Goniurosaurus kuroiwae splendens

和名:オビトカゲモドキ
2000.7.1〜


2000年の夏から飼い始めました。
何とか飼育の勘所みたいなものもつかめて、約1年後の2001年5月末には初産卵を見ることが出来ましたので、私の飼育方法などを紹介します。

飼育個体の紹介 2001年 8月10日現在で購入個体17頭+自家繁殖個体3頭を飼育中です。

メス その1 オス その1
メス その2 オス その2(未撮影)

ケアシート

はじめに
基本的な環境としては、
乾燥していない(じめじめしている必要はないと思う)、高温にならない(30℃には絶対にならない)、人の気配が頻繁でない(居間などで飼育しない方が望ましい)、できれば常に薄暗い環境を再現すれば方法は各自の選択でいいと思います。

先達の努力
この種類は難しい、というイメージが強く
実際、2000年にはじめて飼育した当初は、かなりてこずりました。
しかし、それはケージの置き場所が不適切だったのと、あまり気を使いすぎたのがかえって仇となっていたように思います。
それにしても以前の飼育者の方々のお話で聞くほどの困難さではありませんでした。
その理由としては流通経路の改善が挙げられるのではないかと思います。
現地からの仲介をしてくださった方が試行錯誤を重ねて、流通過程でのストレスを緩和軽減する努力を重ねてくださった結果、今年のようにスムーズな飼育が実現されたと思います。
これから飼育される方は、その辺りの経緯も考えたうえで飼育をはじめられると良いと思います。
また、流通経路の改善からは、色々ヒントが得られるでしょう。


入手時になるべく若い個体を手に入れることをお奨めします。
その方が順応性が高いように思います。
理想的にはCBの半年〜1年くらいの個体がいつでも入手できるようになるといいのですが。


私の場合

1.ケージング
その1 蓋付半透明のコンテナを使用。
ケージ全景 水入れとシェルターが見えます。
この場合は、シェルターの入口は上面にしています。
シェルター内部の様子。これは繁殖用ケージなので、シェルター内の土はバーミキュライトを混ぜて、掘りやすくしてあります。
コンテナの側面にφ3mm程度の穴を50ケほどあけて、空気の流通を確保しています。
オビトカゲモドキに限らず、数種をこのケージで1年以上飼育していますが、余程床材を湿らせない限り、蒸れて体調を崩した個体はいません。

底床には湿らせた赤玉土を使用し、厚さは2cmくらい敷いています。
シェルターは、いくつか試した中では、黒いテープで遮光したタッパーに湿った土を入れ、側面または上面に出入り口の穴を設けたものがいい感じです。出入り口の位置は少し高いところの方がいいです。コオロギがシェルターに入り込むのを防ぐためです。
他の種でもそうですが、餌昆虫がシェルターに入り込み、常に刺激を与えるような環境では、拒食しやすくなります。
経験的に、餌が動いている姿が常に目にはいると動くものに対するリビドーが低下して、動くものを追う反応が鈍くなる様に思います。
それらを考えるとシェルターの入口はあまり大きくない方が良いと思います。
水入れは常設しています。水を飲むところを見たことはないんですが。

このケースの利点
・プラケースに比べて安価であり、密閉度が高く、乾燥しにくい。
・適度な広さがあり、繁殖させるには適当である。
・加工がしやすい。
・重ね置きが出来る。
・一応、シートヒータなどを使えるサイズである。(私は使用していません)
・半透明なので、若干、動物へのストレスを軽減できる(かもしれない・笑)
・鑑賞はできない。

