K2 Expedition 1994



2 行動概要
(1)成田出発〜ベースキャンプまで

◆6/20(月) 成田→イスラマバード
  雨の成田を12:23 に出発。中村トオルの撮影隊も同乗。早速日本酒で乾杯。なにを乾杯する
 かは…もう何があっても,70日間戻らないということか。遠征の始まりである。
  北京で給油などを済ませ,タクラマカン砂漠の上空からカラコルム山脈の上空を通過しイス
 ラマバードへ。K2などの眺めは最高。先発の北村氏,戸高氏が迎えに来て今宵の宿:シルク
 ロードへ。
◆6/21(火)イスラマバード滞在
  朝からミーティング。今日はいろいろな買い物をする予定だが,アシュラのお祭りで街中は
 危険らしい。腸チフスが流行っているようで小西隊は二人が検査中。薬を買って飲む。近くの
 公園までランニング。初めて街中を歩く。
◆6/22(水) イスラマバード→
  午前中は,トレッキング隊員のビザが間違っていたので外人登録で手間取る。午後からブリ
 ーフィング。午後6時,スカルドへ向けて陸路隊の出発。24時間地獄のバスの旅。戸高・成
 田・加藤・大神田の4人が乗り込む。ノンストップで銀ギラギンのバスが,パキスタン音楽を
 がなり立て,派手なクラクションを鳴らし,スカルドめがけてまっしぐら。
◆6/23(木) →スカルド
  午後6時スカルドのK2モーテルに到着。内臓がぐちゃぐちゃ。埃まみれだが,シャワーが
 やっと浴びられる喜び。避暑地だけあって涼しい。空路隊はLOと隊長,八尾さんの三人のみ
 到着。他は空港から宿に戻ったらしい。    
◆6/24(金) スカルド滞在        
  サーダーとコックを決め,コックと共に買い出し。他は荷物を25sに再パッキング。午後
 1:50後発の陸路隊がハイエースで到着。さすがに速い。これで全員集合。
◆6/25(土) スカルド→トンガール
  午前5:45,七台のジープに分乗しアスコーレ目ざして出発。度々の渡渉,道の崩壊,車の故
 障を乗り越えて,午後5:15アスコーレの手前の村:トンガールに到着。荷物の整理やポーター
 の雨具を用意する。テント泊。        
◆6/26(日) トンガール→ジョラ    
  午前3:30起床。5時からポーターに荷物を配り,キャラバンの始まり。アスコーレでサーダ
 ーのハッサンの家に寄る。その後,先頭グループに追い付きジョラの吊り橋を一人一人渡り,
 午後1:45ジョラのテント場到着。GUの富山隊の隣にテントを張り,ポーターチェック。濁流
 の水を飲む。
◆6/27(月) ジョラ→パイユ
  午前3:30起床。5時出発。ブラルド川の右岸をひたすら歩く。樹木の茂っている斜面が,こ
 のあたり唯一の泊まり場パイユ。9:45到着。
◆6/28(火) パイユ滞在
  ポーターのホリデーで休養日。7500ルピーで仕入れた牛を殺し,みんなで分けて食す。松井
 氏は,裏山からパラパント飛行。洗濯に出掛ける。加藤も裏山に登り(3800m) 高度順化。夕方
  富山隊とミーティング。宴会。茶会を催す。ポーター達は,コルバ(携帯用パン)を焼く。
◆6/29(水)パイユ→ウルドカス
  午前3:30起床。5:11スタート。ここから氷河地帯に入り込みホブツェを過ぎて,右斜面の緑
 の草地,ウルドカスに10:55 到着。パイユ,トランゴ,カテドラル等の眺めが最高。
◆6/30(木) ウルドカス→ゴレ
  4時起床,5時出発。斜面を下り再び氷河歩き。バルトロ山群の眺めがビッグ。ブロードピ
 ークやガッシャーブルムが迫力。マッシヤーブルムを左にみながら氷河上の泊まり場:ゴレに
 8:50到着。ポーターに石油のストーブを配る。ポーターは石を積んで青いタープリンを掛け,
 アッという間に素晴らしいシェルターを作ってしまう。夕焼けのGWは,さすがに輝ける山 
 (ガッシャーブルム)である。
◆7/ 1(金) ゴレ→ブロードピークBC
  午前4:45出発。今日は途中からポーターチェックを任され,LOのエバースと抜きつ抜かれ 
 つのデットヒートを繰り返す。左手のムズターグタワーを眺めながら進むとコンコルディアに 
 6:55到着。初めてK2に対峙する。日記には「…キャラバン6日目。ブロードピークBCでポ
 ーターチェックをする事になり,LOのエバースと追い抜き合戦…。ブロードピークが近付き
 ミートルピークが確認できると…左前方に白い山肌がチラッと見えたかと思うと…まさしくそ
 れはK2の南東稜であった。コンコルディアに着くと,さらにはっきり見えた。そこで先頭集
 団のポーターが一休み。自分は荷物を置いて,少し先まで走っていって…K2をカメラにとら
 える。でっかい。でっかい。でも,思ったほど威圧的ではない。「こんにちは」という感じで
 そこに座っていた……」と記した。
  10時,ブロードピークBC到着。目の前に,黒と白のコントラストのはっきりした三角錐の
 ピラミッドが立ちはだかる。ブロードピークの登攀の様子も確認できる。
◆7/ 2(土) BPBC→K2BC
  午前3:30起床,5:05出発。BPBCから,氷河の左側を進み,最後に氷河の割れ目を上手に
 辿ってK2BCに到着。既に多数の外国隊のテントが並んでいる。6:20到着。荷物のチェック
 をし,その後メステントなどを張ってから,ポーターに賃金の支払い。昼を食べてから,隊員
 用のテントや食料テント,荷物テント,トイレテントを張ってBCの出来上がり。
◆7/ 3(日) K2BC滞在(休日)
  今日は休養日で,高所への行動は禁止。7時頃チャイとチャパティーの朝食を食べ,ミーテ
 ィング。今日は荷物のチェック。自分は生活係長とか言われてトイレの移動を担当する。終了
 後,装備の整理を手伝い,日記を書く。今日は隊日誌の当番なのでメモっておかないと大変。
 ラジオを聞いて『愛することは生きること,生きることは愛すること』という歌詞からの命題
 で哲学論議になってしまったので,それを記録しておく。
  夕食はBC開きを兼ね,小西隊の4人を招待した。ここでも『なぜ山に登るか』という内容 
 でミーティングを行った。小西氏のジャック・マイヨールを取り上げた話は良かった。

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