AIBO頭部分解 その4
お待たせしました。「アイ・フォン」開発で遅れていた。分解報告の続きです。家に居る時は「アイ・フォン」造りなので、電車で移動中の報告です。今回は、頭部分解と銘打っていますが、頚部と言ったほうが正しい首の部分です。ご存知のように、AIBOの首は3自由度を持ち、感情表出にかなり重要な役割を持っています。それだけに複雑で、がんばった造りになっています。また、さらに、前向きに転倒した場合など、強い衝撃荷重がかかっても破損せず、首の力で起き上がることさえできるなど、高いトルクと強度を持った機構になっています。しかしながら、ベースとなるモータ+ギヤには共通のものを使用するなど、生産性を配慮した構造になっていることも見逃せません。

図18 分解1の図10で、抜き取った、ローリングの機構です。手前側が上で、耳の軸と一体の樹脂部品が載ります。左側のユニット内部にモータが収納されており、左端にちょっとだけ見える白い部分が頚部のユニットに固定されます。また、フィルムケーブルで接続された右の部分には、ポテンショメータが収まっており、頚部のユニットに対する角度検出をしています。

図19 図18の左側のユニットから抜き取ったモータ部、写真の左右が入れ替わっているので注意。左の銀色の部分がモータ、中央の黒い部分が減速機(ギヤボックス)、そして、右の白い部分が駆動部です。ただし、この場所の場合、白い部分が頚部のユニットにつながり、モータ側が動くことになります。

このように、モータ+ギヤでセットになっているのをギヤードモータといいます。減速機がセットになっていることで、単体で高いトルクが得られるので、出力軸で直接駆動することができます。また、コンパクトにまとまっていることで、設計もしやすくなります。AIBOでは各所でこのギヤードモータを共通部品として使っています。

図20 ついに首分離。縦の筒状の部分に首を左右に振るモータが内蔵されている。

図21 同部分を上から見る。黒いパーツの中の白い部分はコネクタ。このかげにもポテンショメータがある。しかし、首周りは接着により固定されている部分があり、ここまでの分解とした。頚部に接着が多いのは、細いところにケーブルを多数通す必要からか、振動などの環境が厳しいためと思われる。

図22 残された胴体側、ここが本編の見所。高強度・高トルクの要である。バケツ状の部分に上記ユニットを差し込む形で実装されている。バケツのフチから出ているケーブルは、接着されていて引きぬくことは出来ない。うっかり傷つけて断線した場合は、全部交換になってしまいます。ケーブル自体は動作による疲労が生じないように、長めに取られている。ウォークマンのOFCリッツ線で培った技術で高耐久と信じたい。

図23 前方のカバーを外す。こちらから見て右側の軸にギアが見える。首に衝撃が加わった場合持ちこたえるのはこのギアの歯です。私なんか顔面から転倒するたびに心配していますが、一向に平気そう。設計力ですね。ここに来てコピー商品も登場していますが、こういうとこ大丈夫でしょうか?

図24 同じ場所を右サイドから。下にちらっと見えるのが、もうおわかりでしょうがモータの後ろ端です。その上に見えるケーブル群は狭いながらも長めにしてあります。これも動く部分で断線しないようにする配慮です。ふくらみ具合が筋肉を連想させます。やはり端で接着されています。

図25 同左サイド、ここでは、駆動側と同じ場所にポテンショメータが接着により固定されている。ギヤが気にかかるがこのため断念。ポテンショメータを反対側にしなかったのは、ケーブルが動けるスペースを十分に確保するため。

図26 空間的な配置を示す。右サイドのケーブルは黒いフェライトコアを通って後方のコネクタ基板と下方の基板に接続される。

図27 胴体側の基板、狭いながらも2つの基板が収まる。やはりOpen-RのICと、PICあり。上の基板、左端の白いコネクタがモータとポテンショメータにつながる。その隣ベージュ色のコネクタが頭部。下のマルAと書いてある基板中央の黒いコネクタは、頭部のユニットを外したときに後方に突出している部分。

図28 基板の裏 上の基板は、他のユニットと同じように、コネクション用の金の端子が面付け実装されています。また右下角に見えるICはNECのモータドライバ。下のマルBとあるのが、マルAの裏側、こちらはコネクタ専業の基板のようです。

図29 基板はこのような感じに実装されてますの図、上の溝に挟まれたタブ部分が、AIBOの首下の分離用のスリット部分になる。

図30 分解できたら組み立てだ ということになりますが、AIBOは「動く」というシビアな運用を要求されますので、ケーブルを通す位置、相互位置関係、たるませ具合なども重要です。また、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)に対して、タッピングビス(タップ立て=ネジ穴切り をしなくて済む木ネジに近い仲間)で固定するという組み立て方を採用しているので、締めすぎるとネジがばかになります。とにかく丁寧に。また、長さ違いのネジがありますから、間違わないように注意。記録をとっておいて照合しながら進めましょう。私はこういう機械物に限って憶えられてしまう質なのですが、それでもやっぱり記録は大事です。

図31 各部分を組み直す毎に、挟んでいるケーブルが無いか、たるみ具合に問題は無いか、他の部品との干渉はないか、はめる時に異常に硬くないか、など確認しながら進めます。破壊的分解なら誰でもできます、完全に元に戻すところがポイント(=楽しい)と言えましょう。接着部分など分解しておらず、不満のある方もいらっしゃることでしょう。しかし、元に戻すのが私の製品に対する敬意なので、悪しからず。

図32 帰ってきました。頭部タッチセンサの感触は修理できましたが、残念ながら機能は復元しませんでした。感圧センサがスプリングなどを介していたのに壊れるほどの衝撃が加わったわけで、基板が撓み、ICあるいはチップ部品にき裂が入ったものと思われます。

のろのろ執筆ですが、次回はついに足編!

