お正月のおあそび
碓井央
少女とつないでいる手の内側がじんわりと湿ってきていた。ひょっとすると、少女の汗も混じっているかもしれなかった。
一緒に階段を昇りながら、少年は低い声で言った。
「……今年も、するの?」
「うん」
少女は小さくうなずく。
「用意は、してあるから」
これから、ふたりだけの秘密の『お遊び』がはじまる。
1
少女の母親は少年にとっては伯母にあたる。つまりそれぞれの母親が姉妹なのだ。住まいがそれほど離れていないこともあって、以前からこの伯母夫婦の家とは行き来があった。
話は三年前にさかのぼる。
この年の正月に、少年が両親とともに伯母の家をおとずれたとき、少年はいつものように少女の手を引いて、大人たちの宴会から離れ、二階の彼女の部屋に向かった。すでに大人たちはそれが当然と思っていたし、彼も従妹の相手をするのはべつに嫌ではなかった。
この日、少女はフリルやリボンで上品に飾られたピンクのワンピースを着ていた。伯母夫婦と一緒に玄関に出てきたその姿を見て、少年の胸はかすかにざわめいた。
色白で均整の取れた顔立ちの彼女は、もともと可愛らしい女の子ではあったが、これまでとは違い、少年を落ち着かない気分にさせる不思議なムードを漂わせていた。以前よりも背が伸びて、女の子らしい体つきになってきたせいかもしれない。
一緒に部屋に入ると、少年は少女に向かって言った。
「また本でも読んであげようか?」
少女は西洋のお伽話が好きだったので、本棚はそういったたぐいの絵本でいっぱいだった。このコレクションのひとつを読んで聞かせるのが、お相手をするときの定番のひとつなのだ。
「うーん……」
少女は小首をかしげ、少年をじっと見上げていたが、やがて視線が下を向いた。
「どうかした?」
少年が問いかけると、少女はつぶやくように言った。
「お従兄ちゃんの脚って、綺麗」
「え」
少年は、すこしたじろいだ。
自分の脚に視線を落とす。
紺色の半ズボンの下から伸びるそれは、真っ白なタイツに包まれていた。
多少格式張った場に出るとき、この白いタイツをはかされるのは一種の習慣だった。母親が何かそういったことにこだわりがあるようで、とにかく必ずこのかっこうを強いられた。
少年自身は、白いタイツは照れくさかった。女の子のようで嫌だという気分の中に、どきどきと胸が鳴るような興奮が入り混じっているのを意識してしまう。
少女はなおも少年の脚をじっと見つめていたが、ふたたび目を上げて言った。
「ぬいで」
「え……なにを?」
「ズボン、ぬいで」
「な、なんで?」
少年は、思わず一歩後ずさった。
「ぬげばわかるから」
少女は腰をかがめ、少年の半ズボンに指をかける。
「ちょ、ちょっと」
少年は少女の腕を押さえようとしたが、あまり乱暴にするわけにもいかず、そうこうするうちにホックをはずされ、チャックも引きおろされてしまった。
半ズボンが床に落ち、腰から下がタイツだけになった。
「あっ」
少年は、反射的に自分の股間を両手で隠した。
すると、少女は数歩下がると、あらためてうっとりした表情で少年を見つめた。
「ね……こっちに来て」
少女に手を引かれ、部屋の隅に置かれている大きな鏡の前に立った。
「ほうら、見て。王子様みたいでしょ」
たしかに下が白タイツだけになってしまうと、彼が着けている白い襟飾りのついた紺色のブラウス風の服との組み合わせは、まさにお伽話の絵本に描かれているような王子様の姿を思わせた。
実のところ、この服自体、少年の母親の趣味の反映だった。女の子が欲しかった母親は、息子が優しげな目鼻立ちであるのをいいことに、機会あるごとに少女風の服を着せ、髪もうなじが完全に隠れるぐらいに長くさせた。おかげで、顔だけなら誰が見ても女の子そのものという状況だった。
学校ではこの髪型はクラスの男子のからかいの的になっていた。女子たちがガードしてくれるおかげで、かろうじて「いじめ」はまぬがれていたが、それも彼にとってはある意味屈辱的なことではあった。
「お従兄ちゃん」
「え?」
少年はわれに返った。
「すごくすてき」
少女が彼の首にぎゅっと抱きついてきた。
「だ……だめだよ、こんな」
少年は抱きつかれたまま、少女をひきずるようにして床に落ちているズボンを拾い上げようとした。が、少女にさえぎられた。
「待って。いいこと思いついた。あたしも、お姫さまになる」
「なんだって?」
どういう意味なのか、少年には見当がつかなかった。
「そういうお洋服があるの」
少女が彼の手を引いた。
「取りに行くから、手つだって」
仕方なく、一緒に部屋の外に出る。
「どこ行くの?」
「しっ」
少女は指を口にあてた。
「内緒なんだから、静かにして」
「あ……うん」
