Tabaの鉱物標本箱

6〜 7月の特集

「水晶:色」



 鉱物にあまり興味がなくても「水晶」と聞けば、たいていの方はご存知でしょう。そんな水晶は鉱物の代表格です。

 一口に水晶といっても、色や形などの特徴は実にさまざまで、変化に富んだ鉱物の一つともいえます。また同じ地域内でも、水晶を産した晶洞ごとや、晶洞内の位置などによっても、変化している場合があります。

 これまで見てきた日本産水晶の特徴を、私なりに分類してみました。

1.色    透明、乳白、白、紫、煙(スモーク)、黒、緑、

2.見かけの形太さと長さの比(ずんぐりか、スリムか)、奇形、松たけ、曲がり、反り、ねじれ 

3.結晶形  断面形状(六角形、三角形に近い六角形、平たい
        平行連晶、両頭、双晶、食像付き       

4.包有物  別鉱物入り(草入り等)、水入り、泡入り、山入り、星入り(マリモ入り)、負結晶入り 

5.被覆鉱物 雲母、石膏、その他

 特集「水晶」は、5回シリーズでご紹介する予定です。
 今回は、「」です。



 1. 色

 ・透明、白、乳白
 ・煙(スモーク)、黒
 ・紫、緑


【透明】 山梨県牧丘町乙女鉱山産(結晶の大きさ14mm×60mm)

 無色透明で非常にクリアな例です。


【 乳白 】  山梨県牧丘町乙女鉱山産(結晶の大きさ16×39mm)

 中身が透明でも表面がスリガラス状になると、乳白色をしているような外観になります。


【 白 】  長野県木祖村薮原産(結晶の大きさ9×24mm)

 さらに中身まで白く濁ってくると、舞妓さんのおしろい肌のように、とても柔らかな感じになります。


【 煙 】  茨城県真壁町山ノ尾産(結晶の大きさ14×40mm)

 煙水晶は色の薄いものから黒水晶に近い濃いものまであります。どこが両者の境なのかは見る人によって違うようです。 私は色の薄いものと、黒くても日にかざして光が透けるものは、勝手に煙水晶と決めつけています。
 写真のものは、透明な清水に墨を数滴たらして混ぜ合わせたような淡い色合いで、とても気に入っています。


【 黒 】  岐阜県蛭川村田原産(結晶の大きさ21×35mm)

 黒くて不透明な水晶です。煙や黒になる原因は、水晶の結晶構造にあるとされ、光の中のすべての波長を吸収するためだそうです。


【 紫 】  宮城県白石市雨塚山産(結晶の大きさ10×33mm)

 ちまたで見かける輸入品とは異なり、何とも品のよい紫色です。
 紫色に見えるのは、煙水晶同様、結晶構造からくる光の吸収とされていますが、紫水晶は緑色が吸収されるため、 その補色である紫色となって見えるとされています。


【 緑 】  長野県川上村梓山産(結晶の大きさ5×25mm)

 緑色に見える原因の多くは、水晶に取り込まれた別鉱物の色によります。したがって、 「草入り」などの包有物の特徴としてあげるほうがいいのかも知れません。ここでは見かけの「色」で分類しました。
 この標本は「鉄ヘスティング閃石」という緑色針状の鉱物が取り込まれているために、緑色となって見えます。 表面がざらついているため分かりにくいのですが、欠けた部分から中を観察すると、針状の結晶が見えます。


【 黄 】 岐阜県福岡町高山産(標本の大きさ31×35mm)

  この標本は破片ですが、わずかに黄色味を帯びており、"シトリンクオーツ"として自己満足しています。





 特集「水晶」の1回目はいかがだったでしょうか。

  そのほかの特徴についても、このあと4回にわたってご紹介する予定です。