天体までの距離を測る方法

天体までの距離は、巻き尺を伸ばして測るわけにはいきません。天文学では、いろいろな方法
で天体までの距離を測ってきましたが、どの方法も四つの考え方が、基本になっています。  
まず一つは、三角視差を利用した方法です。こんな状況を思い浮かべてみてください。 みなさ
んが電車に乗って外の眺めたとき、すぐ近くの家々は、あっという間に目の前を通り過ぎていくの
に、遠くの物は、ゆっくりと移動します。見る位置を少し変えるとき、近くにある物ほど、見る方向が
変わりやすいのです。これを利用することによって、近くの星までの距離を、測ることができます。
地球は一年かけて、太陽の周りを一周していますから、たとえば距離を測りたい星の、春と秋との
見える方向の差を調べることによって、その星までの距離を、求めることができるのです。この方法
は最も正確に、天体までの距離を測ることができるのですが、遠くの天体は視差を測るのが難しい
ので、近くの天体の距離を測るときにしか、使うことができません。  
  
二つ目の方法は、流星視差を使う方法です。たとえば遠くの道を走るトラックが、あなたの視野を
横切ったとしましょう。このときに横切るのに要した時間を計れば、あなたから見たトラックの角速度
が求められます。ここで、トラックの速度が解れば、トラックの速度と角速度から、あなたとトラックの
距離を求めることができます。 星の場合速度を求めるのが難しいのですが、比較的近くの星団に
ついては速度をうまく求める方法があるのです。 この方法については、少し専門的知識が必要に
なりますので、ここでは省略します。しかし、この方法も、遠くの天体の天体との距離を測るには適し
ていません。   
 
三つ目の方法は、標準光源を使う方法です。たとえばロウソクの光は、距離が近いほど明るく見え
遠くなると次第に、暗く見えてきます。元々のロウソクの明るさが解れば、見かけの明るさと比較す
ることによって、ロウソクまでの距離を求めることができます。元々(絶対的)の明るさが解っていり
天体(標準光源)があれば、その天体までの距離を計算することが、可能になるわけです。  
最後の方法は、標準物差しを使う方法です。 この方法では、遠くに離れれば離れるほど、物の
大きさが見かけ上小さくなるという性質を使います。天体の実際の大きさが解っていれば、見かけ
上の大きさと比較することによって、天体までの距離を求めることができるのです。ここでいう大きさ
の解っている天体のことを、「標準ものさし」と呼びます。実際に遠くの天体までの距離を測るには、
これら四つの方法を組み合わせて使います。