手をつないだまま、そろそろと廊下を移動し、隣の部屋に入る。
板張りの床、奥には大きなベッド、そばに椅子がふたつとテーブル、他には本棚やタンス類が置かれていた。
おそらく少女の両親の部屋なのだろう。
「あそこにそのお洋服があるから」
少女は木目の入った焦茶色の洋服ダンスの上に置かれた箱を指さした。
ボール紙でできているらしい蓋つきの白い箱で、服を入れるものにしては少々大きめだった。
「イスもってきて、あれとって」
少年は言われた通り、椅子をひきずってきてその上に乗り、洋服ダンスから箱を慎重にひきずり降ろした。
箱を抱えてふたたび少女の部屋にもどると、少女はややきつい口調で少年に言った。
「着がえるとこ、ゼッタイ見ちゃだめよ」
「うん」
少年はおとなしくベッドの端に座り、目を閉じて待った。
なにやら衣擦れの音が続いたあと、すこし静かになった。
「……いいの?」
「もうちょっと待って。これ、けっこうタイヘンなんだから」
少年がいいかげん待ちくたびれそうになったとき、「いいよ」と声がした。
顔をあげ、眼をあける。
「……!」
少年は、まばたきするのも忘れて変身を終えた少女を見つめた。
そこには純白の可憐な衣裳をまとった妖精が立っていた。まるで、彼女の周りの空気の色が変わったようにさえ思えた。
「ユリコ、バレエのお稽古してるのよ。これはチュチュっていうの」
少女は白いふわふわの薄生地が何枚も重なった短いスカートの裾を軽く持ち上げてみせた。
「そ……そう」
少年は、バレエの衣裳を間近で見るのはこれが初めてだった。
首から胸元そして両肩と腕をあらわにしてしまっている胴の部分は、少女のわずかな胸のふくらみと腰のくびれをそのままに描き出していてる。銀色の刺繍やレースで飾られたそれは、それこそお姫さまのための高級な下着のようだった。
下着ではないことを示しているのは、独特の形をした短いスカートだ。その下からは半透明の白いタイツに包まれた脚がほっそりと伸び、鈍く輝くサーモンピンクのトゥ・シューズへとたどりつく。
「お従兄ちゃん、どう?」
少女は少年のそばにゆっくりと歩み寄ってきて、ささやきかける。
「ユリコ、きれい?」
「う……うん」
少年は気圧されるようにうなずいた。
「きれいだ」
「あのね、お従兄ちゃん」
少女は甘えるような声を出した。
「バレエって、王子様とお姫さまがいっしょに踊るのよ。知ってる?」
「うーん……よく知らない」
バレエというと、ふわふわしたスカートをはいた女の子が、つま先立ちでくるくると回ったりしながら踊るもの、ぐらいのイメージしかない。
「バレエはね、踊りだけじゃないの。ちゃんとお話があるのよ」
「ふうん」
「主役はお姫様で、お姫様は王子様と恋をするの。そういうお話が多いのよ」
「そうなんだ」
「だから、王子様は男の子が踊るんだけど……ユリコの行ってるお教室、女の子ばっかりなの。だから王子様がいないの」
少女はすこし寂しそうに言った。
「だからお従兄ちゃん、一緒に踊って。王子様になって」
「踊るったって……ぼく、なにも知らないよ」
「いいのよ、カッコだけで。おそばで、ここ、ここんところ抱っこしてくれればいいの」
少女は自分のわき腹を指先で示した。
少年はしかたなく彼女の腰を脇から抱え込むようにした。すると少女は爪先立ちで脚を上げて、ポーズをとってみせた。
「あ、いい感じ。ひとりじゃこんなことできないもん」
少女はにこにこと少年の顔を見た。
「もうちょっとこうしてていい?」
「あ、うん」
少女は思いつくままさまざまなポーズをとっては悦に入る。
そんな彼女の相手をつとめながら、少年は何か奇妙な懐かしさのようなものを感じた。ずいぶん前からこんなことをしていたような、そんな気さえしたのだ。
なぜそう感じるのか、それは彼自身にもよく分からなかった。
2
次の年の正月、ふたりはまた同じような状況にいた。2階の部屋で、少女はチュチュに着替え、少年はまた白タイツをはいたままで半ズボンを脱がされた。
「ママにお願いしてビデオ買ってもらったの。バレエのね」
少女は言った。
「そしたらね、王子様とお姫様がラブラブに踊ってた」
「ふうん」
あいかわらずバレエに関する知識がほとんどない少年には、少女の説明はよく分からない。
すると、少女は本棚から雑誌らしきものをひっぱりだしてきて、少年の目の前にひろげて見せた。
「こういう感じよ」
少年はその開かれたページに載っている写真を見て、すこしぎくりとした。
少女の言うとおり、そこには華やかな衣裳をまとった男女が美しい身体をからみあわせるようにして踊っている姿が写っていた。
「これはね、白鳥の湖っていうバレエなの。なんだかいろんなヒトがいっぱい踊っててキレイなんだけど、やっぱり王子様とお姫様がラブラブしてるところがいちばんいいのよ」
