【タイヤのグリップとコーナリングプロセス】 ここでは、コーナリングのプロセスを以下のように大別してみます。 1.コーナリング初期 2.コーナリング中期 3.コーナリング後期 1のコーナリング初期とは、ブレーキング(ブレーキ操作)やアクセルオフ(アクセルを緩める事)などによってコーナーを曲がれるまでスピードを落とし、ハンドル操作を始めるものです。これはコーナリングの準備段階です。 スピードが出たままでは、遠心力により、コーナーを曲がりきれないので、スピードを落とさなければなりません。そして、スピードを落とす事で、車は「曲がりやすい状態」に変化します。 どういう事かというと、スピードを落とす事で、車は前のめり状態になり、この時、車の前輪には荷重がかかり、タイヤのグリップ(接地力)が上がります。前輪は操舵輪でもあるので、グリップが高ければ、ハンドル操作に応じやすくなるのです。(荷重移動) ![]() これは、タイヤに対して上から力がかかる事によるものです。 (消しゴムを消す時に、上から力を入れない時よりも、上から力を入れた方がよく消えるのと同じ原理です。) ただし、ブレーキングでタイヤのグリップをフルに使った状態では実は曲がりません。どういう事かというと、タイヤのグリップは車を上から見た時の横方向の力と縦方向の力の総和で成り立っているからです。 ![]() たとえば、タイヤのグリップを数値化して10としてみましょう。 ブレーキングの時にタイヤには縦方向の力がかかります。この力が10であった場合、このタイヤには横方向のグリップは無いのです。 10(縦方向の力)+0(横方向の力)=10(タイヤのグリップ) この状態ではハンドルを操作しても曲がってくれませんので、厳密には、フルブレーキング→ブレーキを緩めつつハンドル操作、になります。 また、どんなに荷重移動して前輪のグリップを高めても、無限に高まるわけではなく、やはり、縦方向のグリップを越えれば、ロックしてしまいます。 この状態では減速能力は極端に落ち、当然、ハンドル操作も効きません。 ですが、ロックする寸前はタイヤのグリップが最大限に発揮されている状態でもあるので、この状態を持続できれば、短時間で目的の速度まで減速ができます。それには、ロックする寸前で、わずかにブレーキ操作を弱め、また踏み込むという操作が必要になります。(ポンピングブレーキ) ただし、ABS(アンチロックブレーキシステム)を搭載している車の場合、コンピュータが自動的にこの操作をしてくれます。 このようにしっかりとブレーキングをして、目的の速度まで減速する作業が終わってから、わずかにブレーキを緩めながらハンドルを操作する事で、車は曲がり始めます。 ですから「なかなか曲がらない」と思っている人は、フルブレーキのままハンドルを操作している可能性もあります。 2のコーナリング中期とは、車を仮想の走行ラインに乗せて、それを維持するものです。 仮想の走行ラインとは、アウト・イン・アウトのように、ドライバーがイメージしたラインです。このライン上をなるべく操舵角を小さくして走る事で、タイヤの限界をフルに使ったコーナリングが可能になります。 タイヤのグリップについてはコーナリング初期の所で説明したように、縦方向と横方向の総和で成り立っていますので、コーナリング中にたとえば横方向に10の力がかかっている時は、アクセルやブレーキ操作をしても、グリップしません。 この状態でアクセルを踏み込めば、タイヤは空転し、逆にブレーキ操作をすればロックしてしまいます。もし、そうならないとするならば、それはタイヤのグリップをフルに使った状態ではないとも言えます。 そして、タイヤの限界を引き出すためには、コーナリング中はアクセルはエンジンの回転を維持するように操作します。(パーシャルスロットル) また、タイヤに横方向の力が目一杯かかっている状態でハンドルをさらに切り込んだりすると、遠心力が高まり、タイヤは限界を越えてしまいます。これ(タイヤの破綻)がフロントタイヤの場合は強いアンダーステアになり、リアタイヤの場合はオーバーステア→スピン、となります。 このような事から、コーナリング中の不用意なハンドル操作は禁物という事がわかると思います。 初心者にありがちな、「コーナリング中盤でさらにハンドルを切り込むというのがありますが、これで難なくコーナーを抜けられるならタイヤを限界まで使っていないという証拠でもあり、逆に「姿勢が乱れる」「スピンしてしまう」「コーナーの外にふくらんでしまう」というのであれば、進入速度をもう少し落とすか、パーシャルスロットルにする必要があります。 コーナリング後期とは、コーナーの出口に向かって立ち上がるものです。 コーナーの出口が見えてきたら、徐々にアクセルを踏み込み、立ち上がっていかなければなりませんが、この時もタイヤのグリップは縦方向と横方向の総和である事を忘れてはなりません。 横方向の力(横G)がかかっている状態でアクセルを全開にすれば、タイヤはグリップを失い空転してしまいますし、空転する事で、横Gが弱まらなくなってしまいます。 ですから、まず、ハンドルの操舵角がニュートラルに近づくにつれて、徐々にアクセルを踏み込んでいきましょう。
上記が理想型です。 ただし、タイヤの限界値は荷重のかかり具合によって9だったり11だったりします。 ですから、実際には荷重移動も組み合わせて考える必要があります。 下記に典型的な間違いの例も示しておきます。 『しっかりとブレーキングで荷重移動しているのにマシンがなかなか曲がらない』 →フルブレーキングでタイヤのグリップを使い切っているから。 『早めにブレーキングしているのに、制動距離が長い』 →タイヤがロックしてしまっている。 『コーナリング中、アンダーステア傾向』 →コーナリングスピードが高すぎる。コーナリング中にブレーキ操作をしている。 『コーナリング中、オーバーステアが出たり、強いアンダーステアが出る』 →コーナリング中にアクセル操作やハンドル操作をしている。 マシンのセッティングをいじる前に、まず、このようにドライビングを見直してみてはいかがでしょうか。 ただし、ドリフト走行の場合はこの限りではありません。特に速いドリフト(慣性ドリフト)は進入時にオーバーステアを意図的に作りだし、コーナリング中は終始アンダーステアであると言えます。 路面のミュー(摩擦係数)が低い場合やタイヤのグリップが悪い場合は、このような走り方の方が速い場合も多いです。 しかし、多くのレーシングゲームはタイヤのグリップがとても高いので、ドリフトで良いタイムを出す事はまず無理です。ラリーゲームのように悪路を走行するゲームでは逆にドリフトの方が速いですが。 |
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