》恋い多き大神ゼウスの化身《
大神ゼウスは、野原で花を摘んでいたフェニキアの美しい王女
エウローペに一目惚れしてしまいました。春のある日、エウロー
ペは侍女たちと野原に出かけました。その様子を見ていたゼウス
は純白のおうしに変身して、エウローペに近づきました。
 はじめは驚いたエウローペでしたが、穏やかな物腰と優しい眼
差しに、すっかり心を許してしまいました。そして、美しい牡牛に興
味を覚えたエウローペは、そっと乗ってみました。 侍女達は心配
しましたが、牡牛はエウローペを乗せたまま野原の中を、ゆっくりと
歩いて行きました。そして、海辺まで来たところで急に走り出し、海
の中へ入って行きました。 エウローペは降りる事もできず、悲鳴を
上げながらもしがみついていましたが、 「あなたは、いったい誰な
の?」と牡牛に問いかけました。すると牡牛は澄んだ声で答えました。
「私は神々の王ゼウスだ。心配する事はない。愛ゆえにおまえを迎
えに来たのだ。」
 ゼウスはクレタ島にエウローペをつれて行き、そして結婚しました。
 ゼウスは新しい土地に新妻の名前を付けてエウローペ(ヨーロッパ
と呼びました。そして、自分が変身した牡牛の姿をおうし座として、夜
空に上げたという事です。

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