Paroedura pictus

飼育方法
(keepe's station改訂版)

この種は思い入れが深いので、ちょっと突っ込んで書いてみます。原稿もあることだし(笑)


飼育方法
ケージ   保温・照明

繁殖
雌雄判定 ペアリング 産卵 卵の扱い及び孵化 幼体の育成
飼育方法  

 飼育・繁殖は非常に容易で、神経質になる必要はなく、基本を守っていれば、まず問題はない。以下、具体的に私の飼育スタイルを紹介する。

1. ケージング  
 乾燥したテラリウムを用意する。 ケージは蓋ができて、空気の流通があれば何でも良い。最小で15x12x8(h)cmあれば一生飼える(ツインボックス参照)
ペアでも30x15x10(h)cmあれば十分(コンテナボックス参照)。
ただし、繁殖させる時以外は、個別飼育をお勧めする。特に雄2頭以上の同居は絶対に避ける。実際には、オス同士を同居させた経験が無いので、どんな事が起こるかわからないが、レオパ(ヒョウモントカゲモドキ)では、同居即激しい闘争になるのを目撃した事がある
 ケージの材質にもよるが、オスと未婚のメスならば床材は無くてもOK。湿度の問題を気にする向きもあると思うが、毎日一度、霧を吹いてやれば脱皮不全などは起きなかったし、必ず個体をチェックする事になるので、トラブルを発見できる。
筆者は細かい技やグッズよりも、毎日一度のチェックの方が重要だと思っている。
 交尾後のメスの場合、産卵床を設ける。産卵床はツインボックスの場合、仕切りの片方の部屋へ赤玉土を入れておく。深さなどは画像を参照していただきたい。ここは完全に乾いていて良い。
掃除は、同じケージを二つ用意し(何と言っても¥100だから)シェルターごと入れ替えて汚れた方を洗っていた。
もちろん、思いっきりレイアウトしても構わないし、床材を用いても問題は生じないと思うが、管理はしづらくなるだろう。
 私の場合は、色々な交配を行い、子供を沢山育てたかったので、極力スペースを節約し、飼育をフォーマット化して管理を簡素化したかったので、こういう飼育方法になった。  
 シェルターは必要。何故必要か。個体のメンタルケアと言うのも有るが、それ以上にメンテナンス時、飼育個体と接触する機会が減る。シェルターに引っ込んだところで、シェルターの入り口に蓋をしてしまえば、個体に触れることなく、ケージの移動、掃除などのメンテナンスが行える。
個体に触れようとすれば、脱走の機会も増えようし、最悪、自切などの障害を与えるかもしれない。
ソメワケササクレヤモリの場合、あまり拒食の心配は無いが、それでも無用なトラブルは避けるのが賢明であろう。

2.餌  
 個体サイズに合わせて、コオロギ等の昆虫・ピンクマウスを与える。

 コオロギの場合
 ビタミン、Caなどを添加するほうがいいと思う。実はこれらのサプリメントなしで飼育した経験は無く、本当に障害が発生するのか知らない。一般的には、これらを添加しないとクル病などになると言われている。
私の場合、サプリメントはミネラオールIを使用している。これを使用して何らかの障害が出た事は無かった。

 ピンクマウスの場合
 活ピンクならば結構食べるが、冷凍の場合、餌付きが悪い。十数頭で試みたが、完全に餌付いたのは2頭だけであった。
また、ピンクの場合、コオロギより給餌間隔を長く取ってしまいたくなるのだが、この種の場合、代謝が高いのか、あまり間隔を空けると逆に痩せてしまうことがあった。
というわけでピンクに無理に切り替える必要はないと思う。

 ミルワーム・ジャイアントミルワームの場合
 餌付きは良い。特にコオロギを食べない個体には試してみるとよい。ミルワーム+ミネラオールだけで育てた個体がいたが、きちんと繁殖までいたったので、餌としては問題ない。
 他に、ダンゴムシ、ワラジムシなども食べる個体がいた。

 餌のサイズは、飼育個体の頭の大きさを目安にすると良い。また、ミルワームなどの細長い餌ならかなり大きな物まで食べられる。まず拒食することはないが、もしそうなったら餌の種類を変えてみる。  
 幼体には1日1回、毎日給餌。成体のオスならば、2、3日に一度、コオロギ1匹づつで十分。与えすぎると容易に肥満する。
 ただし、妊娠中の雌にはCaたっぷりのコオロギを1日2匹、毎日与えておかないと、衰弱したり、未熟卵を産むようになる。と書いたが、未熟卵については単純に未受精卵なのかもしれない。
 このように大量給餌しても妊娠メスは肥満しないので、産卵と言うのは相当のエネルギーを必要とするのだろう。