写真の中の白いチュチュをまとったお姫様は、ほっそりとした脚の一方を高々と上げ、恍惚とした表情を浮かべながらポーズをとっている。その背後で彼女の腰を王子が抱きしめるように支えていた。
すると、少女が小声で言った。
「おとなのおちんちんって、おっきいね」
少年はぎょっとして少女の顔をみた。
たしかに彼の目からみてもこの王子のタイツの中で盛り上がっているものはかなり大きかった。
すると、さらに少女は写真を指差しながら言った。
「こんなことすると、赤ちゃんができちゃうかもね」
「はあっ?」
少年は仰天した。そんな言葉が少女の口から飛び出すとは予想もしていなかった。
すると少女はきょとんとした顔になった。
「ちがうの?」
「いや、ぼぼぼぼくもよくわからないけど」
少年はしどろもどろになった。
「あたし学校のお友達にきいたの」
少女は無邪気に微笑む。
「なかよしの男の人と女の人が、おちんちんとお尻をくっつけると、とってもキモチいいんだって。それで、うーんとキモチよくなると赤ちゃんができるんだって」
「そ、そうなの?」
「ビデオ見てたらね、そういう感じのところ何回もあるのよ」
少女は興奮気味に言う。
「王子様がお姫様を抱っこしながら踊るでしょ?そうすると、王子様のおちんちんがお姫様のお尻くっつきそうになってるもん。すんごくラブラブな感じよー」
「…………」
「きっと、アレがすごくキモチがいいのよね」
絶句してしまった少年を尻目に、少女の解説は続いた。
「だって王子様もお姫様も泣きそうな顔になってたりするもん。ラブラブしててキモチよくなってくると、泣きそうな顔になるんだってさ」
少年は当惑しつつも考えた。
彼女の誤解をどうやって解けばいいのか。
どう説明してやればいいのか。
いや、そもそも、そんなことを説明なんてしていいんだろうか……。
考えあぐねているところへ、痛烈な追い打ちがきた。
「ユリコもお従兄ちゃんとラブラブしてみたいな。ね、してみよ?」
「あ……あのね、ユリコちゃん」
「だいじょうぶだよ。ユリコこどもだから、まだ赤ちゃんできないよ」
「いや、そういうことじゃなくてね……」
少年は困りはてた。
すると、少女はふいに泣き出しそうな顔になった。
「お従兄ちゃん……ユリコのこと、きらい?」
少年はあわてて言った。
「いや、そんなことないよ。それは違うよ」
すると、少女はぱっと満面の笑みを浮かべた。
「じゃ、ラブラブしよ?」
「あ……う……」
少年にはもう抵抗する余地はなかった。
「もうちょっと下……」
少女はとりあえず踊りのような動きをしてみせてはいたが、どちらかといえば、お互いのからだをただひたすらにからみ合わせていると言った方が近かった。
「王子様のあそこがお尻にくっつくの。そう……そこらへんかな?」
少年はすこし脚を開き、腰を落とし気味にして、彼女の注文に応えようとしていた。
さすがに身長に差があるので、ふつうに立ったままでは、少女がせいいっぱい爪先立ちしてポーズをとっても、高さがうまく合わない。
そうこうしているうちに、少年のものは次第にふくらみ、硬くなりはじめていた。少女のやわらかなお尻に何度も触れていたからだろう。
「……あれ?」
少女は不思議そうな顔で少年を振り返った。彼女もその異変に気づいたらしい。
「あ……」
少年は頬を赤くした。
「お従兄ちゃんの……おっきくなってる」
「ご、ごめん」
「ううん」
少女も頬を赤くしてうつむいた。
「こういうことするときは、大きくなるって聞いたこと、ある。でも、見るの初めてだったから」
「…………」
「それって、キモチいいってことなの?でも、ユリコのほうはまだキモチよくならない……」
「あ、あのね」
少年はためらいを感じたが、思い切って言った。
「ただくっつけるだけじゃ、ダメなんだよ」
「そうなの? でも、それじゃどうしたらいいの?」
少女の内部へそれを入れる必要がある、とはさすがに言えなかった。
「こ、こするんだよ」
「……こするの?」
少女はすこしびっくりしたような顔をした。
「うん。ユリコちゃんにも気持ちよくなるためのものがあるんだよ。そこをこすればいい」
女性器の仕組みについては少年にもある程度の知識があった。割れ目の端に小さな突起があり、そこがとても感じやすいということも知っていた。
「じゃあ、やってみて」
「うん」
試行錯誤の末、ようやく彼は少女のそこを自身の尖端でとらえた。衣裳とタイツの生地に隔てられてはいたが、力をかけるとわずかに軟らかい肉が開くような感触があった。
少年の腰がほとんど本能的にぐっと動き、そこを突いた。
「んっ」
少女が、かすかに呻きを洩らした。
少年はあわてて力をゆるめた。
「い……痛かった?」
