帰り道に、偶然寿さんと会った。
「やっほー! ぐーぜんだねー!」
相変わらず脳に響く声をしているなあ。
一応挨拶を返す。
そして、他愛も無い会話を始めたのだが……。
何か変だ。妙に画面が暗い。ふと見ると電線と言い路地裏と言いやたらカラスがいる。
……良く見ると、みんな寿さんの方を見ているような。
「……ねえ、寿さん。なんか、カラスに狙われているみたいだけど」
「えー! そーかもー! なんかー、美幸ーカラスに好かれるんだー! カラスってー不幸っぽいからー美幸は嫌いなのにー、なんでだろーねー?」
寿さんの超音波ヴォイスに意識を失いそうになりながらも、俺は、寿さんの頭を見てみた。
冗談みたいに多い髪の量。人類の限界を嘲笑うかのように爆発した髪型。
「……巣」
「??? なにー!? 巣がどうしたの??」
なんとなく、カラスの気持ちが分かったような気がした。
あとがき>
寿さんのセリフは『あの声』で読んで下さい。
あれは新手の心理兵器かと思えます。