飲み水は常設するか、毎朝1回、スプレーして与える。スプレーをしていれば、湿った場所を設けなくとも問題は起きていない。私の勧めるケージングで飼う場合、飲み水は常設しない事になるが、それにより不調になった個体はいない。
ヒョウモントカゲモドキだと、脱皮不全や、食欲減退に陥るが、ソメワケササクレヤモリはより乾燥に強いようだ。

3.保温・照明  
適温:20℃〜30℃。
夏場は室温のままでもOK。
私の住んでいるところは、国内で最も熱くなったりするので、夏場、室内が40℃になる事もあるが、それでも熱死することはなかったので、とりあえず高温には耐えられる。しかし、32℃以下にキープしてやった方がいいだろう。
ケージ内で温度勾配がなくても問題ない。温度勾配がつけられるほど、広いケージは使っていないし。
昼夜での温度差はつけていたが、夏場だと、30℃以下にならない日もあった。それでも5〜10℃近い温度差は生じていたのであるが。冬場は私の場合、自作の温箱に収容していて、昼間30℃、夜22℃に設定していた。
ピタリ適温などを用いてケージ毎に保温してもよいだろうが、実際にそれだけで保温をしたことがないので、具体的な注意点はわからない。
ホットスポットは不要。
明るい部屋なら照明は不要だろう。
冬場でも12時間程度点灯して、光周期をつけないようにしていた。その理由は、恒常的環境下に置けば周年繁殖可能となることによる。実際、一年中産んでくれたので、低温処理や、照明時間の変化は不要である。

繁殖
1. 雌雄判定
孵化後50日位から判別可能。雄では肛門のすぐ後ろにヘミペニスが納められているため、先端が二つに分かれた大きなふくらみがあり、背面から見ると尾の両脇にはみ出して見える。雌でも肥満個体ではここが膨らんで見えるが、背面から見えることはない。
現物を見れば、初めての人でもわかるくらい、はっきりはしているので、それほど雌雄判別に迷う事はないだろう。

2. ペアリング  
 前述したとおり、周年繁殖可能で、特に低温処理の必要はなく、雌雄を同じケースに導入するとすぐに交尾が始まる。大体、1週間〜2週間くらい一緒にしておけばよい。雄が雌に対してプレッシャーを与える場合があるので、そういうときには速やかに分離する。(これにより、雌を1頭死なせてしまった。)  
 交尾後、大体2〜4週間後くらいから産卵を始め、その後、10日〜2週間位の間隔で産卵していく(産卵インターバル参照)。ただし、これは個体や、環境、温度によって若干異なる。連続しての産卵は母体にかなり負荷がかかるので、この時期は特にCaの添加に留意する。

3.産卵  
 ペアリング後は産卵床を常設しておく。産卵床は乾いていて良い、というか湿らせないほうが都合が良いし、湿らせる必要もない。
産卵床は、透明〜半透明の容器に2.5cm以上の土・砂などを入れるだけで十分。広さはその個体の頭胴長程度あればよい。
中に入れるものは掘れる材質であれば、多分、おがくず、きな粉、ぬか等なんでもいいはずであるが、腐る可能性があるものは使用しない。
 土を掘って糞をするのが本来の行動らしく、産卵床に糞をする事が多いが、ここに糞をしているのを見つけたら速やかに取り除くようにする。そのまま放置するのは、無用なトラブルの元である。
産卵直前には、腹が卵の形に膨らんで見える様になるので、そうなったら毎日忘れずにチェックを入れる。
 産卵は夜間から早朝に行われ、卵は3cm程の深さの位置に、きちんと埋められているが、産卵した時には産卵床を掘った後が顕著に見られるので、それと分かる。
透明〜半透明の容器を使用した場合、ケージの外側から卵の存在が確認できるので、見つけたらそっと掘り出し、孵卵器へ移動する。移動方法は後述する。産卵床に不透明の容器を使用してしまったら、メスの腹がへこんだのに気づいた時点で掘って探すしかない。
推奨のツインボックスを使用した場合、シェルター側にメスを追い込んで、中仕切りで封鎖してから、卵を取り出すと脱走などを避けられる。
 1クラッチは通常2卵であるが、まれに1卵の時がある。2個の卵を1卵づつ数日あけて産むこともある。また、2つの卵が並んで生み出されることはまれなので、見つけ損なわないように。一度の交尾により、3〜8回の産卵が可能である(半年で40卵産んだ雌が居る)。産卵サイクルが一区切り付いたら1〜2ヶ月のインターバルを置いて次のペアリングを行うようにしないと、雌が短命に終わるかもしれない。