「ううん、だいじょうぶ。もういっぺん、してみて」
少年はもう一度、できるだけ優しく突いてみた。
今度は少女は、びくん、と肩をふるわせた。
おそらく、例の突起に触れたのだ。割れ目に沿って、そこをこすってやればいいだろう。
ゆっくりとリズミカルに、腰を動かし始める。
動きを重ねてゆくうちに、下腹にせつない感覚が集まってきた。少年のタイツはさらに膨れ、その尖端は矢尻のようにとがった。
いつのまにか、息が荒くなりはじめていた。
少女もまた、目を閉じたままわずかに口をあけ、息をしていた。その表情は彼女自身が言っていた通り、まるで泣き笑いをしているようにも見えた。
ふと少年は、すこし離れた場所にある姿見に自分たちが映っているのに気づいた。それは、ついさっきバレエ雑誌で見た、王子と舞姫の美しい姿に似てはいた。ただ、すこしだけ違っていたのは、白いタイツに包まれた王子のその部分が膨れ上がり、その尖端が後ろから舞姫の股間に浅く食い込んでいる、ということだった。
鏡の中のその情景は、ロマンティックなムードに包まれてはいても、なにかひどく生々しい感じがした。
『これって……どういうことなんだろう?』
『いったい、何をしているんだろう?』
だが、そんなぼんやりとした思考は、さらに湧き上がってくる快い感覚に溶け込みはじめていた。
なまめかしいチュチュに包まれた少女の柔らかなからだ。そして、お互いのその部分がこすれあう感触。それはただひたすらに甘く、そして心地良かった。
ついに少女は立っていられなくなり、床に手をつき、膝を折った。少年もそれに合わせて両膝をつく姿勢になった。それでもなお、少女は踊りのポーズをとっているかのように、片脚を上げ続けていた。少年はその太ももを一方の腕で抱え込んだ。
目の前の姿見は、揺れるように動き続けるふたりを映し出していた。
ふわふわと波打つ、半透明の白いスカートの向こう側に、頬を桃色に染め、陶然とした表情で腰を動かしている王子がいた。彼が自分自身だとは、少年にはとても思えなかった。
けれど、その一方で実はこれが自分の本当の姿なのかもしれない、とも感じていた。
タイツの中では、彼の亀頭をつつんでいた柔らかな皮の先がすこし剥けはじめていた。限界近くまでふくれあがったために、中身が押し出されてきたのだ。
それが下着とこすれるたびに、かすかな痛みとなって快感のパルスに入り混じる。
少女が声をあげた。
「あ……あ」
むきだしの少女の小さな肩がひくひくと動く。
少年は、ふたりのだいじなものが接れ合っているその部分を見た。
白タイツに包まれた彼の太ももはチュチュの下で少女の腰にぴったりとくっついている。その間に浮き出ている突起が、フリルで愛らしく縁取られた白い股間の中心に食い込み、削るように動いていた。
「は…あ…はあっ」
少女の息がさらに荒くなる。
次第に、触れ合っている部分が湿り気を帯びた音を立て始める。
「お…にいちゃん……」
荒い息の下、少女が呼びかけてくる。
「なに…?」
「き…もち…いい?」
「うん……い…い」
下腹から突き上げてくる快さに、少年は何か「限界」のようなものを感じた。
「あ…たし…も……あっ」
少女はまた呻き声をあげ、身をよじる。
少年は、人前で「おもらし」をしてしまいそうになったときと同じ、羞恥と恐怖に襲われた。
だが、もっと激しい快感のうねりがそれをまとめて押し流した。
「うっ!」
「うぁっ!」
二人はほとんど同時に声を出した。
瞬間、やるせない感覚が少年の下腹で暴れまわり、背筋を駆け抜けていった。
精液こそ出なかったが、それが彼にとって初めてのオーガズムだった。
3
従姉妹との甘美な交わりを体験して以来、少年はしばしば自分のものを慰めるようになった。
夜、自分のベッドの中でひっそりと行為をはじめると、きまって頭の中に浮かぶのは、白いタイツをはいた王子に犯されるチュチュを着けた少女の姿だった。そしてもちろん、その王子は恥ずかしいばかりに美化された少年自身だった。
自分はすこしおかしい、と少年は思った。
男女のそういった行為は、ふつうは全裸でするものなのだろうと彼は想像していた。そうした写真や映像をじかに見る機会があったわけではないが、たぶんそうに違いないと思っていた。
そう思いつつも、自分を慰めるときには王子に犯される少女バレリーナのイメージが湧き出てしまうのだった。
春に進級したとき、少年は新しく配布された音楽の教科書を見てどきりとした。センターカラーのページに、代表的なバレエ作品の例として「白鳥の湖」が写真つきで紹介されていたのだ。その中でもいちばん大きな写真は、例の王子と白鳥姫の踊りのシーンだった。
