サスペンション講座

▼オーバーステアとアンダーステア
車の特性には『オーバーステア』と『アンダーステア』があります。
『オーバーステア』とは
ハンドル操作よに比べてより大きく車体が曲がるもので、『アンダーステア』とはハンドル操作に比べてより小さく車体が曲がるものです。

おおげさに表現すると、『オーバーステア』は曲がり過ぎる、『アンダーステア』は曲がりにくいとなりますが、実際には弱い『アンダーステア』が一番良いとされ市販車はこの状態に設定されています。

▼サスペンションバランスについて
速く走るための理想的なサスペンションバランスとは、コーナーに侵入した時に素早く旋回し始め、コーナー中は思い描いたラインを素直にトレースでき、コーナー脱出時に目一杯加速できる、というものです。
この「素早く・素直に・目一杯」というのがポイントです。

逆に悪いサスペンションバランスとは、コーナーに侵入する時に曲がりにくく、コーナー中は不安定で車体が暴れやすく、コーナー脱出時にタイヤが空転してしまう、というものです。

同じマシンでもサスペンションセッティングしだいでこのように性格が大きく変わります。だからサスペンションセッティングはとても大切な作業なのです。

しかしサスペンションセッティングでは「バネ」や「ダンパー」そして「スタビライザー」と、初心者には難しいパーツを調整しなければなりません。
そもそもどこからいじったら良いかも解らないのがほとんどでしょう。
それをこれから説明します。

▼サスペンション機構について
サスペンションの基本は「バネ」です。
路面から車体・車体から路面に伝わるエネルギーはまずバネに送られます。
バネが硬ければ操縦安定性は増しますが乗り心地は悪くなります。
逆に柔らかいと操縦安定性は悪くなりますが乗り心地が良くなります。

このゲームでは乗り心地はあまり関係ありませんが、デコボコのある路面ではバネを硬め過ぎると挙動が乱れます。
適度な柔らかさがあればデコボコを難なく乗り越えるのでパワーのロスも少なくなります。

では、ダンパーは何のためにあるのか?
ダンパーはバネが伸び縮みするスピードを調節します。
バネが伸びようとすればダンパーは縮ませようと働き、縮もうすればダンパーは伸ばそうと働く。これによってバネの動きを安定させます。

ダンパーも基本的にはバネと同様の効果があります。
主役は「バネ」で「ダンパー」は補佐役です。
この2つで1つの仕事をします。
だから、セッティングする時は両者のバランスを考えないとなりません。
バネだけ硬くダンパーは柔らかい等というのはタブーです。
基本的にバネで調整し、ダンパーは微調整と考えて下さい。

車には車輪が4つあるので、バネ・ダンパーは車輪と同じだけ、つまり4つあります。ですから4輪それぞれに硬さが調整できます。
ただしグランツーリスモでは「前輪」と「後輪」のみ調整が可能です。
ではこのように前後に調整する事で何が変わるのでしょうか?

▼前後バランスについて
ブレーキングの時を考えてみましょう。
ブレーキをかけると車体は前のめりになります。つまりこの時車体の重量は前輪側にかかります。ですから素早く荷重移動をしたいのであれば主に前輪のサスペンションを硬くすればいいのです。そして、この時に仕事をしているのは主にバネです。

荷重移動によって車体の前後重量バランスは崩れました。
この時にハンドル操作をすれば車体はスッと曲がり始めます。
後輪の荷重が抜ける事で旋回性が高まるからです。ダンパーはここからが出番です。

ブレーキングを止めるとバネは元に戻ろうとします。しかし、この時にバネが一気に元に戻ってしまうと荷重バランスは元に戻り、車体は曲がらない状態にされてしまいます。ですからダンパーでそれを緩和するのです。ダンパーはバネが元に戻る速度を制御する役目をします。
ダンパーが硬ければバネが元に戻る速度は緩やかになり、前輪荷重を維持し、ダンパーが柔らかければバネが元に戻る速度が速くなり、前輪から荷重を抜きやすくなります。