その2 定番のツインボックス使用。(通称トロ・スペ1) 
ケージの全景。メンテナンススペース側を開けたところ。 シェルタースペースを開けたところ。

片側をガムテープで覆い(本当は、黒に着色したいが今のところ時間が無くてやっていない)、底床として湿らせた赤玉土(各人の好みなどで使い慣れたものを使用すればいいと思います)を入れます。
中仕切りに適当な大きさの穴をあけます。これにより、ケースの片側がシェルターになります。(シェルタースペース)
もう片側(メンテナンススペース)には何も入れません。蓋の側面部分にφ1〜3mmくらいの小穴を数個空けます。
穴径と数は周囲の雰囲気中湿度や、メンテの状況に合わせて変えます。
写真のタイプの場合、蓋が取り外せるので、事前に穴径などを変えた蓋をいくつか用意しておき、状況に応じて適宜変更する事ができます。
こちら側には霧吹きをし、水滴が乾かぬように管理します。
このケースの場合、シェルターの入り口は底よりも自然に高くなりますので、餌動物が侵入する事は稀です。念のため、コオロギの前脚脛節部分から先を切って与えています(登攀を阻止するため)
昨年、小さ目の個体をこのケージで4ヶ月ほど健康に飼育した実績がありましたので、今年、10個体をこのケージで飼育して、現在はモニター中です。
今のところ、全ての個体が、導入日から4日以内にコオロギに餌付き、平均して1匹/1日のペースで食べています。

このケースの利点
・プラケースに比べて安価である。(¥100!)
・省スペースなので、多頭飼育に向いている。
・加工がしやすい。
・重ね置きが出来る。
・半透明&着色されているので、若干、動物へのストレスを軽減できる(かもしれない・笑)
・ケージが狭いので、餌を見つけ易い。(これは大きな利点です。)
消灯してあれば、だいたい5分以内にコオロギが消える時が多いです。消灯して無くても顔だけ出せば餌が取れるので、個体によっては食べてしまいます。
*このケージにはデメリットもあります。
・水入れの設置が難しいため、毎日のケアが出来ないと乾燥させてしまう危険がある。(特に秋〜初冬にかけて湿度が低下し始める時期が要注意です)
・このケージで繁殖を狙うのは困難
・個別に暖房するのは難しい。
・鑑賞はできない。

2.餌
イエコオロギだけです。
ミネラオールをまぶし、後脚は必ず、と場合のよっては前足脛節と触角を除き与えています。後脚はオビトカゲモドキに限らず全て除きます。イエコロギの後脚には鋭いとげがあり、私は何度か自らの手に刺しました。皮膚を破り血が出るほど固いので、トカゲたちの内臓にいい事は無いでしょう。
他の餌も試しましたが、特に嗜好差は無いように感じましたので、イエコロギのみを使っています。
繁殖期には、成虫2匹/日くらい食べています。
休眠期をのぞき、成虫1匹/日で与えています。
特に食が細いと言う感じはしません。このサイズのヤモリであれば平均的な給餌量で大丈夫です。
環境に馴染まず、びくびくしつづけているような時はやはり食べませんでした。逆によく馴染んでくるとピンセットから餌を食べるようになります。

3.周囲の環境
3−1.温度対策
高温を避ける必要があるようです(自ら限界を試していないので参考資料などの受け売りです)ので、エアコンなどを稼動できる必要があります。
3−2.照明
明るさに非常に敏感ですので、できれば常に暗い環境を再現すべきです。経験から言うと日長が繁殖の誘発に影響する事は無いと思いますので、心置きなく暗くしてください。(昨年は大半の時間を暗い環境下に置いていた)
照明とは異なりますが、人の気配は非常に嫌うと思います。
昨年、室内で2箇所ケージをセッティングし、一方は人の出入りの少ない場所、もう一方は居間の隅に置きました。
温度的には居間が最も低く一定だったのですが、とうとうここでは餌付ける事ができず、後述する屋外へ設置したところ、餌付ける事ができましたので、人の気配は重要なファクターではないかと思っています。
3−3.湿度
乾燥には確かに弱いので、常に乾かないようにしておくべきです。ケージ内に水がたまっていても弱ると言うことは有りませんでしたので、比較的低温下にある場合には、多湿には強いと思います。

