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──バレエというと、男性のタイツ姿を思い浮かべてしまって、それがどうしてもひっかかる、という方もいらっしゃるんじゃないでしょうか? 加藤 私ね、ダメなんですよ、あの白タイツ(笑)。あんまり美しいとは思えないんだな。なんであんなに全部出さなきゃいけないの? って思ってしまう(笑)。 守山 昔は履(ママ)いてたんですよ(笑)。20世紀のアタマくらいは、かぼちゃパンツみたいなのを上に。で、どうもニジンスキーが帝室劇場を首になったのは、履かないで舞台に出ちゃったのが理由だというのを何かで読んだことがあります(笑)。 |
| 加藤 へえ、そうなんですか。あれはやっぱりちゃんと見せるためですか? |
| 守山 そうです。筋肉の動きとかを全部見せるためにはタイツの上に何も履いてない方がいいわけですよ。特に後ろのお尻の部分は。あの、ダンサーってお尻から脚じゃないですか? |
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加藤 お尻から脚ですか? 守山 要するにお尻も右と左にあって(笑)、そこからもこう分かれていて。こう……。 加藤 ああ、分かれてますね(笑) |
| 守山 つまり腿から下だけではなくて、お尻から全部使ってるってことなんですよ。そうなると、余計なものがない方が踊りやすいでしょ。やっぱり脚をパーッと開いたときの一直線の感じとか、かぼちゃパンツなんて履いていたらわかりませんし(笑)。 |
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加藤 まあ確かに。 守山 19世紀はまだパンツを履いたんですけれど、それはあの時代の王子は踊らなくてよかったから。踊る役はキャラクテールにまかせて、王子はダンスール・ノーブルっていうんですけど、ノーブルな人は動かないで(笑)、お芝居と女性を支えるエスコート担当。だから当時は40〜50際のおじさんでも王子をやっていたりしたんです。 加藤 へぇ。 |
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守山 でもだんだん作品が変わってきたり、ダンサーも王子役でもキャラクテール並に踊る人が出てくると、王子だろうがキャラクテールだろうが、どんどん踊るわけですね。今水泳でも男の人は総タイツでしょ? 水の抵抗が少ない方がいいから。体操だって…。 |
| 加藤 うんうん。 |
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守山 やっぱり近いものがあるし、だから結局ね、スポーツに近いと思うんですよ、そういう意味では。余計なものがない方が踊りやすい! 加藤 確かに。 守山 まあ、上着が重厚であればあるほど、下がタイツだと不自然、っていうのは判るんですけれどね。履きわすれちゃったみたいで(笑)。だからそうですね、男性のタイツ姿が乗り越えられるかどうかが、バレエ・ファンになれるかどうかのポイントかもしれませんね(笑)。 |
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──眠れる森の美女などを見ると、まわりは豪華なドレスを着ているのに、主役のお姫様は脚出しのチュチュ姿ですよ。これもやっぱり……。 守山 踊るためですね、やっぱり。その点は男性のタイツと一緒です。『眠れる森の美女』や『白鳥の湖』なんかで着ているチュチュは、クラシック・チュチュといって、脚を全部出した短い…まあバレエといってイメージする衣装ですよね。でも『ジゼル』とか、いわゆるロマンティック・バレエはロマンティック・チュチュという、長いチュチュを着ているんです。それは踊りの型がどちらかといえば、腕とか身体とか上半身の動きだからなんです。身体もまっすぐ立っていなくてちょっと傾いているんです。それが19世紀の終りになってプティパが出てくると、まっすぐ立つようになって、もっと大きな動きができるようになるんですね。そうすると踊りの型も脚を上げたり開いたり、それから回ったりと、より脚の動きをたくさん見せるように変わってきたので、もう短くしちゃいましょうと。まぁある程度、男性サービスの部分もあったんだと思うんですけど(笑)。 加藤 なるほど。 |
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守山 ただ、それでも昔はそんなに脚を上げなかったんですよ。今は全部めくれて中が見えちゃうくらい脚を上げるでしょ? テクニック的にも上がるようになったから。でも昔は中を見せるっていうのはやりすぎ。 加藤 へぇ。 守山 やりすぎというか、下品と思われていたんですよね。ガバーっと見せちゃうのが(笑) |
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守山 それにチュチュ自体も、衣装として本当はそこまで挙(ママ)げることを想定していないんですよ。あんまり上げるとスカートの部分がよれちゃって、それは美しくない。だから新しい作品はスカートがついてない場合が多いですよね。総タイツとかレオタードとか。あとは逆に、今は生地もよくなっているので、踊るときに邪魔にならないしシワにもならなっていうことで、膝下くらいの少し長めのスカートにしている作品もありますね。 加藤 ふーん。 守山 『椿姫』や『ロミオとジュリエット』『マノン』みたいな演劇的な作品だと、ロングではないけど、膝下すこし長めのスカートにしてますね。なので、バレエの衣装は男性にしろ女性にしろ、踊るためにはどうか、見せるためにはどうか、ということが第一ってことですね。 |