その写真でも、かつて少女の部屋で見たものと同様、純白のチュチュをまとい片脚を上げてポーズをとっているバレリーナを王子が支えていた。
脚を上げたバレリーナの半透明のスカートは斜めにずり上がり、その奥に白い股間があらわになっていた。
それを見つめているだけで、少年は自分のものが硬くなってゆくのを感じた。
以後彼は、自分を慰めるときにはその写真を使うようになった。
写真という「足場」を得たことで、頭の中に映し出される妄想のイメージはより鮮明になった。手を動かして自分のものを刺激しているとき、少年の視線はバレリーナの白い股間に固定されていた。だが、「視えている」のはその写真の像だけではなく、それを土台にして精巧に組み上げられた、美しい男女の営みのイメージだった。
授業中にぼんやりしているときなどに、突如としてこの妄想が湧き起こることがあった。するとあっというまに彼のものが硬くなり、ズボンを生地を突っ張らせてしまう。そんなとき、少年は人知れず必死にそれを静めようと努力した。だが、休み時間になってもおさまらないので、席を立たずにいることもしばしばあった。
その年の夏休み、少年にはじめての射精がおとずれた。
いつものように、夜、ベッドの上に音楽の教科書を広げて自分のものをこすっているうちに、これまでとはちがう、なにか熱い塊の圧力が下腹の底から尖端へと向かってきた。
瞬間、くぐもった低い音が喉の奥から洩れた。
快感の爆発が終わったあと、写真の上に数滴の白く濁ったしずくが落ちているのを見て、少年は冷え冷えとした気持ちになった。だが、この行為をやめることはできないだろう、ということも分かっていた。
教科書のセンターページは綴じがゆるくなり、はずれそうになってきていた。
翌年の正月。
いつもとは逆に伯母夫婦が少年の家にやってきた。
少年は、今回は半ズボンにごく普通の白いソックスをはいていた。
よその家にお出かけをするわけではないし、タイツは女の子みたいでもういやだ、と母親に言ったのだ。
けれども、実は少年の心の中には葛藤があった。本当は、白いタイツをはいて、少女とともにあの「おあそび」をやりたい、という願望がふくれあがっていた。けれども、そんなことは誰にも言えるはずもない。そのいらだちが、行動としては逆方向に作用したのだ。
いつものように少年は少女とともに宴席を離れ、自分の部屋に入った。
「今日はなんだか男の子した服だね」
少女は少年に向かって言った。
「そうかな」
「うん。大人っぽい感じ?」
少年はYシャツの上にエンジ色のセーターを着ていた。いつもの「お出かけ」用の服ではない。
「わたしもね、チュチュはさすがに持って来れなかったから、せめてそれっぽい服にしたんだけど、どう?」
少女はくるっと身体を回して見せた。
その白いワンピースは胴を絞ってあり、下はひだが入ったミニスカートのようになっていた。裾がふわっと浮き上がると、半透明の白いストッキングにつつまれた太ももがあらわになった。
「ど、どうって言われても……」
少年は頬を赤らめた。
その服はチュチュとはもちろん形は違っていたけれども、全体の印象は似たようなムードではあった。
「でも、トゥシューズは持ってきたよ」
「……なんで?」
「もちろん、お従兄ちゃんと踊るために」
「踊る……」
「そう。踊るの」
少女はうなずいた。
「…………」
「ところで、この部屋、なんか変わった匂いがするね」
「えっ?」
「お従兄ちゃんの匂いって感じかなあ……わたしの部屋とかとはちがう匂いがする」
頬がさらに熱くなるのを感じる。
まさか、行為を繰り返したために部屋にしみついてしまった匂いなのだろうか。
「べつにいやな匂いってわけじゃないよ?」
少女はくすっと笑った。そして、少年のそばに歩み寄って付け加える。
「わたしの好きな、お従兄ちゃんの匂いだから」
「…………」
少年は、胸の動悸を感じながら、少女の顔を見つめた。
「だけど、王子様じゃなきゃいやよ。わたしは王子様と踊るの」
「……どういう意味だい」
「タイツ、あるんでしょ? とってきてよ」
「え……」
「王子様は白タイツじゃないとダメ。アレじゃないと、その気にならない」
少年はため息をついた。
「あれは、恥ずかしいんだよ……」
「恥ずかしいだけ?」
少女は、顔を近づけてきて、ささやいた。
「ほんとは、気持ちいいんでしょ?」
「な……なに言ってるんだよ」
少年は少女から身体を引き離した。
「わたし、きれいな服着ると気持ちいいよ? 短いスカートも、すごく気持ちいい。それと同じ。男の子もきれいになると気持ちいいんだよ」
「そんなこと……」
「とにかくとってきて。命令してあげる。それならいいでしょ」
見抜かれてしまっている、と少年は思った。他人からの命令ならば自分自身にいいわけできるでしょう、と言っているに等しかった。