屋外へのケージ設置
設備的な問題(主としてエアコンの設置が出来ない、一日中の稼動が難しい)で以上を再現するのが困難な場合、屋外で飼育する事が出来ます。
この方法は2000年夏に私が実際に行い、実績があります。
屋外への設置の場合、なるべく日が当たらない場所を選んでください。
ケージを地面におきます。その上にアングルなどで空間を確保し、軽トラック用クールシートとよばれる物(表面がアルミコートの幌)をかけ、地面に散水します。
次に最低最高温度計を設置し、一日の温度変化を確認します。(この確認はなるべく暑い日に行うべきです)
以上でOKでしたら、導入できます。モニター期間は長いほど有効です。どのくらいと言う目安は示せませんが、私の場合、一夏確認し(特にオビトカゲモドキ飼育を主眼にしていたわけではないのですが)、翌年からの導入になっています。
 このセッティングで外気温が40℃近くまで上がって、直射日光が当たっても28℃以下に抑える事が出来ました。余談ですが、同じ場所でマダライモリも夏を越えています。
幌をかけることで完全に遮光されるのと、やはり屋外で日当たりの悪い場所は人の出入りが稀であるため、ストレスを与える率が減ります。
また適宜地面に散水する事で、適度な湿度を保つ事も可能です。
屋外ケージの注意点
1.ケージは地面に近いほど、欲を言えば地面に埋め込むくらいの方が温度は低く押さえられますが、台風などで冠水しないよう注意が必要です。
2.アリの侵入を受けますので、目の細かいメッシュをかけるなど、対策が必要です。特にコオロギの死体等があると瞬く間に集まってきます。水盤を設置し、その中央にケージを置くなども一つの方法です。
3.実行の前に必ず温度などをモニターし、確認してください。実行中も最低最高温度チェックは必ず行ってください。
私の住環境では成功しましたが、環境によっては困難な場合があります。
4.ヌ・ネコ・ヒトのいたずらを防止してください。

繁殖
冬場、ナチュラルに温度を低下させていき、大体8〜12℃くらいで、2ヶ月ほどキープしました。
その後、16℃〜20℃程度で更に2ヶ月、ついで20〜26℃くらいで2ヶ月ほどキープし、5月頃からペアリングを開始したところ、5月末に初めての産卵がありました。
産卵場所は今のところ、全てシェルターないです。シェルター内の床材はバーミキュライトを混ぜて穴を掘りやすくしてあります。
産卵直後です。画像からは良くわかりませんが、深さ3cmほど穴を掘っています。
このタッパーの底までは掘っていません。
シェルター内への連続産卵は以前産んだ卵を撹乱しますので、全て取り出し、別容器にて孵卵しています。
現在(2001.8.10)、26〜27℃にて7卵をキープ中です。
卵の孵卵は温度を除き、ヒョウモントカゲモドキと同じで大丈夫です。

2001.7.27
初めてのベビーが孵化しました。上記条件で、産卵からちょうど60日目でした。
2001.7.27孵化 NO.1 2001.7.27孵化 NO.2 微妙に模様が異なります。
2001.8.4孵化 3頭め。最初の2頭とは両親が異なります。


トラブル
昨年8頭導入し、4頭を落としています。
その原因とあるものは対策を記しておきます。
1.ストレス:上記屋外飼育で、導入後すぐにアリの侵入を受け、1頭が死んでいます。
アリに捕食されたと言うわけではなく、輸送+アリの侵入と言うストレスに起因すると思われました。
2.ストレス?
導入後3ヶ月ほど経った頃に1頭を落としています。数日前までピンセットから餌を食べていましたが、突然死んだような印象を受けました。ハッキリした原因は不明のままでした。
しかし、もともと餌食いが細い個体だったため、ちょくちょく覗いていたのと、屋外から室内へ移したあとだったので、この辺りが遠因ではなかったかと思っています。
3.脱走
メス1頭脱走されて、そのまま発見できませんでした。原因はケージの蓋の閉め忘れです。(蓋自体は乗っていたのですが、ロックをし忘れていました。)
上記コンテナケージの深いタイプを使用していたのとアリよけネットをつけていたので、蓋を閉め忘れても大丈夫と高をくくっていたのが良くありませんでした。(アリよけネットには、一部ほころびがありました。この見逃しもミスです)
4.乾燥
ツインボックスで飼育していた個体を初冬に落としました。
乾燥が原因です。寒くなり湿度が低下し始める頃からはマメなチェックが必要です。
他種に比べてかなり乾燥に弱いと感じました。ヒキガエルなら耐える程度だったのですが。

参考文献など
飼育ケアについては、詳しいことがいくつかの書籍に出ています。
Scale 008号 p83−85 オビトカゲモドキの飼育と繁殖 今井謙介&ぴくた
ゲッコーの本 p46−49 

等がお奨めです。

ネット上であれば以下のサイトがお奨めです。

極東パラダイス 
展示の無い博物館 


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