さて、これで車は曲がりはじめした。
ここから先は駆動方式によってサスペンションの役割を変えなければなりません。
FFは前輪駆動ですから、後輪の荷重を抜いたままでも路面にパワーを伝えられますが、FRやMRはそういう訳にはいきません。
コーナリング中に狙ったラインをトレースするためには、パワーを路面に伝えなければなりませんので、後輪駆動車の場合は前輪から後輪へと荷重を戻していく必要があります。

FR車がオーバーステア傾向が強いのはこのためです。
プレーキングで前荷重になったままハンドルを切っても、車体を押し出す力が路面に伝わりにくいので、後輪が旋回Gに負けて外側に流されます。
ドリフトはこれを意図的に発生させて、コントロールするというものですが、速く走る為にはドリフトより、まずグリップなのでこのオーバーステアを解消しコントロール性を上げなければなりません。

▼荷重移動
プレーキングで前荷重になった状態でアクセルを踏めば、パワーは後輪に伝えられて路面を蹴り出します。
この時に後輪側に荷重が移動していきます。
ちなみに、スタートダッシュの時を思い浮かべて下さい。
スタートの時は車体の後ろが沈み込んで加速します。
同じ事がコーナリング中に起こるのです。

パワーを効率良く路面に伝えるには、駆動輪に荷重がかかっている方が良いです。
そのためにはサスペンションは柔らかくしなければなりません。
駆動輪のサスペンションが柔らかい方が車体は沈みこみやすくなり、荷重移動が速やかに行われます。
逆に硬いと路面に対する反発力が強いので荷重移動はされず、その結果パワーが路面に伝わりにくくなります。

つまり、コーナリング初期に後輪に荷重移動をしたい場合は後輪のサスペンションを柔らかくした方がよいのです。
こうする事で後輪にも荷重がかかっていきます。

プレーキングで作った前荷重と、駆動力を伝える時に作られる後荷重がバランス良くまとまった状態こそ理想的な荷重配分と言えます。
この状態下ではマシンは微妙なハンドル・アクセルの操作に素直なので狙ったラインがトレースしやすくなります。

▼ダンパーの役目
バネは抑えつけられると、逆に押し返す特性があります。
この特性をコントロールするのがダンパーです。
ダンパーが硬ければ、このバネの収縮が速やかに収束します。

後輪のバネがパワーを伝える事で沈み込む時に、ダンパーが柔らかければそのスピードを穏やかにし、急激な荷重移動を抑制できます。
ただしバネよりもダンパーの方が硬いと、バネの動作より先にダンパーが働いてしまうので意味がありません。

ダンパーが硬すぎると、急激に駆動輪に荷重移動が起こりタイヤのグリップは失われ空転してしまいます。
コーナリング中の車体コントロールにはシビアさが要求されます。
この時にタイヤが空転するのはバランスを崩す事に繋がり好ましくありません。

▼コーナーからの脱出時
コーナーから脱出する時までにハンドル操作は終了させなければなりません。
コーナーから脱出する時には力強い加速を得るために後輪に思い切りパワーを伝えなければならないので、前輪から荷重がすべて抜けてしまいます。
この時にハンドル操作をしても思うように動くはずはありません。
だから、狙ったラインをトレースし終わる頃にはハンドル操作も終わっていなければならないのです。
コーナー立ち上がりの時にハンドル操作をしても車体がいう事をきかないのはその為です。
そもそも、この時点でハンドル操作が必要というのはライン取りが間違っていたか、オーバースピードだったかのどちらかです。

▼FF車では
次にFFの場合ですが、FF車もスタート時には車体後部が沈み込みます。
この時に前輪から荷重が抜けやすくなってしまいます。
前輪から荷重が抜けてしまうとハンドル操作も鈍くなりますし、パワーも効率よく伝えられません。
ですから、そうならないように後輪のサスペンションを硬く、前輪のサスペンションを柔らかくしなければなりません。

後輪のサスペンションを硬くする事で車体後部の沈み込みを抑えて、前輪のサスペンションを柔らかくする事でパワーを伝えやすくするのです。
こうする事で最適な加速力を得られます。