「茶の間のタンスにあると思うけど……その隣の部屋にパパやママがいるんだよ?」
「大丈夫。ひとんちにドロボーに入るより楽勝じゃない」
しかたなく少年は忍び足で茶の間に向かい、タンスの中からタイツを見つけるとすばやく帰ってきた。
「……向こう、むいてて」
少年は少女にそう言って、ズボンとソックスを脱ぎ、慎重な手つきでタイツをはいた。ぴったりとしたその感触、そして肌の色を塗りつぶしてしまう雪のようなタイツの白さが、まるで自分の脚が別のものになった気分にさせる。
「いいよ」
顔を上げた少女は、ちょっと伏し目がちになって言った。
「お従兄ちゃんは、どんな風に踊りたい?」
「どんな風にって?」
「もっとラクなやりかたでもいいよ」
そう言いながら、少女はちらりとベッドを見た。
「たとえば……この上で、とか」
少年は胸が高鳴るのを感じた。
「……いいの?」
「もちろん、『踊る』だけだよ。全部、するんじゃないからね」
少女は、顔を赤らめながら言う。
「分かるよね」
「……うん」
少年はぎこちなくうなずいた。
少女の荒い息が少年の首筋に触れる。
ベッドの上で彼に組み伏せられ、責めたてられている少女は、トゥシューズをはいた両脚を、いつのまにか空中にさし上げていた。まっすぐに伸ばされたそれがときにひくひくと震え、あるいはシューズをはいた足の甲がクッと弓のように反った。
少年が腰を前後に動かし、白いタイツの内側で膨張している彼のものが少女の股間をこする。すると、そのたびに彼女は小さい呻き声をもらした。服を着けたままとはいえ、お互いのものをこすりあえば十分過ぎるほどの快感が生まれた。
「ねえ……お従兄ちゃん……もっと……つよくして」
少女は息を吐きながら鼻にかかったような声で言った。
「だめだよ……ユリコちゃん。これ以上すると、ぼく……」
「……出ちゃう?」
「う……うん」
やっぱり、知っていたのだ。少年は、頬を赤く染めた少女の顔を見つめながら思った。
「そういうときはね……お尻を……締めるんだって」
「締める?」
「お腹とお尻に……力を入れて」
少年は言われたとおりにしてみた。すると、たしかにまだ耐えられるような気がした。
「ユリコも……もうちょっと……だから」
少女の股間と彼の尖端は、おたがいの隠されている部分から滲み出す粘液ですっかり濡れていた。
「お願い、もう少し……つよく」
少女に鼻にかかったような声を出した。
少年は、さらにお尻に力を込めて、腰を動かし続けた。
「お従兄ちゃん、これあげる」
少年が下着を替え、ズボンとソックスをはき終えると、少女は封筒を彼に差し出した。
「なんだい」
「バレエ雑誌の切り抜き。
写真の」
「どうしてそんなの……」
「いるんじゃないかなって、思っただけ」
少女は小首を傾げて見せた。
「男の子って、いろいろあるんだって聞いたの」
少年は頬をあかくした。
「いろいろってなんだよ」
「いいから、好きにして。ね?」
伯母夫婦と少女が帰ったあと、少年は自分の部屋で切り抜き写真を出してみた。
二十枚ほどの切り抜きは、どれも王子とバレリーナが一緒に踊っているものだった。
少年は、小さく折り畳まれた紙が入っているのに気づいた。
開いてみると、少女の字が書いてあった。
『おにいちゃんへ あたしがラブラブだなーとおもったのをきりぬいてあります。これみて、きもちのよくなること、してください。あたしも、おにいちゃんのことをおもいだすと、きもちのよくなること、しちゃいます。ぜんぜんはずかしいことじゃないって、あたしのおともだちもいってました。じゃあまたね。 ユリコ』
少年は読み終えると、手紙を念入りにこなごなに引き裂いて、ゴミ箱に捨てた。
写真は机の引き出しの奥のほうに隠した。
結局、その後、少年はその写真をしばしば「利用」した。
4
そしていま。
この密やかな遊びがはじまってから、三年目の正月。
ふたたび少年は、二階の少女の部屋にいる。
今年は、少女の部屋にはモニターとビデオがあった。
茶の間にあったものを新品を買い替えたので、おさがりが彼女のものになったらしい。
「見るのはハイライトのとこだけよ。そこがカンジンのとこなんだから」
「その……ラブラブってやつ?」
「そーよ」
少女は力をこめて言った。
「アレをよおーく分かってもらわなくっちゃ」
少女は少年の知識を深めるためにちゃんとバレエを観ろというのだ。
ビデオがセットされ、画面が現れた。
再生されたのは、「白鳥の湖」
の第二幕、王子と白鳥姫オデットのグラン・アダージォだった。
湖のほとりで出会った二人が、お互いの恋心を確かめ合う美しい踊りである。
「恥ずかしがらないでちゃんと見るのよ」
「はい……」
だが、少年にとっては、その踊りは予想以上に濃厚だった。
