バレエタイツ
バレエタイツはクラシックバレエで用いられる重要な衣裳である。それは主要なレパートリーにおいて中世ヨーロッパの登場人物の衣裳として繰り返し使われることで、バレエの演劇空間の中にその存在を定着させた。現在、クラシックなバレエにおいて典型的な役柄を演じるバレリーナのほとんどが薄ピンクのバレエタイツをはく。そこまでタイツがバレエの衣裳としての存在感を強めたのは、踊り手の身体能力の高まりとともに、踊りの構成要素の中で脚の動きが生み出す表情が豊かになり、踊り手の脚線をより舞台の空間の中に鮮やかに映し出すというタイツの視覚的な効果が果たす役割が重要になったからである。
そしてもうひとつ注目すべきタイツの持つ特性は、身体を記号化する機能である。女性用のバレエタイツは肌の色が薄く透ける程度の厚みをもつが、舞台の照明の下では肌の色のばらつきを消すには十分な効果をもつ。男性のはくタイツはさらに厚みを増し、体毛や皮膚の色を完全に覆い隠す。すなわち、バレエタイツは、ダンサーの脚から身体の一部としての特性を削り取って、記号的な対象物へと変換する。観客はそこに純化された幻想の橋頭堡を得て、踊りが指し示す何物かをバレエという特殊なコンテキストの中で再構築することができる。それは、シンプルな線によって人物を描くことで、感情移入しやすい「キャラクター」を創造し、彼らにドラマを演じさせる日本のマンガやアニメーションの技法にも通じる効果である。
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