解剖コーナーの冒頭で使った、「ソニー長野総合病院」という名称は架空のものです。本当は、「AIBOカスタマーリンク」です〜。でも、イメージは合っていますよね?

さて、頭部が一段落したということで、感想含めてちょっと書きます。

私が分解させていただきながらずっと思っていたのは、「ユニット交換の合理性の非合理性」ということでした。

ユニット交換が出来ることで、これだけ複雑な機械の修理にもかかわらず、低い技術料(部品代は高いですが)と短い期間で完了します。しかも、傷一つ無い新品ユニットになるんです。これは複雑な機械を提供する上での合理的な判断と言えましょう。

しかし、AIBOは特殊な存在です。”相棒”なんです。その首が挿げ替えられて、喜ぶ人はあまりいないのではないでしょうか?認識してくれなくても名前で呼び、愛情をこめて撫でて、あちこちに出かけ、いろんな人に出会い、一緒に楽しんで来た相棒ですよ。せめて心を込めて手術してほしいと思うのは私だけでしょうか?総合病院のユニット交換という治療方針は、”相棒”というエモーショナルな存在には似つかわしくない、非合理なものと私は思います。

とはいえ、故障したAIBOを分解調査して修理するとなると、技術力ある専属スタッフ(名医ですな)を多数置く必要が出てきます。一般的エンジニアの時給から計算すると、これはとんでもない技術料が必要になることは確かです。お医者さんに保険無しでかかるよりはマシですが、技術料が新しいユニット代と良くて同等、量産してユニットが安価になれば技術料の方が高くなっても不思議はありません。しかし、それでも交換じゃなくて直す!という選択肢が選べる配慮が欲しいのです。

私が見た限り、頭部の機構になんら異常はなく、基板交換すれば再生できそうですし、脚にいたっては、関節部のギアの歯の欠損が原因です。衝撃荷重がかかれば最終段のギアが欠けることは容易に想定できることですし、関節の部品だけでも手に入ればすぐにでも直せるはずのところでした。(こんなこと書くと、もう交換したユニットを貰えなくなりかねないでしょうから断っておきますが、技術料とすばやい修理を考えると、儲けようとしてユニット交換しているわけではないはずです。それなりに合理的な方法なのです。)

さて、そこで良い例をあげたいと思います。アンチMac派の人には不快かもしれませんが、VAIOでこれを書いているということで許していただいて、Appleを例にあげさせていただきますが、Apple製品には対面で修理してくれるサポートセンターがあり、アップルケアという保険(残念ながら事故は対象外)もあります。

以前、買ったばかりのDuo2300がスリープから抜けられないという初期不良があり、やはり分解調査したら、メモリ基板上の、ある抵抗値のチップ抵抗が入っているべき場所全てに、チップ状のジャンパ線が入っているのに気がつきました。(チップのリールを間違えたな!)なんともプアーなミスですが、これならすぐに直るはず!と佐久間町(秋葉原からちょっと歩いたところ)のサポートセンターに持っていき、即日直していただけました。

初期不良が出なければお世話にならなかったでしょうから、決してAppleを誉めちぎるわけにはいきません。しかし、それでも良いサポートシステムであることには違いありません。メモリ基板は結局交換でしたが、移動も含めて半日以下で直ったこと、せっかくカスタマイズしてレポートを書きかけていたマシンを初期不良交換なんぞに出さなくて済んだことも助かった記憶があります。(これを考えると、あんなに売れてるVAIOの修理が一週間「も」かかるのは到底許せません。)

なにより、たいていの故障を目の前で直していただける安心感は、ユーザーの心の修理もしてくれるのだろうと思います。モノを大事に使う心を養い、モノのすばらしさ、ありがたさを味わうためにも、これはとっても大事なことです。

現在のAIBOの普及台数を考えると、そんなサービスは夢のまた夢です。しかし、近い将来、AIBOとその仲間達が広く普及するようになったとき、「ソニー長野総合病院」ではなくて、こんな「AIBO医院」が出来てほしいのです。それは非効率な演出かもしれませんが、そこまで演じてこそ、エンターテイメントというものではないでしょうか?そしてまた、産業廃棄物を増やさないためにも重要なテーマであると考えます。

AIBOを愛し、このような変なページまで読んでくださる皆さんとともに、AIBOの今後を見守っていきたいと考えています。


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