コーナリング初期ではプレーキングによって荷重移動が完了しているので、後輪に加重が移動すると困ります。
だから後輪のサスペンションは硬くします。

▼他の駆動形式
ではMRはどうでしょうか。
基本的にはFRと同じなのですが、後輪への駆動力が高いので後輪荷重移動のためのセッティングとしてはFRのそれよりも硬めで平気です。

4WDの場合は基本的にはFFと同じですが、前輪の為に駆動力を稼ぐセッティングである必要もないのでFFのそれよりも硬めで平気です。

▼スタビライザーの役目
ここまでは、主に荷重移動に関するバネやダンパーのセッティング方針について説明しましたが、コーナリング特性を決定する要素として他に旋回Gのコントロールがあります。

これを制御するのがスタビライザーの役目です。
スタビラスザーは左右輪の間に取り付けられたバネだと考えて下さい。
スタビライザーが柔らかいと左右輪はそれぞれのバネ・ダンパーの特性に応じた反応をしますが、スタビライザーを強化する事で左右輪の特性を均一化できます。

バネやダンパーの説明の時は、前後方向でのサスペンションの働きでしたが、スタビライザーはそれに対して左右方向でのサスペンションの働きです。

車はコーナリング中はコーナーに対して車体外側が沈み込みます。
これをロールというのですが、スタビライザーには、このロール特性を変える役割があります。

「ロールが大きい」というのは、それだけ車体外側の沈み込みが大きいという事です。
逆に「ロールが少ない」というのは、車体左右が安定しているという事です。

▼左右方向の荷重変化
ロールをする時、車体に左右方向の荷重移動が起こります。
車は旋回中は内側のタイヤよりも外側のタイヤの方が頑張っています。
タイヤは4つあるのですから4つ全部に頑張ってもらった方が効率は良いです。
そこでスタビライザーによって外側に向かう荷重を内側にも分配するのです。

バネは引っ張られれば引き戻そうとします。
車体の外側が沈み込むときにスタビライザーが働き、それを内側に戻そうとします。その力が内側にもかかり、結果的にロールを抑えるのです。
ロールが少ない方が旋回Gに対して有効です。こうする事でコーナリング速度が上げられます。

▼スタビライザーの調整
スタビライザーは前後独立して調整できます。
硬いバネなら、それ自体がロールを抑える役割も兼ねる事ができますが、柔らかいとそうはいきません。
そこでスタビライザーを使って、柔らかいがロールの少ないサスペンションに仕上げる事ができます。

例えばFRの場合は、後輪のサスペンションを柔らかくする事で駆動力を得られるという事を説明しましたが、コーナリング時に左右方向に荷重が分配されてしまうと、せっかく手に入れた駆動力が不均等になってしまい、効率が悪いです。
バネが柔らかいのですからロールが生じるのは避けられません。そこでスタビライザーでこれを均等化するのです。
後輪のスタビライザーを強化する事で、より駆動力が得られるようになり、旋回性も高まります。

FF車の場合も同様に駆動力を得る為に前側を柔らかいサスペンションにしているので、ロールを抑えて駆動力とハンドル特性を確保する必要があります。
この時は前輪のスタビライザーを強化します。

▼まとめ
簡単にまとめますと、バネとダンパーは2つで1つの機能、それは主に車体前後方向の荷重に関わるものです。
そしてスタビライザーはバネとダンパーで解決できない時の、車体左右方向の荷重に関わるものです。

悪いセッティング例としては、例えばFR車で後輪のバネとダンパーを硬くしてスタビライザーを柔らかくする。
この場合バネとダンパーが硬いのですから荷重移動での駆動力が得られにくく、更にスタビライザーが柔らかいのですからロールが発生し、それでなくとも少ない駆動力が更に少なくなってしまい、コーナリング速度が落ちます。
もしドリフト仕様にするのであればスタビライザーも強化しなければなりませんし、乗りやすいマシンにするならばバネやダンパーも柔らかくしなければなりません。
結果的にこのようなセッティングは何の得もない悪い例です。

セッティングの流れとしては、まずバネを調整して前後の荷重移動の様子を伺い、その後ダンパーで微調整。
それから駆動輪側のロール特性をスタビライザーで調整、という感じです。

なお、4WDの場合は前後のスタビライザーを強化しても問題はありません。

 


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