロへ向かった(またかい)。

■マーケットに行く
 翌週の土曜日、三度トテナムコートロードを訪れる。ホテルからの通信が曲がりなりにも成功したので、ケーブルを付け替えなくても通信ができるように、RJ11の二股アダプターを買おうと思ったのである。結論からいうと、結局アダプターは買えなかった(もっとも、この直後に帰国が決まったのでちょうど良かったのだが)。
 さて、プラグ購入をあきらめて帰ろうとしたとき、道端に「マーケットをやってます」という看板を見つけた。このまま帰るのもつまらないので、行ってみることにした。
 看板の指示が曖昧なので何度も迷いそうになるが、なんとか会場を発見。トテナムコートロードから大英博物館へ向かう道の途中である。
 マーケットは、建物の地下室でやっているらしい。道路脇の階段を降りて廊下を歩いていくと、前方から喧騒が聞こえてきた。廊下の曲がり角に、レジスターがあり、お姉さんが座っている。「お金を払う必要があるのか?」と聞くと、「市民でなければ払ってください」ということなので、入場料£1.20を払って中に入った。

■マーケット
 中に入ると、おそろしい喧騒である。満員電車並み……とまではいかないが、大売り出しのスーパー並みの混雑。鞄をしっかり抱えて突入した。
 会場は思ったほど広くなかったが(バスケットコートくらい?)、テーブルが一列にならべられ、間に通路ができていた。雰囲気は、まるでバザーかコミケのようである。そのテーブルの上には、商品が所狭しとならべられていた。見ると……おお、まさに自作派向けの品ばかり。CPU、マザーボード、メモリ、ビデオカード、HDなどなど、なんでも揃っていた。はっきりいって、トテナムコートロードの店より、よほど品揃えが良い。ソフトも数多く売られていた。
 目を輝かせて探索するが……残念なことに、やはり値段は秋葉原より高めであった。ソフトも、思ったほど安くない。せいぜい日本と同程度だった。安いものといえば、キーボードくらいだろうか。£5からあった。また、珍しい品物もほとんどなかった。
 しかし、ソフトに関しては、ゲームなどは日本でも見掛けるものばかりだが、その他のユーティリティや実用物・教育物が充実していた。じっくり探せば貴重なものがあるかもしれない。
 そんな中で、普通のマウスパッドの優に2倍はあろうかという「ジャイアントマウスパッド」なるものが売られていた。A3サイズくらいだろうか。実に怪しい品物である。これにはかなり惹かれたが、ちと嵩張るのであきらめた。
 私は結局、何も買わなかったが、自作派ATユーザーがロンドンに行くときには、かならず訪問すべきだろう。

■ロンドンPC環境
 全体的に見ると、ロンドンのPC環境はそれなりに整っているといえるのではないだろうか。たまたま音響カプラと二股アダプターは見つからなかったが、その他の製品はまずまず日本同様のものが手に入るだろう。長期滞在でも安心、といえる。
 なお、PCのゲーム環境は日本よりはるかに恵まれている。これについては、次回以降で触れたいと思う。


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