火星
Mars

●火星の観察
火星は地球のすぐ外側をまわっている「外惑星」です。約2年で太陽の周りを公転して
いるので地球から見る火星は、星空の中をどんどん移動しているように見えます。
外惑星が地球にもっとも接近する時を「衝(しょう)」逆に太陽の反対側に位置する時を
「合(ごう)」と言っています。言うまでもなく衝の時期が、外惑星を観察する好機で、距離
が近いので表面の様子まで観察できるほか、ほぼ一晩中夜空に見えているので好都合
です。 衝になってから次の衝までの期間のことを、「会合周期」と言いますが、火星の場
合は約780日です。
火星は岩石で出来た小さな惑星で、いくつかの点で地球と似ています。たとえば火星に一日は
24時間で、地球と似た季節のパターンがあり、氷を抱いた極冠があることなどが、共通してい
ます。しかし大きな相違点もあります。火星の大気温度は零度以上になることはほとんどなく、
希薄で酸素はほとんどありません。赤色の砂漠で表面が覆われていることから、「赤い惑星」と
呼ばれています。

●大気と気候
 火星の大気のほとんどは二酸化炭素です。あまりにも希薄なため、表面付近の気圧は
地球の1パーセントにも満たない状態です。気温は通常零度を大きく下回っていて、冬には
大気が凍結して、一年中氷の張る極冠の上に、二酸化炭素の凍結した、ドライアイスの層が
出来ます。地球からは特に極冠の付近で、朝靄や大気上層部の雲を見ることが出来ます。
年間を通して局地的な砂嵐が起きますが、火星が太陽にもっとも接近したとき、その温度と
風速が最大となって、砂嵐は火星全体を覆い尽くします。

大気の組成
二酸化炭素 95.3%
窒素  2.7%
アルゴン  1.6%
酸素及び一酸化炭素  0.2%

●火星の衛星
 火星にはフォボスとダイモスという、二つの小さな衛星があります。その平均直径は
それぞれ22kmと12kmです。 どちらも少し変則的な形をしていて、火星の引力によって
火星の軌道内に引き込まれた、小惑星ではないかと、考えられています。
フォボスは火星の自転周期よりも、わずかにはやく公転しているので、火星から見ると
フォボスは西から昇って東に沈むように見えます。この二つの衛星は暗すぎるため、
地球からは大型の望遠鏡を使わないと、観察することが出来ません。宇宙探査機が
撮影した画像によって、両衛星ともにたくさんの、クレーターがあることが解りました。

●地形と地質
 火星の南半球は主に高地で占められていて、隕石によるクレーターが無数にあります。
一方北半球は平坦な地形が多くなっています。巨大な火山がいくつかあり、もっとも知ら
れているのがオリンポス山です。すそ野の直径が600km、標高は27000m、白い雲に
覆われていることが多いようです。この様子は、地球からも望遠鏡を使って観察することが
出来ます。もう一つ壮大な光景は峡谷で、マリネス峡谷は長さが4000kmあり、火星の
周囲の長さの五分の1を占めています。
 火星の表面は岩石をばらまいた砂漠のようで、酸化鉄のために赤さび色をしています。
地下数千メートルの深さまで、凍結していて、気候が今よりも温暖だった昔に、水が地表を
流れていたと事示す、形跡があります。