Tabaの鉱物標本箱

1999年12〜2000年 1月の特集

「水晶 特徴4:結晶形」

 水晶を手にすると、とかく形や透明度、表面のツヤ、色などに引かれやすいのですが、結晶の中に取り込まれた鉱物や負結晶など内部の特徴にも目を向けると、観察する楽しみが増します。
 産地で水晶を手にしたときや標本を買い求めるとき、手元の標本などをルーペでチェックしてみて下さい。



【1】 電気石(ススキ)入り 山梨県塩山市竹森産(11mm×25mm)

  

 竹森は有名な産地ですが、ほとんどの水晶に苦土電気石が包有されていて、あたかもススキが入っているようです。
 誰がススキ入りと名付けたのかは知りませんが、先人の風情がうかがえます。

 
【2】 緑泥石入り 山梨県塩山市竹森産(水晶の太さ:約13mm)

 

 竹森では先のススキ入りのほか、このような緑泥石が入っているものも見られます(別名:苔(コケ)入り)。
 緑泥石入りは各地で見られます。
 

【3】 鋭錐石(えいすいせき)入り 山梨県塩山市竹森産(鋭錐石の長さ:1mm)

 

 普通は水晶の表面に付いた形で見つかりますが、この標本では水晶の中にあり、名前の通り、キリの先を思わせる鋭い形と光が特徴です。
 

【4】 負結晶入り 長野県麻績村四阿屋山産(左:負結晶(負結晶部分約1mm)入り、右:泡入り(負結晶部分約1mm))

  

 一見したところ、水晶の中に小さな水晶が入っているように見えます。
 水晶が成長するとき、まわりの液体を結晶の中に取り込みながら成長して、取り込んだ部分の壁面に結晶面ができこのような形になったもので、空洞状です。
 水晶ができあがったあと圧力が下がると、液体の中にとけ込んでいたガスが気体となり、泡となって見えるものがあります。液体や泡が入ったものは、「水入り」とか「泡入り」などと親しみを込めて呼ばれます。
 水晶を傾けると泡が動いて見え、その存在を実感できるものもあります。
 


【5】 黄鉄鉱入り(サイコロ入り) 茨城県七会村高取山産(水晶の太さ:約10mm)

 

 この水晶の頭には、小さな包有物がたくさん見られます。
 よく見ると、サイコロ形をした黄鉄鉱や、やや赤みを帯びた鉄マンガン重石とみられる結晶が確認できます。
 水晶の中に宙に浮いたような黄鉄鉱を見ていると、何とも不思議な感じがします。



 
 特集「水晶」の4回目はいかがだったでしょうか。

 この特集は、次回で終わりとなります(隔月特集は継続します)。