おもわず目をそらしてしまいたくなるようなシーンの連続だった。
身体をからみあわせるようにして踊る王子と白鳥姫。
それは、まさに成熟した男女のラブシーンそのものだった。
チュチュの下で変幻自在に動くバレリーナの脚。
まるで自分の下半身を観る者にアピールしているかのような印象さえあった。
「ラブラブでしょ?」
少女は少年にしなだれかかり、その肩にあごを乗せて言った。
「え……うん」
「すんごいエッチでしょ?」
「だから、そういう言い方するなよ」
だが、少年のものはいつのまにかふくらみ、硬くなっていた。
グラン・アダージォのシーンが終わると、少女はビデオの再生をとめて言った。
「どうだった?」
「う……うん」
「ウンウンじゃわからないわよ」
「だ、だって……」
「ロマンチックよねー。あたし、こういうのにあこがれてお稽古してるの。ハンサムな王子様に抱きしめられてラブラブするのよ。もう考えただけでイッちゃいそう」
「ちょ、ちょっと」
「なにへんなカオしてるのよ。あたしだって、男の人と女の人がどんなことするかって、もう分かってる。でも、あたしそういうのはいや。キレイじゃない」
言いながら少女は頬を染めていった。そういったことを想像してしまったらしい。
「とにかく、そういうのはヤなの。素っ裸でそんなことやるんじゃ、まるでケモノじゃない」
「人間だって、ケモノの一種だよ。祖先はサルなんだから」
「サルはサルよ。人間とは違うわ」
少女はきっぱりと言った。
「あたしはね……もっと人間らしく、ロマンチックに、気持ちよくなりたいの」
「…………」
「気持ちよくっていったって、あの、オシリのへんからくるアレだけじゃないのよ」
少女は頬を赤くしたまま、力説する。
「心よ、そう、心でよくなるの。そのためにはイメージが大事なのよ。だからビデオ見てもらったの。分かるでしょ?」
「分かるけどさ、そんなこと言ってたら、ホントに結婚したときどうすんだ?」
「いいの、あたし結婚しない。こどもなんていらない、つくんない」
「おいおい」
「ハタチ過ぎたら死ぬもん。自分で死ぬ」
「ほんとかよ」
「もちろん。だから、めいっぱいロマンチックに生きるの。そんで燃えつきるの」
「じゃ、たとえばぼくが死なないでくれって泣いて頼んだらどうする?」
「……それって本気?」
「本気さ。ユリコちゃんが本気で自殺するつもりなら、なにがなんでもとめるさ」
「ふーん、まあ、少しは考えてみようかな」
「考えるだけかい」
「お従兄ちゃんだから、考えるのよ。ほかの誰が言ったって、一秒だって考えてやんない。パパやママでもね」
「そうか」
「……ねえ、あたし、したいの」
少女の濡れたような瞳を見て、少年はどきりとする。
「ね……着替えてよ。白タイツの王子様に変身して」
「でも……見りゃわかるだろうけど、今年はもうタイツはやめたんだ。もうかっこ悪からって、母さんに言ったんだ」
すると、少女はにやりと笑った。
「だいじょうぶ。ちゃんと考えてあるのよ」
「なんだよ」
「お従兄ちゃん用のバレエタイツ、買ってあるの」
「え……」
「おこづかいをはたいて買ったのよ」
少女は小型のタンスのひきだしを開け、包みを取り出して少年に突きつけた。
「高かったのよ……絶対、いやとは言わせないんだから」
「あのさ、ちょっと」
「だーめ。あたしの王子様は、裏切らないわよね?」
「ユリコちゃん……」
「あんなビデオぐらいで真っ赤になっちゃってさ」
少女は少年の目の前に顔を寄せてきて、ささやいた。
「お従兄ちゃんだって、ほんとは王子様になりたいんでしょ?」
「!」
その一言は、少年にとってはショックだった。
「……こわいんでしょ?」
「な、なにが」
「ホンモノの王子様になるのがこわいのよ。『ごっこ』や『お遊び』のうちは『こどものすること』だけど、そういう言いわけができなくなるもんね」
「ホンモノになんてなれやしないよ。日本は民主主義の国なんだから」
「そんなコト言ってるんじゃないの。たとえばね、バレエの王子様は、あれはホンモノよ。舞台で踊ってるときはホンモノなの。観てる人は王子様だと思って観てるし、踊ってる本人だって王子様になりきってるのよ。『なりきる』と『なる』のはおんなじことなの」
「……へ理屈だよ」
「お従兄ちゃんは、あたしとおんなじ。あたしには分かる。だけど、あたしみたいなお馬鹿さんじゃないから、それを言うのがこわいんだわ。だから代わりに言ってあげる。お従兄ちゃんは王子様になりたいのよ」
「……どういうことさ」
「あたし思うんだけどね」
少女は指をあごの下にあてる。
