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//痕SS
//鶴来屋繁盛記。
//第一話「拳銃密売の巻」
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 あれから4年の歳月が経った。
 と思いねえ。

 あたしには姉がいる。
 名は柏木千鶴。
 二十代と言う若さにして「鶴来屋グループ」の会長職。
 美貌の女将。
 まあ、呼び方は色々あるが、そのどれも彼女の本質をあらわしてはいない。
 だから、あたしはあえて、彼女の本質を表しうる呼び名をしよう。
 偽善。

「あ、ず、さ、ちゃーん」

 あたしはおもわず身を固めた。なんだ? 心を読まれたか?

「ねえ、梓ちゃん。今回の指令なんだけど」
「え? あ、そっちね。はいはい」

 指令。
 一言で言うと、姉さんの道楽。
 私達の街隆山。この不況のあおりをもろに受けるレジャー産業をメインとしている温泉街でありがなら、安定した収益を生み出している幸運と、そして恐らくは企業努力に成り立つ街。
 しかし、発展した街であるが故に様々な事件が起こってしまうこともある。
 それが警察の手におえるものならば良いが、時にはそうも行かないこともある。
 そのときは、私と、姉さんの出番となるのだ。
 そう言うことらしい。何時の間にかそうなっていた。ちなみに私は同意した覚えは無い。
 少なくとも、会長とその秘書の副業じゃないよな。
 いくら、今この隆山で単純な強さで言えば1番と二番なのが私達とは言っても。

「梓ちゃん? 状況説明は済んだ?」
「え? ああ。うん。モノローグで」
「そう。じゃあ、改めて今回の指令ね。どうも、隆山に拳銃が出回っているらしいの」
「いきなり物騒な……でも、それはまだ警察の仕事じゃ?」

 私達が取り扱うのは「警察の手には負えないような事件」のはず。

「それがね。通報してくれた某組織の末端と思われるチンピラの証言によると「警察なんざ信用できねえ!」ってことで」
「真に受けないでよ姉さん」

 通報してきたのがチンピラなら、警察に恨みを抱いている場合もあるかもしれないが、それにしたって。

「いいじゃない。姉さん、本物の拳銃って、どんなのだか興味あるの」
「はあ。さいですか」

 結局、自分の好奇心のためだけ、と言うことか。
 当然、私が姉さんの言い出したことを止められるはずも無く、わたしたちは街へと繰り出した。

「で、町に来た訳だけど」
「そうね。あ、梓ちゃん。なにか、食べる?」
「太るよ?」
「なにか、言ったかしら?」
「……いや! 力いっぱいなんにも言ってないよ!」
「そう。まだ命は惜しいようね」
「うう」

 なんとか姉さんを怒らせないことに成功し、捜査を開始する。
 しかし、漠然と探していても、見つかるものでもないような

「あら?」

 まずは、聞きこみ……しかし、拳銃、てことはウラ社会っぽいよなあ。そういう所につなぎを取って。

「あの、あなたは?」
「おい。これがめにはいらねえか」
「あら。あなたが拳銃の売人ね」

 鶴来屋の顔は、結構色々な所で使えるだろうけど。そんなことをしているのが世間に知れたら、旅館のイメージダウンになりかねないしな。

「先手必勝、えいっ(鬼の力で)」
「ぐああ。やられた」

 とはいっても、やっぱりこの街に拳銃がでまわっているなんてぞっとしないから多少あたしたちが泥をかぶってもって姉さんなにしているの?

「あ、ほらほら、見て梓。この通り掛かりの拳銃恐喝犯、こんなに沢山拳銃を隠し持っていたわ」
「へ?」
「えーと。あ、裏帳簿まで。これで拳銃密売のルートは根絶やしに出来るわね」
「なんでこんな末端の売人が裏帳簿まで持ってるの」
「ほらほら梓ちゃん。難しいことを考えるとしわが増えるわよ」
「そんな、姉さんじゃ……いやなんでも無いよ! ……にしても、この事件はこれで終わり」
「あとは、この拳銃をしかるべき場所に届ければ、終わりね」

 ……いいのかなあ。こんなんで。

「まあ、いいじゃない。じゃあ、にんむかんりょー。温泉でもつかりに行きましょー」

(おわり)

初痕SSです。
話としては、セリオ(偽)の温泉編のところに出てきたこいつらと同じ設定で考えてます。
良かったらそっちもどーぞ。
あと、「OH!スーパーミルクチャン」見てるといい感じデス。

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