デバイス講座

LSDについて
　LSDとはリミテッド・スリップ・デフの略です。
デフ（デファレンシャルギア）はミッションから伝わったパワーを車輪に伝えるものです。

　コーナーを曲がる時、内側の車輪と外側の車輪では回転数が異なります。これが内輪差というものです。
　デフはこの内輪差を吸収するためにあります。
一般車のデフの場合は内側の車輪が空転した場合、外側の車輪へ駆動力は伝わらなくなります。つまり外側の車輪は仕事をしなくなるのです。
　これは回転半径が小さいコーナーで曲がりやすくする為の仕様なのですが、スポーツ走行の場合でこの症状が出るのは好ましくありません。
　これではコーナリング中に内側のタイヤがグリップを失うとパワーがそれ以上駆動輪に伝わらなくなり、前に進まなくなります。
　そこでこのような場合に駆動力をロックする装置が必要になります。それがLSDです。
（ロックするというののは左右の車輪を一本の棒で繋げるようなものです）

　LSDにはある程度のトルクが掛かればロックするギヤやクラッチを使った機械式LSDと、トルク感応式と呼ばれるヘリカルLSD等がありますが、GT2では機械式LSDを使っていると思われるので以下、それについて説明します。

　LSDには1WAY,2WAY,1.5WAYとありますが、1WAYは加速時のみ働くもので2WAYは加速と減速時それぞれ働くものです。1.5WAYは主に加速時に働き、減速時の働きを抑えてある2WAYという感じです。

　1WAYはコーナリング中に威力を発揮します。アクセルをオンにして内側のタイヤがグリップを失っても外側でしっかりと路面を捉えるのでぐいぐいと曲がっていきます。また、コーナリング初期の動作はLSD非装着と大差ないので、初心者には1WAYの装着をお勧めします。

　2WAYは1WAY以上にコーナリング中に威力を発揮するのですが、減速時にもロックしてしまうのでマシンの回頭性が低下します。つまり曲がりにくくなるのです。(初期アンダーが強い)ですから、上手く荷重移動を行い、車を曲げるテクニックが無ければなりません。これは上級者にお勧めします。

　1.5WAYは1WAYと2WAYの中間的な動作です。LSDの効果は1WAY以上ですが、コーナー初期のアプローチにはある程度のテクニックが必要となります。中級者向きです。

　セッティング項目には、イニシャルトルク、ACCEL側、DECEL側とあります。
　イニシャルトルクは、どの程度のトルクでロックさせるかを決めるものです。SOFT側では大きなトルクがないと動作せず（タイヤの空転が多い場合）、HARD側では少ないトルクで動作します。（タイヤの空転が少ない場合）
　ACCEL側・DECEL側はそれぞれの方向への配分です。通常はACCEL寄りにします。

　LSDは速く走るのに最低限必要なパーツですが、付ければ速くなるという種類のものではありません。
　LSDを装着する事で駆動力が掛かるようになったマシンは、さらなるコントロール能力をドライバーに要求します。

ASCについて
　ASCはABSを応用した装置です。
4輪のブレーキを独立してコンピュータ制御する事で、マシンのスピンを防止する役割を持ちます。
ブレーキを制御すると言ってもASCの動作はブレーキング時だけではありません。コーナリング中のテールスライドも検知して作動します。
　この場合、ブレーキシステムを作動させるのですから当然、動作時の車速は落ちます。つまりこれがASCのデメリットとなります。
　またASCを強く効かせるとコーナー内側の車輪のスリップすら抑制するので曲がりにくくなってしまいます。

　ASCを必要とするシーンは、耐久レースなどでタイヤが摩耗した後の安定性確保といったところでしょうか。
　速く走る事よりも安定して走る事が重要なレースに向いている装備です。

TCSについて
　TCSとはトラクション・コントロール・システムの略です。
大排気量の高級車等に主に装備されているもので、駆動輪の空転を検知してコンピュータ制御によりアクセルを戻しタイヤのグリップを確保するものです。

　TCSを装着する事で、マシンのスピンを防ぐとともに、ハンドルの効きの確保、滑りやすい路面での発進加速性能および旋回性能の向上など、安定性を向上させることができます。

　ただしTCSを効かせすぎると、発進時やコーナー立ち上がりで十分な加速を得られなくなります。
　大パワーのFR・MR・RR車に効果的な装備です。
これも速く走る事よりも安定して走る事が優先されるレース向きの装備でしょう。

ヨーコントロールについて
　ヨーコントロールとは左右輪に駆動力差設けることで車両自体に曲がろうとする回転力を与え、４輪のタイヤの負担を均等化し、エンジン出力を押さえることなく車両の操縦性と安定性を高めるものです。

　旋回時にコンピューターが車両状況を判断し、内部に２つの異なる回転速度を作り出す増減速ギアと、左右輪にトルクを移動させる左・右クラッチを組込んだトルクトランスファデフにより、左右輪へ適切に駆動力を配分します。

　コーナー外側の車輪をより多く回し、内側の車輪を少なく回す事で、凄まじいコーナリングが可能になる装備ですが一部の車種にしか搭載されていません。
4WDやFFのようなアンダーステアの強いマシンに効果的な装備と言えます。

　ただしあまり効かせ過ぎるとリアタイヤのグリップが旋回スピードに負けてスピンしてしまいます。そして、その時の速度はマシンの限界を遙かに越えたものなので制御は困難でしょう。