「王子様っていうのはね……お姫様のことだけ考えてればいい立場なのよ。王様になっちゃうと、いろんなことを考えなきゃならないでしょ。でも、王子様ってのはとにかくお姫様と一緒に恋をすればいいの。きれいなかっこうをしてお姫様と深く愛し合うの」
「…………」
「いいでしょ、そういうのって。ね? あこがれるでしょ?」
「そんなこと、ないよ……それは違うよ」
「違わない。ぜえったい、違わない。世界中のほかの誰が分からなくっても、あたしには分かってる。分かってるのがあたしだけじゃだめ?」
「お、おかしいんだよ、そんなこと……そんな女の子みたいなこと考えるオトコなんて、どこにもいないよ」
刹那、少年の脳裏に暗い記憶が飛び交う。
投げつけられた、辱めの言葉の数々。
『オトコノクセニ』
『オンナミタイナカオ、シヤガッテ』
『カミナンカ、ノバシテヤガル』
『キンタマナンカネエンダヨ、アイツニハ』
「いるの。ここにいるの。お従兄ちゃんは男の子。あたしをお姫様にしてくれる男の子。そして、王子様になりたい男の子。ほら、全然おかしくないじゃない?」
「ぼくは……」
少年は動悸が激しくなるのを感じた。
「あたしはね、あたしはお姫様になりたいの。夢の世界の、おとぎの国のお姫様になりたいの。お従兄ちゃんは?お従兄ちゃんは何になりたいの?言って。あたしにだけでもいいの」
「ぼくは……ぼくは」
「言って。お願い、言って」
少女は少年の襟首をつかんだ。
「言って。言って!」
最後の留め金が、はずれた。
少年はかすかに声をふるわせながら、低く言った。
「ぼくは……王子様になりたい。おとぎの国の王子様になって、お姫様と愛し合いたい」
5
半ズボンとソックスを脱いで白いバレエタイツをはくのにさほど時間はかからなかった。
目を閉じて少女の着替えを待っているあいだ、少年の心は不思議に落ち着いていた。
やがて、少女の声がした。
「いいよ」
少年は目を開き、声のしたほうを向いた。
純白のクラシック・チュチュ。半透明の白タイツにピンクのトゥ・シューズ。わずかにふくらみはじめた乳房が、胸の中央に浅い谷間をかたちづくっている。そして、チュチュの下から伸びる脚線はより柔らかに、女の子らしくなっていた。
お互いに、しばらく無言のまま見つめ合った。
あとは、おたがいに言葉を交わさない……そういうルールになっていた。
今、ここは言葉のない世界なのだ。
少女は、静かに少年に近づき、その胸の中に倒れ込むようにしがみついた。
お互いの動悸だけが耳のなかに響いた。
少年の胸の中に、かつてないほどの強い想いが湧き出ていた。
欲望とも愛情とも違う、ひたすらに置き去りにされていた満たされぬ想い。
少年の右手が動いた。
まるで自分の手ではないような動きだ、思った。
少年の指が少女のあごをそっとつかみ、引き寄せた。
少女は一瞬、瞳を大きくしたが、かすかな笑みを浮かべると、まぶたを閉じた。
「むう……上は静かだな」
鼻を赤くした少女の父親が天井を見上げて言った。
「タカヒロちゃん大人しいから、ユリコの相手にはちょうどいいわよね」
少女の母親が笑う。
「助かるわ」
「ちょっと大人しすぎてねえ……どうも頼りない感じもするんだが」
少年の父親は杯の中身を乾した。
「あたしのせいだって言うんでしょー、どうせ」
少年の母親はとろんとした眼をして言う。
「女の子みたいに育っちゃったって」
「そんなことは言ってない」
「ユリコがねえ、あたしは絶対結婚しない、とかぬかしよるんですよ」
と少女の父親。
「でも、お従兄ちゃんなら、考えるかなとも言っててね。わたしはとりあえずそれに賭けとるんです」
「従兄妹どうしじゃ血が濃すぎやせんですか」
と少年の父親。
「いやいや、もうこの際そんなことは。タカヒロ君さえよければ、リボンをかけてでもお渡ししたいですな」
「そうよねえ。いかず後家だけは勘弁してもらいたいもの」
笑い声が響く。
レースのカーテンの隙間からさし込む冬の柔らかな陽射しが、絨毯の上で身体を重ね合わせ、ひそやかにうごめく少年と少女の身体を照らし出す。
少年は、ふわふわのチュチュの襞に囲まれた少女のお尻に浅く股間を挿しいれ、腰を前後に動かしていた。
少女は耳たぶまで赤く染めていた。
ときにため息を洩らし、あるいは背筋をかすかにふるわせて声を上げた。
少女なりの歓びを得ていることは、その泣き笑いに似た表情で知れた。
少年自身も快感を得てはいたが、むしろ少女と身体がふれあう感触、そして、文字通りの「お姫様」を征服しつつあるという心地よさが彼の心を満たしていた。
わだかまっていた想いが、今こそ解き放たれる。
歓びの頂へと向かう自分を予感しながら、少年は少女への愛撫を続けるのだった。
---END---
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