都会の喧騒の中
スクランブル交差点の信号が変わりはじめる
その点滅に急ぐ足音
あきらめて私は歩をゆるめる
立ち止まりふと見上げた
街頭の大きなスクリーン
そこに映し出された風景
私とスクリーンの時だけが止まり
一瞬の静寂に包まれる
スクリーンが映し出した風景は
昔見た夕やけ
最後の夕やけ
あなたと見た最後の夕やけ
駅前広場のベンチに腰掛けて
バスを待つ二人
私は夕日の沈む海を臨み
あなたはその夕日に背を向けている
海は穏やかに波打ち
夕日はあなたの顔を隠すように
美しく美しく沈んでいく
あなたの顔を
もっとよく見たかったけれど
見たら私はあのバスには乗れなくなるでしょう
見たら涙が溢れ出してしまうでしょう
だからあの夕日は私の勇気
あなたを思い出にする為の勇気
街頭の大きなスクリーンには
駅から海を臨む風景
昔見た風景
あなたがいた風景
けれど今そのスクリーンには
あなたはいない
あなたの夕日に照らされた姿はどこにも
心が少しチクリと痛んだ
次の瞬間スクリーンから消えたあの風景
都会の喧騒がゆっくりと
私のまわりに戻ってくる
あの時流さなかった涙が
思い出したかのように流れた
心の痛みとともに
それは一瞬の出来事
一瞬の夢を見ていたよう
けれどその一瞬が
あのスクリーンに映し出された風景が
私の思い出になった瞬間
今度あの風景に出会ったら
きっと笑って懐かしむことができるから
きっと笑ってあなたのいない風景も
受け止めることができるから
きっと笑って・・・