4.卵の扱い及び孵化。  
 生み出された卵は全て孵卵器に移す方が無難。孵化器はミルワームの容器などに赤玉土を軽く湿らせた物を敷いて、小孔を数個あけて空気の流通を確保した蓋をしたものなどを用い、土の上に転がしておけばよい旨、以前に書いて日本全国に流布していると思うが、これより良い方法を開発した。
 
改良された部分とは、床材に卵を接触させない、ということである。床材に卵が接触すると水分コントロールが困難だし、床材が汚れている場合、そこからカビることもある。
そこで、これを非接触にしてみた。これによって床材を湿らせすぎて失敗する事はなくなった。
具体的な方法は、十分に湿らせた床材をコンテナに入れ、その床材の上にプラスティック製の板を敷く。
私の場合、運良く、卵の大きさ+αくらいのくぼみを持った板を大量に入手できたので、これを流用した。
こういったものが手に入らない場合、各自工夫してくぼみをつけて欲しい。
このくぼみに卵を置く。もしも卵が転がるようならば、ここに砂などを少量おいて安定させると良い。料理で、ゆで卵が転がらないように塩を敷く場合があるが、あの要領である。
あとはコンテナにふたをして保温するだけ。タッパーなどを使用する場合は、気密性が高いので、適宜空気穴をあけてあまり多湿にならないように調整した方がいいだろう。

さて、どの方法を用いるにしても孵化床材が必要である。私は殆ど偏愛的に赤玉土を使用する。赤玉土は乾燥すると白っぽく色が変わるので、水分の管理がしやすい。価格も安い。
一度使用した土はコオロギの産卵床に用いるなどして再利用するのは良いと思うが、もう一度孵化用に使用するのは止めた方が良い。
孵化時に、卵の内容物が一緒に出ており、これが腐敗の原因となり得るからである。

孵化器に移す時はセオリー通り、卵を発見した時に上になっていた方向が上になるようにする。
床材接触タイプの場合、特に埋める必要はなく、土の上に転がしておけばよい。湿度70〜80%、温度28℃前後が孵化の条件と記述してある文献が多いが、湿度はもう少し低めの方が良く、やや乾燥気味くらいにしないと多湿に傾きやすくなる。

温度も許容範囲が広い。私はこれらを成体と同じ温箱に収容したので、一日のうちに22〜30℃まで温度が変化したワケだが順調に孵化している。
 この種の卵殻は薄くて非常に割れやすいので、移動には小型のスプーンの使用をお勧めする。ピンセットにより孵化器へ移動した卵は全て孵化まで至らなかった。目には見えないが小さなヒビが生じており、そこから内容物が流出してしまったためである。また、多湿な環境下でもヒビが生じやすくなる。ただし、ヒビが生じても、無事発生することもある。
 孵化までの経過は、有精卵の場合、産卵後しばらくはクリーム色をしているが、10日目位になると全体にピンク色になってくる。やがて卵の上半分は透き通り、下半分とのコントラストがはっきりしてくる。前述の条件での発生所要日数は、温度に左右され、私の場合、孵卵温度の設定上、季節によって温度(の上限)が変化したため、冬場は長く、夏短い傾向が出た。データは別にまとめる。

 5.幼体の育成  
 孵化直後の幼体のサイズは、およそ4cmで、色は全体に白っぽいが、孵化後1日以内に脱皮して鮮やかな色彩となる。 初期餌料は、小さめのミルワーム、コオロギの1.5〜2週零くらいのものが適当で、早ければ孵化の翌日には餌を食べ始める。ピンセットから餌を食べるようにしつければ、コオロギの成虫を刻んで与えることもできる。特に腹をちぎって与えると食いが良い。要するに変形するものならかなりのサイズでも飲めるのである。うまくしつけると、置き餌でも食べるようになる。
まともに孵化したものならば、まず失敗する事はない。事実、異常孵化個体(早期孵化、極端にサイズが小さいなど)以外の生存率は100%であった。
生存するかどうかは、孵化した時点で決まっていると言ってもいいと思う。
 幼体のうちは立体活動が可能なので蓋が不可欠。他は成体の飼育に準ずるが、順調に育てば、2ヶ月半位でコオロギの成虫を食べられるようになり、早ければ6ヶ月目位から卵を産み始める。幼体のうちは複数飼育もできるが、小さなケージで構わないので個別飼育することをお勧めする。 同様の方法で、バスタールササクレヤモリの繁殖にも成功している。
バスタールについては別にまとめる。 

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