ジネズミ
分類:食虫目 ジネズミ科 ジネズミ 

ジネズミって知ってますか?知らない人も多いと思うので、簡単に説明を。
大きさはハツカネズミより小さく、色は灰色っぽい、モグラの仲間。
モグラの仲間と言っても、土中生活者ではなく、地表を生活の場にしているので、手(前肢)はスコップ状にはなっていません。
尻尾も長く、耳(耳介)もありますので、見た感じはネズミです。
猫を飼っている人は、見たことがある人も多いようです。お宅の猫がネズミのようだけどなんか違う、って生き物を採ってきた事は有りませんか?
ネズミとの相違点は、(=モグラとの共通点)で一番目立つのが鼻。
生きているうちに見ることができた人なら、そのよく動く鼻を見ることができたでしょう。
鼻だけを振り回して匂いをかぐ行動はモグラとよく似ています。
死んでしまったものならば、その歯を見れば、ネズミと異なる事はすぐわかるでしょう。
ネズミの歯を見たことがある人ならば、と言う事ですが。
更に、モグラの歯を見たことがある人ならば、モグラにそっくりの歯が並んでいる事に気づくでしょう。
ま、百聞は一見に如かず。画像を見てください。

私はこのジネズミを、2日連続、同じ場所で捕獲した経験があります。
季節は春で、1987.4.20、トラップの定期検査を行っていたところ、ひとつのトラップに小さな哺乳類がかかっていました。
それがこのジネズミです。時間は夜の10時30分。
さっそく回収し、トラップを再度かけなおして、その晩は引き上げました。
捕獲した個体は、プケースに収容しておいたのですが、蓋の閉まり具合が悪く、残念な事にその晩のうちに脱走されてしまいました。


その翌晩、昨晩と同じ時間帯に、同一個所に行ってみると、なんと、またしてもかかっているでは有りませんか。
柳の下に2匹目のどじょう。

私の住んでいるところと、このトラップをかけた場所は、10km近く離れているので、昨晩と同一個体とは思えません。
また、この2頭目には1頭目と大きく異なる部分がありました。
臭いです。
強烈な悪臭がしました。例えるならゴムタイヤを焦がしたような臭い。
通常、排他的とされる食虫目の動物が、複数頭、同一の生活圏を共有していた、というのはちょっと異例であり、1頭目は無臭で、2頭目には強い臭いがあったというのはどういうことでしょう?

これらの意味するところを勝手に推測すると、以下のようなことではないでしょうか。
1.この時期がジネズミの繁殖期である。
2.1頭目はメスで、2頭目がオスであった。
つまり、この時期、メスは排他的でなくなり、オスの住居に侵入できるようになる。オスは強い臭いでマーキングし、オスに対しては排他的だが、メスは受け入れるようになる、とそんなところじゃないかな、と。
今となっては、もうわかりません。標本も頭骨くらいしか残っていないし。

彼らの飼育ですが、非常に困難でした。
生かしておけたのは3日と書きましたが、フィールドノートが見つかったので、確認してみると約一ヶ月飼っていました。記憶と言うのはいいかげんなものですねぇ。
当時は、餌として、ミミズ、ワラジムシなどを与えていたと記録には有ります。
この個体の各部測定データ
TL106mm、T38.5mm、HFcu12mm、HFsu11mm、E7.5mm。
わかる人にはわかる魔法の数字ですが(笑)

その後、いくらか勉強したので、不具合の見当はついていますが、いかんせん、捕獲しようと思って捕獲できる類の動物ではないですから、その後、飼育する事は無く、今にいたっています。

今年(2000年)、屋内に彼らが侵入してきたのを目撃しました。
裏庭に浅いトンネル網を作っている動物がいたのですが、その正体がわかりました。このトンネル網で、うまく観察できれば理想的なので、今策を練っています。



哺乳類のページへ             トップへ