かんむり座の神話

●牛魔（ぎゅうま）退治　【神話】

地中海の南部クレーテ島の王ミノースは、后が、頭が牛体が人間と言う 怪物を生んだので、ミノタウロス（ミノースの牛）と名付けました。 そして、岩石を掘り抜いて一度は入り込んだら、二度とでることの出来ない 地下の迷宮を作って、その奥深くに閉じこめておきました。 　その時代のクレーテは強大な王国で、ギリシア本土のアテーネをも征服 して、９年に一度ずつ、７人の少年少女を船で送らせて、ミノースはそれを 怪物に食らわせていました。　その３回目の時、アテーネの王子テーセウス は、ミノタウロス退治を決心して７人の少年の中に加わり、クレーテ島に渡り ました。　そしてミノース王に牛魔退治の許しをこうと、王もこの怪物をもて 余していたので、承知しました。 　しかし、そのために武器を持参することは許さなかったので、さすがの テーセウスもほとほと困り果ててしまいました。　すると王女のアリアドネーが テーセウスに同情して、夜、迷宮の入り口まで連れていき、ひとふりの名剣 と、糸巻きを渡しました。そして王女は外にいて糸巻きをもち、王子は糸の 端をもちながら、迷宮の奥深くえと入ってきました。　しばらく進むと、迷宮の 奥から牛魔の恐ろしいうめき声が聞こえ、あたりの壁がガタガタとふるえまし た。牛魔はテーセウスを見つけるなり襲いかかってきましたが、王子はすか さず名剣でその胸を貫いたのです。 　王女が息を弾ませながら待っているうちに、持っていた糸が強く引かれて 王女が糸を巻き取ると、テーセウスが無事な姿を表しました。そして王女に 感謝を述べてから、花嫁になって欲しいと申し出て、まだ夜だったので、 少年少女も救い出して、ともに船に乗ってアテーネへとこぎ返しました。 　その夜は船はナキソス島に寄って、一同は上陸し、岩の上でキャンプを 張りました。　そして休んでいるとテーセウスの夢の中に、守り神アテーナ女 神が現れて、「アリアドネーを島に残し、急いで船出しなさい。」と告げました。 それでテーセウスも仕方なく、王女が眠っている間に、一同を船に戻らせて 島を離れました。 　やがて夜が明けてアリアドネーが目を覚ますと、ただひとり置き去りにされて 帆影はすでに沖に霞んでいました。王女は絶望のあまり岩から海へ身を投げ ようとしました。　 　そこへやってきたのは、ブドウと酒の神ディオニューソスの一行でした。若い 神はヒョウの弾く車に乗って、後ろには森の神サチュウロスや精女たちが、 踊りつ、唄いつして来たのです。そして、ディオニューソスは王女をなぐさめて から、自分の花嫁に迎えて、九つの宝石で飾った冠を与えました。 　その後アリアドネーは幸福な日々を過ごしましたが、やがて亡くなると、ディオ ニューソスは、その冠を空に投げあげました。するとその冠の形の星となって、 美しく輝きはじめました。今のかんむり座がそれであると言われています。

【ディオニュッソスの贈り物】

昔，クレタ島に，ミノタウロスという怪物が住んでいました。 この怪物の生け贄として，毎年属国のアテネの国からは，若者たちが 送られてきていて，その中に，若い王子テセウスがいました。 クレタの王女アリアドネは，そのテセウスと恋におちて，ミノタウ退治の 手伝いをして，クレタ島脱を出しました。 アテネに帰る途中，二人が小さな島で休んでいると，お酒の神様 ディオニュッソスがテセウスの前に現れて「アリアドネは，私の 花嫁となる。お前はひとりで即刻しまを離れなさい」と告げました。 神に逆らうことは出来ず，傷心のテセウスを乗せた船は，夜の海へ 消えていきました。 置き去りにされたことを知ったアリアドネは，岸壁から身を投げよ うとしましたが，ディオニュソッスが彼女の前に現れて，やさしく慰 めて，結婚を申し込みました。そして結婚式の日に新郎は新婦に， 美しい冠を送りました。アリアドネは幸せな一生を送り，彼女の死後 ディオニュソスは永遠の愛を込めて，その冠を星座にしました。