月姫SS「玄関開けたら二分でラスボス」(モトネタは聖学)

 卒業式も迫ったある日、遠野兄妹と有彦はいつものように学校の中庭で昼メシを食べていた。
 だがしかし、いつもならそこにいるシエル先輩はそこにいない。
 せっかくだからと志貴は茶道部部室までシエルを呼びに行く事にした。

「シエル先輩ーッ シエル先輩いますかーッ」
「入りますよシエル先輩ー」

 失礼しまーす、と呟きながら、遠野志貴は和室の中へ入る。
 そこに。
 ぬばーんと、ネロ・カオスが立っていた。

「……」

 絶句しながら、それを見つめる志貴。
 すると、部屋の奥から、なにやらシエルのうなり声が聞こえてきた。
 ネロの横から、そーっとそれを覗く。
 そこには、ロアと取っ組み合いを繰り広げているシエル先輩がいた。
 闘いながら、横目で志木を確認し、

「あっそこのっ、アナタっ、そう、アナタっ」

 シエルは、闘いながら必死に志貴に話しかける。

「第7聖典っ、第7聖典! 早くっ、黒鍵でも可っ!」

 シエルは「第7聖典だってば!」などと叫び続けている。
 それを見ながら、志貴は、

「見なかったことにしよう」

 と、その場を去ることにした。

「ただいまー」
「おう遠野。どうだったシエル先輩」
「元気でしたよ、スゴク。ハイ。とても」
「メシ食おーぜって誘ったのか?」
「それは……その……なんというか……」

 言葉を濁す遠野志貴。
 そこに、

「とぉのくんッ!」

 と叫びながら、シエルが天からふってきた。

「こ、これはシエル先輩」
「遠野くんはいますかっ」
「こっこれはたいそうお怒りのごようす。
 この若造めがなにかアナタ様に?」
「そこをどいてください有彦くんっ」

 素直にどく有彦。
 シエルは志貴の頭をがしっと押さえ、アヤシゲな瞳で志貴を見つめる。

『人がァああゆーふーに助けを求めているトキはァ無視しちゃダメでしょう?
 第7聖典っつったら第7聖典出すの。ネ!?』

 完成。

「兄……さん?」

 様子がおかしい志貴に、心配した秋葉が話しかける。
 志貴は、コワレタ目をしながら、

「シエル先輩ハスバラシイ先輩デス」ピコピコピコ。
「キャーっ」

 志貴はコワレテイタ。

「ナニうちの兄さん洗脳してるんですかアナターっ」
「いったいナニがあったつーんですかっ」

 尋ねる二人に、シエルは答える。

「こんど卒業記念に三年生でなにかやろうってコトになりましてね、オバケ屋敷をやることになったんですよ。
 でも、ただのオバケ屋敷じゃつまらないから、月姫ふうに仕上げる事になったんです。で、わたしはバケモノについて一任されたんですが……」

 と、そこまで言って、シエルはなにかに気付いたかのように叫ぶ。

「伏せてくださいみなさんっ」

 言われて一同は振り向く。そこにはゾンビ化した男がいる。シエルはどっからか出した10本以上の剣を投げつけ、そいつを串刺しにする
 剣山かハリセンボンのようになったゾンビ男を見つめながら、

「本格的にやりすぎてしまいまして。ホントに人食べようとするんですよ」

 いやあマイッタマイッタ、という顔をするシエル。

「あんがいバケモノ作るって大変ですね」
「あんた本当に神父かっ?」

 ちなみにネロとロアはシエル先輩がチョークスリーパーでしとめたとのコト。